相殺と消滅時効の覚書

A→B ①5月末、②6月末、③7月末の弁済期で賃料債権あり。これらを請求
B→A ④R4.7.2弁済期の金銭債権あり。R14.8.1、①②③と相殺を主張。

A:①②③の家賃払えよ

B:④と相殺するわ
(2日後)

A:(既読した)いや、その④いつのよ?R4.7.2〆?もう10年経ったから時効でしょ?今日、消滅時効援用(@R14.8.3)するわ。はい、消えた債権と相殺できません。①②③払って。

B:いや、(a)時効で消える前に(b)相殺適状になってたら相殺できるし(∵総裁の担保的機能優先。508条)。
(a)援用したときから消えるわけだから、8.3に④は消えたわけです。
で、
(b)両方弁済期になってれば相殺適状なんだけど、④が消える(8.3)より前に、①②③の弁済期(最遅で7月末)が到来してる、と。一方、④の弁済期は、R4.7.2なので、余裕で弁済期到来済みと。
∴①②③とも相殺適状ね。はい、全部相殺。

A:は?まって。時効で消えるのって、(a)期間満了時(判例※1)でしょ。だから、④は8.3じゃなくて、7.2に消えるの。
てことは、①②はしゃーなしとして、③は7.2時点で弁済期未到来だから、③は相殺できません。③は払って。

B:あ、じゃあ、③の期限の利益(7月末まで払わなくてよい利益)は、7.1に放棄したことにします。これで7.1に弁済期到来してるから、③も相殺OKね。

A:は??今は8.3じゃん。(B)期限の利益を享受しといて、あとから放棄したことにするってだめでしょ(判例※2)

B:はあ・・そしたら、③は払うよ。でも、①②は相殺な!

A:Ok。

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※1 最判S61.3.17。時効期間満了後、援用の意思表示まで要求しなければ消えないとすると、あまりにも援用権者に酷。時効期間が満了すれば、いつでも援用できるんだから、満了時に消えることにする。という価値判断。

※2 最判H25.2.28。受働債権の弁済期は、期限の利益を放棄して現実に期限が到来していることが必要。(→すでに期限の利益を享受してしまっているので、もう放棄できない。使い捨て品のイメージ)


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