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エレファントカシマシの歴史 Vol.7 『悲しみに顫えた日々を振り払い何処までも...』

エレファントカシマシは前作『奴隷天国』で自らが世間に正当に評価されない事を憤りそれを直截的に歌った。その有り様はまるでデビューしたての『ファイティングマン』や『星の砂』の頃の様に。そして今作EPICソニー期の最後にしてとんでもない名盤『東京の空』の制作が始まる。そして宮本浩次自身にも大きな変化が訪れた。それはライブパフォーマンスに重点を置くという事であった。『奴隷天国』までの宮本はライブでほとんど喋る事なくただただ淡々と歌を歌って行くという方法であった。ある時は拍手した客を怒鳴り、アンコールなどほとんど歌わなかった。そんな宮本がある時いきなり観客に向かって喋り始め「oh! yeah!」を連発し始めたのである。そしてあらナタアルバムを製作し始めたは良いがとうとうクビを宣告されてしまう。そんな状況の中で宮本は今までに無いバイタリティを本アルバムで発揮した。百八十度変化した宮本が製作した名盤『東京の空』の世界が今始まる。前作の記事は下記のリンクから。

このアルバムは歌詞カードに序文としてライナーノーツなるものが存在する。宮本とロッキンオンの編集者山崎洋一郎氏が寄稿している。その文章がなんとも感動的なのでぜひ実際に手に取って読んで欲しいと思う。

1994年5月21日発売。1993年10月1日シングル『A面 極楽大将生活讃歌/B面 星の降るような夜に』1994年4月20日シングル『A面 この世は最高!/B面 真冬のロマンチック』発売。

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1.この世は最高!

本アルバムのシングル曲。ハイテンポのストレートなロック。1stの頃の演奏が更に洗練され歌唱も歌詞もかなりポジティブな内容になっている。どうにもならない世の中を完全に開き直り切った宮本が最高と連呼する。そしてセイちゃんがコーラスとして参加している。この曲はエレカシがクビ宣告された次の日にレコーディングを始めたらしい。

2.もしも願いが叶うなら

マイナーコードのギターリフから始まる。宮本の多重録音したコーラスがなんとも美しい。『悲しみの果て』のような構成の曲である。本曲はプロモーションムービーがある。宮本が東京タワーの望める夜の街をひた歩くという内容である。それだけであるのにもかかわらずとても見応えがある。

3.東京の空

本アルバムの表題曲。12分30秒超えの超大作でありエレカシ史上最も長い楽曲時間を有する。トランペッターの近藤等則氏がゲストミュージシャンとして登場している。キレッキレのギター音から近藤等則氏の力強いトランペットの音が鳴り響く。EPICソニー期の宮本にとって追い求めてきた所謂悟りのようなものが凝縮された一曲でありエレファントカシマシの世界の到達点である。超大作でありながらも一時も飽きさせる事なく東京の曇った景色の摩天楼を体験できる。

4.真冬のロマンチック

『待つ男』や『遁生』を作った事を微塵も感じさせないポップでコミカルな楽曲である。本曲ではピアノが使用されているのだがそのアーティストがなんとボガンボスのDr.KYONである。近藤等則氏をゲストに迎えた『東京の空』もそうであるがなんとも豪華である。

5.誰かのささやき

この曲もまた美しい。エレキとアコースティックが素晴らしいシンフォニーを生んでいる。歌詞も宮本の声も実に優しく涙がこぼれそうになる。後半のAメロ繰り返しの宮本自身のコーラスがこれまた美しい。

6.甘い夢さへ

石くんとトミ、セイちゃんの演奏が素晴らしい。宮本の詩「なんでも言葉から始まる」は考えさせられるものがある。言葉のチョイスが常人とはまた変わっていてそれを聞くのもまた楽しい。

7.涙

宮本の弾き語り。今までの弾き語り楽曲たちとは違って散歩ソングでは無い。何か首になることが決まった元の事務所の数々の思い出、今までのエレファントカシマシの歴史を振り返っているような気がして感動的である。

8.極楽大将生活讃歌

シングル曲。素晴らしいロックサウンドである。コミックバンドの要素がある楽曲である。歌詞が矢張り詩的である。そしてドリフにも似ているし海援隊の「あんたが大将」のオマージュも入っている。盛り上がる曲であり、元気の出る曲である。

9.男餓鬼道空っ風

これもまたアップテンポの曲である。「極楽大将生活讃歌」と同様にコミカルでありながらも詩的であり達観している。そしてまた元気を与えられる。石くんがコーラスとして参加している。

10.明日があるのさ

宮本の声が随分と響いている。そして冬中の語りも後々続くエレファントカシマシの伝統のようなものになっている。バックで流れているストリングスがまた美しい。

11.星の降るような夜に

せいちゃんと宮本の共作。これの曲はすごい。カップリングのB面でありながらもA面として発売しても申し分ないほどの完成度でありまた名曲である。そして石くんがコーラスとして参加している。エレファントカシマシの決して破れない絆が垣間見ることができる。野音ではエレカシメンバーが肩を組む(半ば強制的に)姿が印象的である。

12.暮れ行く夕べの空

本アルバム最後の楽曲にふさわしい豪華絢爛な曲である。素晴らしい曲展開と重厚なギターの録音、そして宮本の言葉の羅列と笑い声。後半の展開は誰も予想ができないしまたそれも面白い。エレカシが度々テーマにする「自由」が叫ばれているのがなんとも良い。

こうしてエレファントカシマシの青春の総決算、名盤『東京の空』が終わる。エレファントカシマシはその後運命通りレコード会社を解雇され流浪の時代が2年ほど続く。しかしその間エレカシメンバーはめげることなくむしろバイタリティが爆発しながらライブ活動や作曲活動に打ち込む。そして数々の名曲を短期間で生み出す。その中に日本の音楽シーンに確実に名を残すであろう名曲が誕生して。その名も『悲しみの果て』。それを経て完成した名盤『ココロに花を』は次回。エレカシ の快進撃は続く。

悲しみの果てに何があるかなんて...俺は知ってる

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