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鉄鋼業界で働く/女性駐在員編/インタビュー(2)/性別に注目されない環境

 【伊藤忠丸紅鉄鋼・MISAデトロイト支店勤務の関口真央さん】


 ――現在の所属と業務内容を教えてください。


 「2020年8月から米国会社(MISA)のデトロイト支店に勤務し、GM(ゼネラルモーターズ)のピックアップトラック向けのアルミ供給を担当しています。その前はシンシナティ支店で日系自動車部品メーカー向けの鋼材供給を担当していました」


 ――米国内で早くも2拠点目で、アルミ担当というのも特徴的ですね。


 「シンシナティに着任したのは16年10月で、通算の駐在歴は5年半になります。アルミについては日本で自動車鋼材の輸出業務を担当していたころ、オーストラリアのホールデン(17年まで現地生産していたGM傘下の自動車メーカー)にアルミを納入していた経験もあり、デトロイトを増員する際に移駐することになりました。日本人駐在員も日系担当だけではなく、米系との取引も経験すべきという北米を統括する上長の方針もありました。アルミは車体軽量化ニーズの高まりとともに伊藤忠丸紅鉄鋼全体としても取扱量が増えていて重要な分野であると認識しています」


 ――やはり、海外で働きたいという思いが商社志望につながったのでしょうか。


 「そうですね。仕事を通じて新しい世界を見たいという思いが強くありました。そこから多くの人々の生活に関わる商材を取り扱いたい、それなら素材系かなと絞っていき、最終的に今の会社とご縁がありました」


 ――入社5年半で海外駐在の辞令が出るというのは非常に早いですね。


 「上司には早い段階から海外に行きたいと伝えていました。当時を振り返ると、未熟だったにもかかわらず、よく決断していただいたなと感じます。着任後は自分の知識不足もあり、壁にぶつかることもありました」


 ――苦労された点とは。


 「日本では国内鉄鋼メーカーの材料を輸出するまでが主な仕事でしたが、こちらでは米国鉄鋼メーカーから材料を仕入れて、お客さまに確実に供給するまでを手掛けないといけないので、単独では解決できない問題も多く、うまく対処できず悩んだりもしました」


 ――どう乗り越えてきたのでしょうか。


 「シンシナティ時代の上司から『とにかく現場に足を運びなさい』と教わり、自分の目で確認した上で丁寧に対応することを徹底しました。次第にお客さまも鉄鋼メーカーの方々も信頼してくださるようになり、何かあれば直接私に問い合わせてくれるようにもなりました。その後は日本では取引実績のない大手部品メーカーさまとの米国でのお取引を担当し、サプライヤーとして賞を受賞したことも自信につながりました」


 ――デトロイト支店は米国人が支店長を務めていますね。


 「シンシナティ支店は日本人駐在員が支店長でしたので、米国式組織の中で仕事するのは初めての経験で、日本とは仕事の進め方が違うと感じています。主な相違点は米国が効率重視であること。マニュアルがあるわけではないので慣れるまでは大変でした」


 ――関口さんは米国会社で初めて女性総合職の海外駐在員として赴任されたそうですが、女性のキャリアを切り開くという意味では、海を渡ったことをどう捉えていますか。


 「日本では”女性総合職”という点がフォーカスされる場面が少なからずあったように思いますが、性別が取り上げられることに少なからず違和感がありました。こちらに来てシンプルに”セールスマネージャー”という肩書きで仕事する環境を経験できたのは大きな契機でした。自分自身も含め、一人一人が性別に関係なく、それぞれの個性や特性を生かしたビジネスパーソンになれればもっと楽しく自由になれるのでは、という発想で仕事に取り組めるようになりました。もし、海外赴任を迷っている人がいたら、男性も女性も自分と同じように思いきってチャレンジしてもらいたいです」


 ――今後の目標は。


 「在任中に日本でも取り入れた方がいいような仕事の進め方をなるべく多く吸収して、フィードバックすることです。将来的には米国だけでなくアジア、欧州とのビジネスにも携わりたいです」


 ――オフはどう過ごされていますか。


 「週2―3回ジムに通っていて、あとは料理と旅行ですね。こちらのキッチンは広くて調理機器も大きいので、日本では難しい料理も作れます。旅行はこちらで長距離運転や飛行機での移動に慣れ、フットワークが軽くなったのも影響しています。最近はセドナにも行きました」

(音成 泰文)


 鉄鋼業界で活躍する女性をはじめとした多様な人材、未来を担う人材を、随時紹介していきます。


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