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文化祭で死にたくなった話

こんにちは。

実家が全焼したサノと申します。

僕の通っていた高校では、
毎年、3年生になると
演劇をすることが決まっていました。

僕のクラスでは「タイヨウのうた」
という作品の演劇をおこないました。

タイヨウのうたは、YUIが主演の映画で、
日の光を浴びることができない
病気の女の子が、病と闘いながら、
歌手を目指すという話でした。

僕はクラスの中心にいる
タイプではなかったので、
隅っこの方で雑草の役でも
やろうと思っていたのですが、
人手が足らず、
奇跡的に主人公が組んでいるバンドの
ドラム役に抜擢されました。

僕にしては、とても良い役でした。

ただし、劇中で実際に
演奏するシーンがあるため、
ドラムの練習をしなければいけませんでした。

本番までの1か月間、
僕は吹奏楽部の友人や、
軽音楽部の友人の指導の下、
ドラムの練習を一生懸命頑張りました。

そして本番数日前に、なんとか
ドラマーっぽい動きが
できるようになりました。

僕はドラマーっぽい動きを
できるようになったことが
嬉しかったこともあり、
親や別のクラスの友人に、

「俺、劇でドラムの役やるねん。」

と自慢しました。

みんなは、そんな僕のことを
暖かく見守ってくれ、
劇をとても楽しみにしてくれていました。

一方で、ドラムの準備は
ばっちりだったのですが、
全体的な劇の進行については、
あまりうまくいっていませんでした。

僕たちの学校では、
劇は審査員の先生方から採点されます。
そして、優勝クラスを決めます。

だからみんな優勝を目指して
必死に練習していました。

劇の採点基準は色々ありますが、
特に大事なのが、
「時間をきちんと守れているか」
という項目でした。

しかし、前日の予行練習では、
時間がオーバーしてしまっていました。

セリフを少し減らしたり、
工夫したのですが、
それでもダメでした。

そんな時に、大道具担当のクラスメイトが
ぽつりと言いました。

「ドラムのセット運ぶのが
結構時間かかるんよな。」

その一言により、僕のドラムセットは
撤去されることになりました。

そして代わりに渡されたのが、
タンバリンでした。

文化祭当日、学校に行くと
僕以外は大盛り上がりでした。

他のクラスの演劇を見ながら、
これからタンバリンを叩く
自分の運命を呪いました。

そしていよいよ僕のクラスの
劇がはじまりました。

ヒロインの女の子は
とてもいい演技をしていましたし、
その他のクラスメイトも
全力で頑張っていました。

僕だけ逃げるわけにはいきませんでした。
僕も覚悟を決めました。

そしていよいよ、クライマックスである
演奏パートがはじまりました。

友人に

「俺、ドラムの役やるねん」

と自慢してしまったことが、
走馬灯のように頭の中で流れました。

ドラムの叩き方は教えてもらっていましたが、
タンバリンの叩き方は
教えてもらっていなかったので、
僕は緊張しながらも、
少しでも元気そうに見せようと、
なんとなく頭上でタンバリンを叩く
スタイルでやってみました。

すると舞台袖から、

「え、ファンキーモンキーベイビーズ?」

という声が聞こえました。

もう一思いに僕を殺してくれ、と思いました。

僕は心の中で
ファンキーモンキーベイビーズに謝りながら、
ずっとファンキーモンキーベイビーズ式で
タンバリンを叩き続けました。

こうして僕たちの劇は
なんとか時間内に
終えることができました。

結果は下から2番でした。

人生ってうまくいかないなぁと思いました。


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