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2020年後半の国会を概念マップでレビュー:全体像と傾向を読む

今回の記事では、2020年7月〜12月の国会で一体どんな議論が交わされてきたのか、マッピング手法を使って振り返ります。コロナ禍でのオリンピックやGoToトラベル、そして日本学術会議や種苗法改正など様々な議題がありました。その全容と傾向はどのようなものだったでしょうか。

2020年7月〜12月の国会2.5万発言のマッピング

まず、国立国会図書館が提供している国会会議録検索システムを使って2020年7月〜12月の国会での発言記録2万5千件以上を全て収集し、それを文書マッピングの技法で可視化しました。

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概念マップの見方

主要な話題群はマップ上にラベル表記しているので、これで全体像を把握します。もっと細かい議論の内容を見るには、マップ画像または ここをクリック してリンク先のウェブ版マップからご覧ください。なお、ウェブマップはスマホよりもPCのほうが圧倒的に見やすいです。

カラフルな蜂の巣型の六角形は細かい話題群の集まりで、色が濃いほどその話題群の発言数密度が高いことを示します。個々の六角形が構成する話題はウェブマップで一つ一つ確認できるほか、具体的な発言記録まで掘り下げて閲覧することもできます。マップの作成方法は以前の記事で触れていますが、前回から視認性などは改良しています。

コロナ関連とそれ以外の話題の違いを見る

新型コロナ対策の話題が当然ながら多いので、”コロナ”を「含む」話題と「含まない」話題の密度をそれぞれヒートマップ化して差異を見てみます。

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こうしてみるとマップ中央の一連の話題、「医療・検査」「GoToトラベル」「給付金」「地方財政」、そして意外と「豪雨災害」や「農業の生産需要」でもコロナに言及した話題が多数ありました。2020年7月の熊本豪雨への対応においては、避難生活に加えてコロナ対策と地元観光への打撃という多重の困難に直面。「農業」の話題は12月に、畜産業の経営支援や輸出戦略に関する議論が活発だった模様です。

一方、コロナ関連でない話題は「学術会議」「生殖医療」「種苗法」「防衛・ミサイル」あたり。コロナ禍のニュースで世間的に埋もれてしまった話題もあったかもしれませんが、この時期の国会では相当数の議論が交わされていたようです。

発言数上位は厚生労働大臣と総理大臣、その内容は?

発言数が多い順にランキングした結果、最も多い人は田村厚生労働大臣、2番目が菅総理大臣でした。それぞれがどんな議論を展開していたか見てみましょう。

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まずは菅総理大臣。ほとんどが日本学術会議の任命拒否問題の周辺にまとまっています。ひたすら釈明を繰り返す発言が多く、そのため発言数の観点で目立っている模様。結果として学術会議に"はりつけ状態"にされてしまったようで、2021年の国会ではもっと建設的な議論に参加できるように期待したいところです。

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続いて田村厚生労働大臣の発言箇所です。こちらは当然ながらコロナ対策の議論が中心で、「ワクチン・接種」「医療・検査」、そして「GoToトラベル」や「雇用・給付金」の議題に関してもカバーしています。一つ一つの議題の重さを鑑みると、2020年に関しては厚生労働大臣の責務範囲が大き過ぎたのではという懸念が出てきます。

年が開けて早々に河野太郎大臣がワクチン担当大臣を兼任する形となりましたが、采配の是非はさておき負荷分散は必要だったのでしょう。河野大臣も既に多数のポストを兼任していて負荷が気がかりですが、負担を分散しつつ責務の範囲を明確にする方向であれば、役割の細分化は妥当だと思います。

まとめ

2020年後半の国会をマッピング手法を使って総括してみました。コロナ対策が議論の中心でしたが、一方で種苗法防衛農業生産豪雨災害への対応についても活発な議論が交わされていたことが確認できました。菅総理大臣は就任早々から学術会議問題にはりつけ状態で、建設的な議論に参加できていなかったようです。そしてコロナ対策はうまく負荷分散しつつ、責任の押し付けではなく効果的な連携を期待したいところ。今後も国会発言のログが溜まってきたらまたマッピングしてみたいと思います。

今回作成したウェブ版マップ(外部リンク)のほうも是非ご覧ください。スマホでも見れますがPCの方が見やすいです。


出典・免責事項

当記事の情報は、国会会議録検索システム(国立国会図書館)をもとに筆者が独自に加工し、考察した内容となります。正しく公正な情報を提供するように努めてはおりますが、必ずしも正確性を保証するものではありません。

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