きつね

きつねとかくれんぼ

 夏休みのある日、私は友達のきつねと遊んでいた。

「かくれんぼをしよう。」

 きつねの提案により、私達はかくれんぼをすることになった。そうは言っても、きつねとやるかくれんぼは普通のかくれんぼと違う。なぜならきつねは化けるからだ。つまり私は、なににきつねが化けたかを見破らなければいけない。まあ、隠れたきつねを見つけるというより、化けたきつねを見つけるようなゲームだ。

といっても、私の部屋は八畳しかない。さすがのきつねでも騙しきれないだろう。

い〜ち、に〜い、さ〜ん、し〜い、ご〜お、ろ〜く、し〜ち、は〜ち、きゅ〜う、じゅうっ

私は目をつぶって十数えた。早速捜索開始だ。

部屋に入る。入って右手には勉強机。奥にはベット。右奥には本棚が置いてある。

さあ、どこだ、きつね、きつね。

すると、エアコンから音が聞こえてきた。

コンコンコン、エアコンコン

なんだこの音は。

エアコンコン、エアコンコン

これは....きつねの鳴き声ではないか。愚かなきつねめ、鳴き声までは化けきれなかったか。

私はエアコンを見ていった。

きつね、エアコンに化けたのだろう。君の負けだ。

しかし、なんの反応もない。

きつねよ、エアコンに化けたのだろう。素直に認めたまえ。

反応がない。私は腹が立ってきて、怒鳴った。

きつね、お前はエアコンに化けたんだろう!!

すると、近くに浮いていた埃が、きつねになっていった。

私は埃に化けていたのだ。エアコンではないぞ。

ゾゾゾゾゾゾゾ....背筋が凍った。では、あのエアコンはなんなのだ......

そうしている間にも、エアコンは鳴き続ける。

エアコンコン、エアコンコン

ガタガタ、ブルブル

私ときつねは、抱き合って震えた。

助けてくれ、助けてくれ

エアコンは鳴き続ける。

エアコンコン、エアコンコン

私はお経を唱えた。

南無阿弥陀、南無阿弥陀

きつねもお経を唱えた。

コンココンコン、コンココンコン

容赦無く、エアコンは鳴き続ける。

エアコンコン、エアコンコン

コオオオオオオオオォォォォオォオ

キツネは恐怖のあまり、泡を吹いて倒れた。

ガチャッ

母さんが入ってきた。私は必死に助けを求めた。

「母さん!!エアコン、エアコンコン、エアコンコン、エアコン、エアコンココオオオオオオオオ.....」

バタッ

 私も泡を吹いて倒れた(ブクブクブク)。恐怖のあまりうまく伝えられなかったが、さすがは母親。意図を汲み取ってくれたようだ。

 母はエアコンの修理会社に電話した。エアコン修理会社はあっという間にやってきてあっという間に直していった。

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