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「トポロメモリー」強くなりたくてトポロジーの入門書を読んだ話

結論
劇的に強くはならない。でもめっちゃ楽しい。

「トポロメモリー」とは

皆様ご存じのことと思いますが一応おさらいしておくと、「トポロメモリー」は株式会社バンソウの取締役、ゲームデザイナーのミヤザキユウ様が企画・制作を手掛けたボードゲームです。続編が「2」「3」と出ている人気のシリーズ。「3」は今週末に迫ったゲームマーケット2019秋で発売されるそうなので要チェックですね。

そんな「トポロメモリー」シリーズでは、「トポロジー」という数学上の1分野をテーマとして扱っています。その内容について掻い摘んで説明すると、「図形を『構成するパーツの数』と『開いている穴の数』の2要素のみで判別する考え方」という事になります。

それを利用したボードゲームとは? という方や、いまいちよくわからんという方は 公式ルールブックをご参照ください。

「トポロジー」について知る

そんなこんなで楽しく遊ばせてもらっている「トポロメモリー」シリーズですが、良く考えてみたら僕「トポロジー」のことをよく知らんまま遊んでいるなと思い至ったので入門書を1冊読んでみることとしました。
今回読ませていただいたのは角川から出ている「読むトポロジー」という文庫。以前新書で発売されていたものを元に文庫化したものだそうです。
(新書2010年→2018/12文庫)

ばしばしばしーっと取りまくれる必殺技みたいの載ってないかな……

以下は読んでみての感想を箇条書き形式で書き落としたものです。

・ド文系が数学の入門書を読んで書いた読書感想文
・理解浅めなので内容に間違いがある可能性があります
・この先文字しか出てこない

以上の点にご了承いただいたうえで読み進めて頂ければと思います。


数学とは

本書は「読む」トポロジーと言うだけあって、どうしても数式を扱うことが多くなる概念である数学について、可能な限り文章で記されています。そういった内容の入門書であるがゆえに 買って読む対象は僕たちのような門外漢が多くなりますから、まずは「そもそも数学ってどんな学問なの?」というところからしっかり解説されています(こういうケアはとてもありがたい)。特に印象的だったのは、


・人間は4000年以前より方程式を解く技術を受け継いでいるという事。
・観測や試行のみで考えるのではなく、いつでも活用できる確かな手段にするために「完璧な証明」を求めること。
・文化を支える土台を担う「数学」の間口を閉じないために、数学に興味を持って楽しむ「学習」が必要なこと。

この辺りの内容でした。3つ目の点に関しては数学のみに限った話ではなさそうで、どのような学問も人々の生活に深く根差しており、等しく学ぶ意義があるものなのだという事を考えさせられました。今更感もだいぶありますが良い視点を得たなと思います。

射影

僕は数学にあまり自信を持っていなかった上に幾何学は食わず嫌いをしていたので、「合同」「相似」あたりはなんとなく聞き覚えがあったものの「射影」という概念には初めて触れました。三角形がすべて同じになる「射影幾何学」の考え方も面白い。実際に三角形を切ってみて、光当てながらくるくる回してみましたがなるほどなあという感じです。平面図形を3次元的に見るというのかな。不思議な感じがしました。

ちょっとわかんなくなってきたころ

射影の話が終わったあたりから、少しずつ内容が難解になってきます。橋渡りの問題やベッチ数について触れたり、数式を多少なり扱ったりし出すようになってきたり。なんとなくさらい読みするだけでは理解が追い付かなくなったので、ひとつひとつの話を2度ほど読み返して なるほど、と腑に落ちる感じです。ただ、オイラー・ポアンカレ・ハミルトンなど、聞いたことある名前の人が考えていたことに触れられたのは励みになりました。

やっとトポロジー

そのあたりのあれこれについて触れた後、内容はトポロジーを構成する要素である「ホモロジー」と「ホモトピー」に進みます。
一通り読んで感じたことは、


・トポロジーは既成の概念に囚われずに新しい発想で図形を区別するために作られた見方である
・「曲面を分断しない閉曲線の数」と「曲面上の円周を縮められるか」の2点で、図形に空く穴の数(種数)を判断しているっぽい
・メビウスの輪とクライン管がめっちゃ出てくる

といったあたりの内容。「曲面」をモチーフにする以上、平面よりも立体を扱う機会の多い学問なのかなと感じました。
また、単一の図形についてその種数で弁別する内容の話が多かったので、「トポロメモリー」でカードを取る条件のひとつである「パーツの数」についてはあまり触れられなかった印象でした。高度になると出てくんのかな。

パーツが複数ある場合、3次元的に傷を付けずに一つに合わせることができないので形がそもそも別物なのはよくわかる。パーツの数で分けるのは当たり前だよねって感じで前提処理されてそうです。

ようするに

「トポロメモリー」シリーズは、捲られたカードの中から「種数nのトーラス(ドーナツ型の事)x個」という条件が完全一致する組み合わせを探すゲームという事になるのかな(ここ理解度が問われる)。そういう視点で見られるようになると「青」と「49」が違う図形であることがよくわかります。
(変形すると……球+種数2vs種数1×2)
上記インストラクションではこの辺りを同一視して取っていたので反省。そう言った意味では、今回「読むトポロジー」を読んでみて身についたのは、取り札同士をより正確に判別するための前提 という事になります。
読んだことで「トポロメモリー」強くなったかと言われれば、答えは劇的ではないもののYESである気がします。見方が固まったというのかな。


数学って面白そう

トポロジーと言う学問は、本来は数式を鬼のように使って4次元空間をはるかに超える高次元に突入しながら展開される超数学なようなので深く触れることはしませんが(脳が溶けるから)、浅めのところを浚う分には数学って楽しそうな分野なのだな、と思わされた1冊でした。
ケーニヒスベルクの橋渡りの問題やメビウスリング、ポアンカレ予想のわかりやすい解説を見ることで、普段あまり関わることのない数学の世界を垣間見た気がしました。

学問として学ぶ機会には残念ながら恵まれませんでしたが、今後も機会があれば数学に親しんで生きて行くことができればなー、というのが率直な読後感です。

その後

「トポロジー」で書籍の検索かけた時に出てきた数学漫画「はじめアルゴリズム」も、数学への意識がちょっと高かったタイミングなので折角だからと読んでみました。
数学が苦手でも問題なく読めるように設計されていて、空間配置の上手な描き方で数学の世界に誘ってくれます。

序盤で面白かった話は「カプレカ数」についてのもの。
任意の4桁の数字について、その4つの数で構成できる最大の数値から最小の数値を引く作業を繰り返して行くと「6174」でループするようになるという不思議な数字です。読んでから数日は、暇なときに適当な4桁で計算したりなんかしてました。楽しい。

そのほかにもタクシー数や射影について、そしてもちろんトポロジーについても触れられている作品です。興味があれば是非。

ボードゲームは素晴らしい

こうして未知の学問に触れてみて思ったことは、知らなかったことを知るのは楽しいという当たり前のことと、ボードゲームは様々なバックボーンを持つ人がそれぞれの好きなものについて作ってくれるので、いろいろな分野の物事に興味を持って世界を広げるきっかけになってくれる、という事。
ゲームマーケットでは知らなかったどんな世界に触れることができるのか、今から楽しみでなりません。

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