恋とか愛とか

恋と愛の違いというものが、昔からよく議論されているのを見てきた。TwitterやらInstagramやらで、恋愛マスター気取りの胡散臭いアカウントが偉そうに語っているのを醒めた目で見るような、そんな斜に構えた女子高生だった。

恋は〜
愛は〜

とせこせこ違いを語る文言を何度も見てきたけれど、とりあえずニュアンス的には恋より愛の方が大人でかっこいいものである、という見解なのだろうなと思った。

かっこつけてるみたいで我ながら恥ずかしいのだけど、本気で恋とか愛とかがよく分からなかったし、胡散臭いアカウントが言うことにも一度もしっくりきたことがなかった。

そもそも尊敬している人以外の言葉をあまり信用しないタイプなので、胡散臭い得体の知れないアカウントの言うことが入るわけもないのだけど。

一度身体で感じたことなら、よく分かる。

家族や親戚が好きだ。
正直言って好きではない人もいるけど、基本的に好きだ。

他人から不遇な扱いを受けていたら悲しいし腹が立つ。代わりに殴り返してやりたくなるし、守ってやりたくなる。体調を崩していたら心配になるし、喜ぶ顔が見たくてプレゼントをしたり会いに行ったりもする。

嫌なところも知ってるけど、喧嘩だってするけど、だからと言って嫌いになったりはしない。心の奥底にある大切さみたいな指標が揺らぐことはない。

きっとこれが愛だろう。と思った。
そしてこれは恋ではない。と思った。

では恋とは。
初めて恋をしたのは、小学6年生だった。次の恋は、高校1年生だった。そして次は大学3年のとき。どうやら私は、恋愛感情を抱きにくいタイプらしい。

恋愛している時に思うけれど、多分稀すぎる分、一度に多くのエネルギーを使っている気がする。多分、数年間溜め込んでいたエネルギーをここぞとばかりに使い込むのだろう。おかしな表現だけど、命を削って恋愛してるような気がする。

向こうから連絡が来た日は体が熱って動悸が激しくなって寝不足確定だし、不安すぎてご飯が食べられなくなって必ず痩せてしまうし、電話をした日なんかには、切っても興奮冷めやらなくて徹夜をしてしまうし、告白なんかされた日には泣きながら過呼吸になる。

我ながら馬鹿だと思うけど、本当に体が止められない。自分の体じゃなくなったみたいになる。それでいて、少しも苦痛じゃない。

今のパートナーは3人目で、今までで一番長く一緒にいる人だ。もれなく上記のように命を削って恋をした。

色々なことがあった。
心底愛されているのが伝わって、なんでもできそうな最強の気持ちの日も。傷付いて大泣きした日も。不安で不安で仕方がなくて、胸が張り裂けそうだった日も。足元がぐらついて立っていられないような心地の日も。怒りで気が狂いそうな日も。死んでしまいたいと本気で思った日も。

そしてどんどん、彼がどんな人か分かっていった。少し言い方を変えると、好ましく思わない一面をたくさん知っていった。

ただそれでも、あの人は私を変わらず好きだと言った。

私はどうだろう、と悩み続けた。そして考えて、気が付いた。

私は、私の描く彼と恋愛をしていたのだろうと。

「理想になれなくてごめん」
と喧嘩した時に言われた。その時は、
「理想なんかない。今あなたがしたことに怒って悲しんでいるだけ」
と本気で思ったし、そう答えた。

今なら分かる、私は彼に理想を押し付けていた。彼が理想であろうと無理をしたり、辻褄を合わせて誤魔化したことが、今剥がれ始めていると思った。

そして今、究極の問いが突きつけられている。

お前は、生身の彼を好きか

イエスと答えられたらそれが、愛なのかなと思った。

あぁこの人のこういうとこ嫌だな、どうしようもないな。別れようかな。
そう思ったり

だけどやっぱり好き。彼という人間が好き。
と思うこともある。

フラフラフラフラするけど、それでもやっぱり一緒にいるのは、多分愛に変わり始めているから。

なんでこんなやつと結婚したんだろ、と思う夫婦を数多く見てきたけど、「でもいいところもあるから」なんて、当人は悲しく笑って答えるのだ。子どもの頃は、「悪いところで帳消しだろ」と思っていたけど、今は悲しく笑う奥さんの気持ちが、ちょっと分かる。

だけどやっぱり、心は揺れるよ。
胸が張り裂けそうなほどに辛くて、投げ出してしまいたくなる日もある。

きっとこれが完全な愛に変われば、また私たちの関係が一つ、変わっていくのかも知れない。

その日まで、きっと情緒不安定。