ファイナリストになれなかった私より


ファイナリストの一覧に私の名前はなかった。

振り返るとエントリーしたばかりの時は、ひとりでただ地面をぴょんぴょんしていただけだったのに、それがなんでかいつの間にミスiDという大きな乗り物に乗せてもらえたイメージだった。
それは色んな人が乗ってる乗り物で、
色んな風にみんなが優しかった。
寒くない?大丈夫?って小まめに聞いてくれる人、
黙って隣に座ってて綺麗な景色の時だけ教えてくれる人、
他人に干渉しないでいてくれる人、
その人それぞれの個性と優しさがあった。
もしかすると、その人は別に優しくしてるつもりなんてないのかもしれないけど、私にとっては触れてくれるもの全部がとても優しかった。

書類審査、カメラテスト、何か関門を突破するたびに、乗り物から降りなきゃいけない人がいた。なんで?って思ってしまうけど、この乗り物が遠くまで飛んでいくためには、きっと必要なことなんだろうと思う。

そして、今回私は初めて降りなきゃいけない人になった。
今まで何度か降りてく人を見送ってきた。でも全然笑顔でできなくて、とっても寂しくて、やだよって顔で見送ってしまってたと思う。

遠くまで飛ぶために誰かを降ろさなきゃいけない。寂しい、寂しいね。
もう随分長い間一緒に居たもんね。
降りなきゃいけない人、見送らなきゃいけない人、どっちもしんどい。

だから、もし自分が降りることになったら絶対に笑っていたいってずっと考えていた。どうしても笑いづらくなってしまう誰かと気まずい顔でお別れは悲しすぎるから、私は絶対とびっきりの笑顔を用意するって決めていたんだ。だから私は今とても笑顔です。おめでとう。おめでとう。

こんなの読んでくれてるファイナリストまたは審査員の方、私は今までもらったものを全部抱きしめてここから降りますが、たくさんの人が降りた分、軽くなってきっと遠くまで飛んでいきやすくなったはずなので、どうか遠くまで飛ばしてください。
私たちの一部だったものが、もっと遠くまで飛んでいくというなら笑顔で手を振って見守っています。最終到着地点までそのまま飛んでいけ。

私と同じ場所で一緒に降りる方、またはすでに降りている方へ。ミスiDという乗り物は多分ロケットと似た構造です。
まず地上から飛びはじめるには、たくさんのエネルギーが必要で、たくさんの人数からスタートします。そうして空へ飛んでいくと、今度はだんだん機体が重くなってきて、一部分を切り離さなきゃいけなくなってきます。それを遠くへ飛ぼうとするごとに何度か繰り返さなきゃいけません。
そうやって遠くまで飛ぶために、少しずつ部品を落としていかなきゃいけなかっただけで、最初から要らなかった部品なんて一つもないのだと思います、本当に。だから私たちは、ちゃんとミスiDでした、きっとね。

地上から飛んでいる姿をずっと眺めていた乗り物に自分で乗って、乗り心地とか景色を知った。こんなだったんだなって、堪能した。
ここに居られて嬉しかった。ありがとう。

私は進んでる道の途中で振り返るのが嫌で、ミスiD受けて良かったとか、選考期間中は言うもんかとか思っていたのに、色んなものをもらいすぎてしまって、正直もうとっくに何回もミスiD受けて良かったって思っちゃったんだ。こんなの読んでるあなたのせい、ありがとう、ありがとう。それではここまでです。こんなの読むのに割いてくれたあなたの時間を抱きしめます。どうもありがとう。さようなら。


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