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2020年の通常国会とはなんだったのか - 国会発言を概念マップ化する

より良い社会づくりに向けて、政府は2020年のうちにどのような議論を交わし、何に準備してきたのか。2020年の通常国会の開催期間における全発言記録をマッピングすることで、その全体像をざっくり把握します。

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①2020年通常国会の期間中の議事録を取得する

まず、国立国会図書館が提供している国会会議録検索システムから、国会での議事録データを取得します。今回取得したのは第201回通常国会(会期:2020年1月20日〜2020年6月17日)の開催期間における全ての国会発言データで、合計約8万件の発言が検索・取得できました。取得方法については以前の記事で解説しているので割愛します。

②集計してみる

一応、サクッと簡単なレベルで集計してみましょう。月別の発言数を見ると、3月の議論が活発だったようです。押し問答のような議論が多くなると全体の発言数が増えそうな気がするので、総文字数でみるのも良いかもしれません。また、発言回数は安倍元首相がトップであり、特に違和感はないですね。ただし、ニュースによく出てくる人ほど発言数が多いというわけではなさそうです。

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③マッピングする

続いて、マッピングします。マッピングといっても地図に載せるわけではなく、例えば 色んな人に意見をポストイットなどに書いてもらってボードに貼り付けて、似たような意見は同じ箇所にまとめる・・ といった要領です。8万件の発言データを一つ一つ読んでいくのは無理があるので、その工程をプログラムを組んで機械的に実施しています。

下のマップが完成版です。画像をクリックするとウェブマップ版にリンクしますので、もっと細かく自由にみたい方はそちらへどうぞ。

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工夫した点として、単体の発言データをそのまま処理してしまうと「その件につきましては、先ほど申し上げた通りであります」みたいな発言だけ見ても意味をなさないし情報量としても少なすぎるため、連続した10発言=1セットとして機械に解釈させています。テキスト解釈の精度面やウェブマップの機能面などは改良の余地がありますが、そこは今後の宿題ということで。

④全体を読み解く

各箇所の頻出キーワードは自動付与のラベルで表現していて、それにより主要な話題を大まかに把握できます。パッと見ると左側の大きな島に多様なトピックが広がっていて、「PCR・検査」といった話題を中心にコロナ関連と思われる議論も当然ありますが、他にもエネルギー、農業、金融、教育、観光といった話題群がみられます。ちなみに、”コロナ”というワード自体はこのエリア一帯に広く介在していました。あとマップの上側は、それらの話題とは少しの合間を隔てて「事務所」とか「文書・保存」、「検事」といった話題群が。何となくどんな話題か推察できますね。

また、このマップの右側は「散開」とか「異議」といった議会の進行にかかる発言がまとまっているようなので、ここは無視しましょう。

⑤1月〜6月の月別で議論の変遷をみる

さて、ここまでだと半年間を通じて色んなトピックが議論されていた、というだけになりますが、1ヶ月ごとに区切るとどんな感じになるでしょうか。当然ながら、2020年2月に語られていた内容と5月の内容では異なるはずです。並べてみましょう。

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各月のヒートマップをそのまま縦に並べました。ちなみに、月ごとの絶対的な発言数は異なりますので、ヒートマップはあくまで各月の中での相対的な議論の多寡を表現しています。

こうしてみると、新型コロナウイルスの対策について本格的に議論がされ始めたのが3月あたりからと見受けられますが、同時期にかなり様々なテーマに広く話題が拡散しており、集中的に対策を議論していたというわけではなさそう。例えば3月には他に「検察・定年」という箇所や「NHK・経営」といった箇所が、4月は「外務省・国際」といった国際関係にかかる議論や「スーパーシティ構想」の議論などで密度が高くなっています。その辺は個人的には興味深い内容なのですが、5月になると「黒川検事・マージャン」や「あおり運転」といった箇所が盛り上がったり・・色々ありましたね。

おわりに

過去は振り返ってこそより良い未来が描けると思いますので、「わかりにくい政治の世界をわかりやすく」というスタンスで、自身のマッピング技術を使って2020年の通常国会の期間を振り返ってみました。こんな議論やってたな〜というのと、知らなかった部分と、もっとこう、語るべきことがあるだろう!!という気持ちと、思うところが出てきますね。昨年の国会議事録はこの他に臨時国会の分もあるし、2021年の国会も始まったら議事録は順次公開されるはずなので、それらのマップも作成するかもしれません。機械解釈の精度とかマップの見易さは改善しながら、楽しくマッピングしていきたいと思います。

出典・免責事項

当記事の情報は、国会会議録検索システム(国立国会図書館)をもとに筆者が独自に加工し、考察した内容となります。正しく公正な情報を提供するように努めてはおりますが、必ずしも正確性を保証するものではありません。

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