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「創作大賞感想」わたしのイカイ地図



「わたしのイカイ地図」この小説を作者の歩行者bさんは「ファンタジーラブコメディ」だと公然と、宣われた。
ファンタジーでラブコメ?
確かに、それは不思議な街に迷い込んだミカの物語だった。


何?何?
此処は、地球とは違う何処か別の星?それともミカはパラレルワールドに迷い込んでしまったの?
奇才 歩行者bさんが描く世界は、いつも変なのに(失礼)計算され尽くしていて妙な説得力がある。その中でも、この「わたしのイカイ地図」の世界は群を抜いて変で奇妙だ(誉めています)
なにしろ、イカが隣に居て日本語話してるんだから(笑)
これで最終話まで引っ張れるの?!

第一話が終わった時の私の感想は、正直言ってそんな感じだった。
日本語を操るおかしな身長150cmの4本足のイカとイカの国に、たった一人迷い込んだ、ちょっと自我が強い主人公ミカ。

ところが、


第二話、第三話と読み進めるうちに、私はこの「おかしな二人」に魅了されていく自分に気が付いた。

最初はミカの凛とした生きる姿勢に惹き込まれた。
そう、こんなイカだらけの国に迷い込んでも、ミカは生きる事を諦めたりしていない。きちんとその国の物を食べるし、イカの国にある物で工夫して少しでも快適に生活していこうとする。やみくもに明るいわけでもガムシャラでも貪欲でもない。ただ淡々と「生きる」ことに対して真っ直ぐな人、そんなミカのイメージが私の中で定着した頃、私は気付いてしまった。

あれ?私
イカB氏も好きだ。

えっ?!私が?!
イケメン好きとして名高い、この私が?!イカを?(あ、元々食べるイカは好き 笑)
違う違う!私が好きなのはイカB氏だ。彼の高い知能から溢れる思いやり、優しさ、人(ミカ)に対する繊細な心配り、好感の抱ける適度な謙虚さ……
そのどれをとっても、日本女性が求める理想の男性像ではないのか?!
と思う自分が居た。どうして「日本女性」限定なのかと言うと私が単に海外女性が求める理想の男性を知らないからだけど(苦笑)



第六話を読み終える頃、私はイカの国が現在の地球よりも文明が発達していて合理的だと確信を得た。市役所もあり、行政もしっかりと整えられている。イカB氏は、それなりの機関(ラボ)の優秀な人材?違うか(笑)イカ材らしい。


ミカとイカB氏が打ち解けあえたかに見えた時、イカB氏が病に倒れてしまう。どんなに文明が発達しようとも「病気」という物は存在するのだ。そしてミカは、その研究に協力する為にこのイカの国に居るのだから。


イカB氏が倒れてしまったので、新しいイカが後任としてやって来た。この新任は同じイカなのにB氏との違いが歴然としていた。ここで益々ミカの心が決定的なものになったのではないかと推測出来る。
人は人、イカもイカ(なんのこっちゃ)

この頃になると私は「此処は地球の未来の姿」ではないのか?と疑いを抱いた。ミカとイカの事ばかりが心配になってしまい、深夜の更新を首を長くして待つようになった。

私の一番好きな第九話。
5ヶ月の時を経て、ミカとイカB氏は再会を果たす。
もうこの時にはイカB氏は不治の病に冒されていて余命幾ばくもない。
それでもイカB氏は言う。

「公共の利益は私の利益です」

なんて素晴らしい、イカB氏(泣)
何処かのパーティーばっかりやってる政治家に爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいわ(泣)あ、爪あったっけ?イカ?
ミカも、もちろん私と同じ気持ちであっただろう。二人は国?星?時代?を超えて愛し合う。あ、もしかしたら性別も越えているのかもね。


最もロマンティックで、最も悲しい第十話。
ミカが、どうしてイカの国に連れて来られたのかをイカB氏が打ち明ける。やがて、彼はミカとの愛は本物だったと確信を得て旅立って逝く。愛するミカに見守られながら…
その前にミカとの養子縁組を最期の力を振り絞って行ったのはミカに約束を果たしてもらいたいだけでは決してなかっただろう(泣)

イカなのに、真っ黒くなっちゃったイカなのに…私の涙腺は緩みっぱなしだ。


感動の最終話。
イカB氏の遺志を果たすためにミカは、B氏の小さくなった亡き骸を胸に想い出の海へと向かう。
車窓から流れていく景色を見つめながら、B氏の数々の言葉を思い出すミカ。
科学を自然や穴などに例えて話すB氏の言葉が温かくて胸を打つ。
死んでしまった海へ亡き骸を葬るつもりだったミカの目にイルカが跳ぶ姿が写る。
嘘はつかなったB氏なのに、この海は生きていた…
あんなに哀しそうだったのに、海は生きていた。
貴方が遺したメッセージは何だったのだろう?
考えるミカ。
でも約束の海へ連れて来てくれたのも、また貴方(イカB氏)だった。

もう、此処が何処であろうと
いつであろうと人間だろうとイカであろうと構わなくなった。
私に確かな普遍的なものを教えてくれた「わたしのイカイ地図」

「うん。私もあなたを愛している」

この言葉だけで、当分生きていける。


でも、ファンタジーは分かったけど、何処もラブコメじゃなかったと思うよ、歩行者bさん(笑)
ファンタジー純愛ストーリーだ。









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