【27】 新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)の活用

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信 2020年8月3日

企業の経営者・担当者のみなさま、接触確認アプリは利用者が増えるほど感染拡大防止に役立つようになります。個人情報・プライバシーの保護に配慮しつつ、自分たちのために、周りの人々のために、ぜひ活用しましょう。

1. 課題の背景:

医療機関で患者が新型コロナウイルス感染症と診断された場合、感染症法に基づき管轄の保健所に報告され、接触確認(contact tracing)及び濃厚接触者への対応が行われます。接触確認は結核や麻疹などを対象に昔から行われている手法で、患者が企業の従業員の場合、勤務先の健康管理担当者はほぼ確実に協力を求められます。また、担当者が一人一人の状況を確認・記録していく地道な作業であるため、時間がかかって対応が遅れたり、患者数が急激に増えて対応が追いつかなくなったりするおそれが生じます。これは日本に限らず世界共通の問題です。

そこで、世界中のスマートフォンの多くに搭載されている基本ソフト(Android)を開発するGoogleと、iPhone及びその基本ソフト(iOS)の製造元であるAppleは、共同で濃厚接触の可能性を検出する技術を開発し、5月下旬に世界各国の政府・公衆衛生当局向けに公開しました。

日本では、厚生労働省がGoogleとAppleの技術を活用したスマートフォン用アプリ(COVID-19 Contact-Confirming Application、以下「COCOA」)を開発しました。6月19日に初版が公開され、ダウンロード数は7月31日17時時点で約996万件に達しています。

2. 企業でできる対策:

○ 従業員にCOCOAの利用を推奨し、「近接した可能性」を通知されたら健康管理担当者へ申し出るよう呼びかける
○ 従業員が新型コロナウイルス感染症の患者になった場合、「陽性登録」を勧める
○ 「近接した可能性」を申し出た従業員と患者になった従業員の
個人情報・プライバシーの保護について、ルールと運用に盛り込む

COCOAの利用目的は、新型コロナウイルス感染症の患者と接触した可能性を知ることで、保健所によるサポートが迅速に行われるようにすることです。利用者数が増えることで感染拡大防止につながることが期待されていますので、まずはできるだけ多くの従業員にCOCOAを利用してもらうことが大切です。任意の呼びかけに加え、業務用スマートフォンを支給していれば標準アプリとしてインストールしておく方法もあります。

その上で、もし従業員が患者と「近接した可能性」(〔参考1〕参照)を通知されたら、健康管理担当者に申し出るよう呼びかけましょう。健康管理担当者は保健所と連携して、濃厚接触者の観察又は検査といった対応が円滑にできるようになります。理想的には、スマートフォンを持つ従業員のほぼ全員がCOCOAを利用するようになれば、対応の対象範囲を聞き取りだけでなく客観的な裏付けをもって設定できるようになり、不確かな情報による過剰ぎみの対応(例えば、全員一律自宅待機で事業がストップする)を防ぐことが期待されます。

従業員が新型コロナウイルス感染症の患者になった場合、COCOAを利用していれば匿名で「陽性情報の登録(陽性登録)」ができるようになります。保健所から患者に登録方法と処理番号が案内されるはずですが、企業からも登録を勧めましょう。患者がはっきり記憶しておらず、聞き取りを中心とする接触確認では漏れてしまう社内外の濃厚接触者を確認できるなど、感染拡大防止に役立つことが期待されます。

上記の対策を進めるにあたり、「近接した可能性」を申し出た従業員や患者になった従業員の個人情報・プライバシーへの配慮は大前提です。例えば、該当する従業員について社内で伝える範囲は必ず本人に確認して同意を得る、同意を得ることが難しい場合には保健所を交えて相談することをルール化しておく方法が考えられます。COCOAそのものも個人情報・プライバシーの保護を重視した仕様(〔参考2〕参照)になっています。

〔参考1〕 COCOAの利用方法

□ AndroidスマートフォンとiPhoneに対応している
□ 設定した端末同士の接近を検知して記録する
□ 新型コロナウイルス感染症と診断された人が「陽性登録」すると接近した記録のある端末に「近接した可能性」と次のアクションが案内される

COCOAを使える端末は、Android 6.0以上で動作するスマートフォンとiOS 13.5以上で動作するiPhoneで、2016年以降に発売された機種のほとんどが含まれます。公式アプリストア(Google PlayストアとAppleのApp Store)から無料で入手と更新ができます。

COCOAを起動し、利用を開始すると、他のCOCOA利用端末との接近(概ね1m以内で15分以上)を記録し、14日間保存します。

利用者が新型コロナウイルス感染症と診断され、COCOAで「陽性登録」の操作を行うと、接近した記録のある端末に「近接した可能性」のプッシュ通知が表示されます。通知された利用者は、風邪症状があるか、周囲に新型コロナウイルス感染症が疑われている患者がいるかを回答し、その内容に応じて帰国者・接触者外来の予約・受診案内か14日間の体調確認に進みます。

〔参考2〕 COCOAにおける個人情報・プライバシーの保護

□ 電話番号や位置情報は使わず、Bluetoothで接近した情報だけが記録される
□ 利用開始と「陽性登録」は、能動的に操作したときのみ行われる(オプト・イン)
□ 「陽性登録」は匿名で、接近した相手には誰なのか通知されない
□ 接近の記録は14日経過後に自動的に削除される

政府が個人の行動を監視するのではないか、「陽性登録」の操作をしたら誰かに知られるのではないかなど、個人情報・プライバシーに関する懸念については開発段階でかなり考慮されています。プログラミングの知識がある方であれば、公開されたソースコードを調べることもできます。

まず、GoogleとAppleが開発した技術は、個人の特定につながりやすい電話番号やメールアドレス、プライバシーに強く関わる位置情報は使わず、ワイヤレスヘッドホンなどに使われるBluetooth規格の無線通信を使って接近した情報だけが記録される仕組みになっています。

また、COCOAの利用開始と「陽性登録」は、いずれも利用者が能動的に操作したときのみ行われます(オプト・イン)。さらに「陽性登録」は匿名で、「近接した可能性」を通知された人には相手が誰なのか伝わらない仕様です。

接近の記録は14日経過すると自動的に削除されます。その前でも利用者がCOCOAの使用を中止することで削除が可能です。

3. 関連情報リンク:

1) 厚生労働省: 新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)

2) 政府インターネットテレビ: 「新型コロナ接触確認アプリの紹介」篇

3) AppleとGoogle、新型コロナウイルス対策として、濃厚接触の可能性を検出する技術で協力

4) Google: 濃厚接触の可能性を通知するシステム: 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大抑止に取り組む公衆衛生機関をテクノロジーで支援する

5) ITmedia Mobile: 内閣府が語る「接触確認アプリ」開発の経緯
 「インストール義務化は信義則に反する」 (2020年7月31日)


4.資料リンク

本資料のPDF
・本資料の動画


文責:田原 裕之(産業医科大学 産業精神保健学)

※本文章は、産業医有志グループ(今井・櫻木・田原・守田・五十嵐)で作成しました。厚生労働省新型コロナウイルス対策本部クラスター対策班・和田耕治先生(国際医療福祉大学・公衆衛生学教授)のサポートも受けております。
今後も経営者・総務担当者向けに必要な感染拡大防止策情報を随時配信させて頂きます。本情報は著作権フリーですので、ぜひお知り合いの経営者に拡散をお願いします。
※本内容に関するご意見・ご要望は、covid-19@ohsupports.com までお寄せください。
※これまでに配信しましたバックナンバーは、こちらをご参照く
ださい。
※動画配信も始めました。下記サイトをご参照ください。
https://www.youtube.com/channel/UC4lRPnKfYPC6cT1Jvom5VbA

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?