2024年92冊の本を読んだ人がお勧めの本を9冊、分野別に紹介してみた

昨年に引き続き、今年読んで良かった本を紹介してみようと思う。去年の記事はすぐ下にリンク。92冊読んだと言っても全部をまともに読んでいるわけではなく、適当に一読した本も含まれる。経験則的に10冊読めば良本に1冊出会えるので10冊につき1冊紹介出来るルールとした。そのため、今年は9冊紹介する。

余談だが、読みたい本の溜まり方が凄くて、自分の読書記録アプリ(読書メーター)に登録されている読みたい本は960冊に到達している。頑張って時間を捻出して少なくとも月に4冊ペースを来年も維持したいと思っている。というか今年はあんまり本を読んでいない印象を持っていたのに去年よりも冊数は多くなっている… なぜだ…?  


ライフハック

今年は習慣の大切さを改めて感じた一年だった。如何にして自分の生産性や勉強量を一定に確保していくのか試行錯誤を重ねていった。そんな中で出会った本がこちら。

著者の井上新八という人は、自身のことを習慣のプロと呼ぶ。大量のタスクをこなすと共に自分の好きなことも毎日続けている。"毎日続ける"ことの大切さをひたすら説明した本がこちらで、かつ、井上新八は実際やっている。毎日続けることの大切さを説くために、著者は毎日5分間マイケルジャクソンのダンスの練習を1年間続けた結果をリンクで紹介している。その動画を見ると本人は謙遜しているが、ダンス初心者の目からみると彼のダンスは見応えがある水準に達しているように感じた。一日一日の積み重ねの大切さをしみじみと感じさせられる。

僕はGoogle spreadsheetで毎日の習慣化した行動を管理していたのだが、最近は有料のアプリに課金を始めた。habitifyというアプリが良かったのでおすすめ。

ライフハック部門は幾つかの本と迷ったのだが、実際に自分の生活を変えた本を取り上げた。同様に自分の生活を大きく変えたという点でこの本も挙げられる。

この著作も本の厚さの割に主張していることはとても単純で、「口呼吸ではなく鼻呼吸をしろ」であった。これは日常生活全般に留まらず運動しているときも口呼吸を一切せずに徹底して鼻呼吸をすることのメリットを強調している。どこかの狩猟採集民族の呼吸方法を観測していると全員鼻呼吸を行っており、かつ、そのような民族は狩りの為にトップアスリート以上の激しい運動を長時間継続しているという記述があり印象的だった。また、鼻呼吸によって喘息の発症予防かつ治療に繋がるという主張もされていた。最初は眉唾ものだと思ったが、軽く調べてみると日本の有名なエコチルというコホート研究からも類似の研究結果が出ており、医学的知見としても固まってきているようだった。この本の読了後にはすぐに自分の呼吸方法を全て鼻呼吸に変えたし、そのおかげで楽に長距離走れるようになった、気がする…? 少なくとも自分は喘息持ち、かつ、日常生活を口呼吸でしている人だったので、鼻呼吸に切り替えることは大きなメリットがあると判断した。

心構え

心が前に関しては、去年、Ben Bergeronの"Chasing Excellence: A Story About Building the World's Fittest Athletes"という本を紹介した。この本はスポーツ心理学の知見からパフォーマンスを最大限に発揮する方法について述べたものだが、邦訳版のが難点であった。Ben Bergeronの本を読んだ後に、日本の本を漁っていて見つけたのがこちら。

表紙の人は、2015年のラグビー日本代表の五郎丸選手。そう、この本は2015年のラグビー日本代表がワールドカップで南アフリカを破った通称「ブライトンの奇跡」の影の立役者である荒木香織さんという方が書いた本であった。五郎丸選手のキックの直前に行うプレ・パフォーマンス・ルーティンは一時世間を風靡し、皆真似していたと思うが、このプレ・パフォーマンス・ルーティンを一緒に作り上げたのも荒木香織さんだった。そもそも、この人の経歴は実は凄くて、スポーツ心理学では世界一と言われるDr. Diane Gill and Dr. Daniel Gouldの下で博士号からポスドクまで行っており、最新のスポーツ心理学の知識を身に付けている。それは、Ben Bergeronと言っていることが非常に似てくるというのも納得だ。この本はメンタリティを強化したい人にとってお勧めの一冊。本が薄い点もかなりのプラスポイント。

今年のお勧めのもう一冊は、稲盛和夫の「生き方」。

言わずと知れた名著で、有名な人や優秀な人が片っ端からお勧めしている本だ。有名人のお勧め本には大抵入っている気がする。例えば、大谷翔平とかね。この一冊から学ぶことは本当に多くて、読んだ後に取ったメモを何度も見返すし、もう一回内容を読んで頭に内容を沁み込ませなければいけないと感じるほど良いことがたくさん考えている。難しいことは決して言っていないけれども、仕事人以前に人として大切なことは何かを改めて教えてくれる。逆に今まで読んだことがなくて恥ずかしくなってくるほど。出会えて良かった。 

小説

去年は官能小説が2冊ランクインしたが、今年はいわゆる恋愛小説が2冊ランクイン。一冊目はジェイン・オースティンの「自負と偏見」。

恋愛小説の古典的名著と呼ばれており、女家族のベネット家の木が難しい次女エリザベスと富豪のこちらも気が難しいフィッツウィリアム・ダーシーが最初は険悪になるものの、最後には結ばれるという典型的な恋愛ストーリー。なのだが、この本の素晴らしいところは行間を堪能出来ること。小説は美辞麗句を如何にして並べるかが腕の見せ所だと思ったが、この小説では随所に行間を綺麗に読ませて実際の登場人物たちの腹の勘ぐり合いや恋愛模様の予測といったところを読者に想像させる点が多かった。文学的価値が非常に高いと思ったし、これを平易な言葉遣いで実現できるジェイン・オースティンは凄いと思った。

個人的に次に目を付けている古典作品はロリの端緒とされるウラジーミル・ナボコフの「ロリータ」。ロリかよ、キモイと思われるかもしれないが、この本は読書好きなら絶賛している作品のようなので是非読みたい。読みたいんだがKindle版が無いからどうしようものかと悩んでいる… 

さて、小説部門2作品目は、凪良ゆうさんの「汝、星のごとく」。

凪良ゆうといえば、「流浪の月」で有名だが、個人的にはマイノリティを取り扱った作品はあまり好きではなく、面白かったけど良い印象は抱いていなかった。「汝、星のごとく」は完璧に僕の印象を塗り替えてくれた。人間の切ない心模様、遠距離恋愛の難しさ、そして身分ではなく特定の人を好きになる姿が描かれている。最初の謎の記述から衝撃のラストまで、読んで損はさせない内容になっている。王道的といえば王道的かもしれないが、王道でこまで力を発揮出来るのは小説家本人の力のように思う。

宗教

宗教に忌避感がありますか? そんな人にとってもおすすめの本だ。ジェイコブ著作兼体験の「聖書男」。要するに著者の方は頭がおかしくて、家系がユダヤ系にも関わらず聖書やキリスト教に触れてこなかったので、しっかりと自分は宗教に一度染まってみたい。そこで、聖書に書かれている内容を全て馬鹿正直に守ってみた、という内容。

適当にやってはいる部分も多々あるのだが、実際の司教や牧師さんに話を聞きに行ったり、世界のイベントに参加したりと徹底度合は鬼畜の所業。奥さんにも呆れられる始末だ。読んでいくうちにキリスト教の良いところ悪いところを詳らかにしてくれし、キリスト教についてもいかに様々な派閥があるかを教えてくれる。面白かったけど、amazon換算で625ページという対策なので最初の100ページ読むだけでも良いかもしれない。

芸術

ロンドンといえば、ミュージカル。ミュージカルといえばレ・ミゼラブル。レ・ミゼラブルを鑑賞するなら知識を入れなければ、という動機のもと幾つかくのレミゼに関する本を買い漁った。その中で以下の本が非常に面白かった。

如何にしてヴィクトール・ユゴーの歴史小説「レ・ミゼラブル」がミュージカルに仕立てあげられていったかを様々な視点から描かれている。それぞれ最初に人物紹介があり、関係者からの直接のインタビューを載せるという形式で本が構成されている。レミゼの見所や作成秘話が満載で、ミュージカルを更に楽しめるようになれる。例えば、ジャン・バルジャンの歌唱力が発揮される"Bring him home"は元々曲は準備されておらず、ロンドン公演のジャン・バルジャン役が最高のテノール歌手であるコルム・ウィルキンソンが演じるということで急遽作成された話であったとか。そのような小話が満載で、他のミュージカル鑑賞の際にも参考になる知識が盛りだくさんでもあるのでおすすめの一冊だ。

ただ、一つ難点を上げるとすれば、原著は"The Musical World of Boublil & Schonberg"なのだが、この本は原著の全てを翻訳したわけではなく一部を翻訳しただけで抜けている部分がある。抜けている部分があるのか訳が悪いのかは不明なのだが、序盤は正直読みにくかった。

医学・公衆衛生

色々な本や論文と迷ったが、今年はこの一冊にした。山崎史郎の「人口減少と社会保障 孤立と縮小を乗り越える」。

日本の人口減少が叫ばれるようになって、国の対策が遅いや若年者向けの社会保障が足りてないなど色々なことが叫ばれている。この本の著者の山崎史郎はミスター介護保険と呼ばれており、日本が誇る介護保険制度の立ち上げに深く関わった人であり、1990年から今までの歴史的背景も踏まえた社会保障の変遷をまとめられている。政府が実施する政策の根拠や理念と言った部分を解説し、現在の問題点を端的に全体像を見据えながら解像度高くまとめるだけに留まらず、未来の方向性に関して現在取り組んでいる実例を添えながら述べている。非常に先見の明がある方が書かれた本という印象だ。このような人が厚労省で働いていることに誇りを感じる。

ギャグ論文

今年のギャグ論文部門はぶっちぎりの優勝で、"Dear Reviewer 2: Go F’ Yourself"。論文の査読でいつもネガティブな発言をしてくるのはReviewer 2というミームを実際に検証した論文。現実的にはReviewer 2とReviewer 1でそれほどまでの差異はなく、Reviewer 3が本当に悪いやつという結果を出していた。この論文を査読したReviewer 2はどんなコメントをしたんでしょうね。研究の内容も最高だが、タイトルも最高だ。

まとめ

今年もめちゃくちゃな分野からの詰め合わせによって構成されるおすすめリストだが、特定の分野に偏らずに本を読めていて良かった。来年は自分の分野の本の比重を高くしながらも、趣味としての読書を楽しんでいけるようにしたい。




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