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「死後事務委任契約」ってなに?遺言書とはどう違う?

「死後事務委任契約(しごじむいにんけいやく)」ってご存じですか?漢字が並んだ八語というだけで敬遠したくもなりますが、実はとっても大切な契約なんです。ここではみんなにわかりやすく「死後事務委任契約」を解説していきます。

「死後事務委任契約」ってざっくりいうとどんなの?

死後事務委任契約は読んで字のごとく「死後の事務を委任する契約」のこと。亡くなった後の煩雑な事務手続きを自分の代わりに頼むよってことなんです。

身寄りのない方に万が一のことがあった時、死後の手続きを行ってくれる人がいない場合が多いですよね。

身寄りがあっても、遠方に住んでいるなどで死後の煩雑な事務を行うのが大変な場合や、縁が薄く頼みづらいなどそれぞれの事情がある人も多い現代です。

長い人生を終えた後には、さまざまな手続きが必ず必要になります。例えば病院で亡くなった場合でも誰がご遺体を引き取って荼毘に付すのかなど、その時が来た瞬間から死後事務が発生するのです。

そんな時のために生前から「私が亡くなった後は、死後の事務手続きをお願いします。」という契約を第三者と交わしておきます。

これが「死後事務委任契約」の概要です。

「死後事務委任契約」の内容は具体的にどんなの?

「死後事務委任」の内容は人によってさまざまです。

●死亡診断書などの受け取り
●死亡届や火葬許可証の提出
●関係者や葬儀会葬者への連絡
●病院や施設などの退院・退所手続き
●葬儀、火葬、埋葬などの手続き、実施
●住民票の手続き及び年金、介護保険、健康保険の停止
●車両の廃車手続等
●働いていれば会社や関係機関への連絡、退職に伴う手続き
●不動産契約の解約
●遺品の片付け、整理
●ライフラインのストップ
●運転免許証、パスポートなどの手続き
●住民税などの納税手続き
●死亡通知や連絡


一般的な項目を挙げただけでも、その種類やかかる手間は膨大です。

これだけでなく、例えばペットが残された場合は希望の譲渡先を遺言書で指定していない限り処分されてしまうことが多いので、譲渡先を探してくれるよう契約に盛り込む場合もあります。

SNSで情報発信している人なら、死後も自分のページが更新されないまま永遠に存在し続けるってあまりぞっとしませんよね。だからアカウント消去という内容を盛り込みます。

「死後事務委任契約」の内容はいわゆるオーダーメイド。その人に合った項目をもれなく記載しておくことが大切です。

「死後事務委任契約」って誰と結ぶの?

死後の事務を引き受けてくれそうな家族や親族がいるなら、たいていの場合時間をかけてでも家族が行ってくれるのが一般的です。

ですから「死後事務委任契約」が必要になるのは、身近に死後の事務手続きを引き受けてくれる人がいない場合。

では、どんな人とその契約を結んだらいいかというと、基本的には「誰でもいい」ということになります。

「誰でもいい」なんて乱暴なようですが、法的な決まりはないので近所の仲良しさんでもゲートボールのお仲間だとしても問題ありません。

ただし、先にも述べたとおり、事後に発生する事務手続きは多岐にわたりますし面倒なものです。しかも遺品整理などは体力と瞬発力が勝負!みたいなところがあります。

「死後事務委任契約」はだれとでも結べますが、しっかりと契約が履行されるか、つまり希望通りにきっちり死後事務を完結してくれるかは別の話。

そのような理由から、死後の事務を数多くこなした経験のある専門家(弁護士、司法書士、専門の終活機関など)と契約を結ぶのが確実でしょう。

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「死後事務委任契約」を結ぶ際の注意点3つ

近年大きく需要が伸びている「死後事務委任契約」ですが、契約を結ぶ際に注意しておきたいことがあります。ここでは3つに絞って解説していきます。

1.認知症になった後では契約できない

認知症などで本人に判断能力がなくなってしまった場合、本人と受任者が「死後事務委任契約」を結ぶことはできません。そのため、元気なうちに死後に発生するであろう事務をピックアップし契約しておくことが大切です。

「死後事務委任契約」を結ぶタイミングは「まだ元気だし大丈夫だろう」と思っている、まさにその時がベストタイミングといえますね。

2.財産に関する管理は「死後事務」の範囲外

預貯金の行方や持ち家を誰に相続するかなど、財産に関する項目は「死後事務委任契約」に盛り込むことはできません。

「死後事務委任契約」は契約者が亡くなった後で効力を発揮することから「遺言書」と混同されることがありますが「死後事務委任契約」は、あくまでも死後の事務的な手続きに関してだけ効力を発揮します。

「預金を〇〇に相続する」などの遺産配分に関することは「遺言書」にしっかり記載しておきましょう。

遺言書の種類を解説!それぞれのメリット・デメリットとは

3.受任者と相続人の意見の相違や金銭トラブル

死後事務を行う人と遺産相続人が同じである場合を除いて「財産を相続する人」と「死後事務を請け負う人」の意見が対立してしまうことも考えられます。

基本的に死後事務を行うにはお金がかかります。葬儀や納骨を含めておけばその費用が掛かりますし、病院の清算や住宅の片付けや処分費などは高確率で発生する費用です。

死後事務は委任者(請け負う人)に「預託金」としてお金を預けておき、余ったお金は相続資産に組み入れることが一般的です。

そのため相続人と受任者の意見が食い違い、対立してしまうことも。

また、安請け合いをして無料で引き受けた受任者が、預託金を使いこんでしまうというケースも発生するようです。

このことから、手数料はかかるものの「死後事務委任」は専門家に依頼しておくことが一番安全で確実といえるでしょう。

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「死後事務委任契約」は公正証書として残そう

死後事務委任契約を結び、いざ執行者が事務手続きを行おうとしたら相続人の強い反対にあって実行できなかった。

このような事態を避けるため、また、スムーズに死後事務を行ってもらうため「死後事務委任契約」は公正証書にして残しておきましょう。

万が一そのようなトラブルに見舞われた際でも、公的な書類である公正証書に公文書として残すことで実行力が高くなります。

誰しも、立つ鳥後を濁さずでスマートに人生を終えたいもの。残された人が右往左往したり、意見の相違で対立したりといったトラブルは本意ではないですよね。

だからこそ元気で気力も体力も十分なうちに死後の事務をしっかり引き受けてくれる人を確保しておくことが、安心な老後につながるのではないしょうか。