見出し画像

なのか展備忘録-Ⅹ 「虚構の名盤 或いはアナザー・ミューレンソウ」

この区画は、美術館やコンサートホールのレセプションのような設え。壁一面に絵が並び、少し離れたところには立卓がいくつか置かれています。

でもこれもちゃんと出展作品。シラカワリュウ様より出展の、「虚構の名盤 或いはアナザー・ミューレンソウ」です。シラカワ様については、「THE 残業」のイメージが強い方だなと記憶しています。


生きているゲーム

ところで、壁に展示されている絵だと思っていたこのたくさんのイラストは、全部「存在しないアルバムのアートワーク」なのでした。アーティスト名と、アルバムのタイトルもちゃんと設定されています。

その下には12枚のカードが。どうやら、これがこのアルバムに収録されている曲のようです。

画像2

「インターネット読経」「キーゼルバッハ部位」がどんな曲なのか気になりますね。


画像2

これらの曲名は、来館者が考え出したもの。立卓の中に曲名カードがたくさん積まれたテーブルが一つあり、プレイする人はまずここからドローします。


画像3

そして、壁の曲のどれかと入れ替えます。その後は自分のオリジナルのタイトルを一つ考え、山の一番下にこっそり入れたらプレイ終了です。

1度に限りますが、並んでいる曲同士を入れ替えることも可能。誰かが一枚引くたびに、アルバムの内容はどんどん入れ替わっていきます。中身が常に変化し続ける、生きているゲームだなと感じました。


結果発表

会期を終えた後のシラカワ様による結果発表がこちら。

こうして見ると、結構ジャケットに影響されて曲が偏る印象です。
来館者のセンスが良いというか、ゲームとか言葉遊びとかが好きな人が見に来るんだなという事が伝わる内容の曲名も多くありました。
「ゴリアテ・オーヴァードーズ」とか「そこはかとなくディスタンス」とか「カイラル通信」とか個人的に好き。
ぜひご覧になって、お気に入りの1曲を探してみてください。

ちょっと記憶が明瞭ではないですが、僕は何か「cosθ」みたいな曲名のを書いた気がします。残念。


これはゲームなのか?

そこはかとなくゲームでした。同じルールを用いているのにプレイヤーごとに使っている盤面が違うという特殊な構成が面白い。

プレイヤー同士が既存の曲名を見て影響される要素はあるのですが、自分が書いた曲は山札の一番下に戻すのでそこにタイムラグが発生します。もしかしたら僕の使われているかもしれないという思いからたまに見に来ちゃうような、絶妙なルールだなと感じました。

同じジャケットを見ていてもそこから受け取る印象は人によってまるで違うという事、曲名から連想される映像もまた違うという事が分かりやすく形になったゲームでした。予想もしなかった場所に自分の描いた曲が置かれた人、きっといるはず。

画像4


「ミューレンソウ」

その後、「虚構の名盤」がだいぶ楽しかったので物販ブースにて「ミューレンソウ」のオリジンを購入。後日のゲーム会で遊んでみました。

画像5

こちらは、非実在の「アーティスト」「アルバム」「曲名」の3つが書かれたカードを使ったゲーム。山札から3枚共通カードとしてめくり、親プレイヤーが好きな曲を1つ、5秒だけ流すというもの。流された曲を聞いたほかのプレイヤーは同時に「今のはこの曲!」と思ったカードを指さし、被らなければそれらのカードを親が得点として獲得することができます。
他にも遊び方はありましたが、今回はこのルールを用いました。


これがだいぶ楽しい。上手く票がばらけるように、場札のどれにも引っかからないような曲を流したり、むしろ複数の曲に引っかかりそうな曲を探したりする必要があるわけです。

「いやその曲はこっちでしょ!」とか、「ジャケットの方向性が違いすぎてどれだかわからないよ!」みたいなことが結構頻繁に起こるので、音楽って人に寄るんだなというのを再認識できました。場所と人数を問わずに遊べる楽しいゲームです。

画像6

要素の欠落と可能性

ふたつのミューレンソウを通して、定型のものから要素を一つでも削るとそこには無限の可能性が生まれるという視点を得ることができたなと感じました。「曲名がない」「メロディがない」状態だと、そこには受け手がそれぞれの感性で自分なりの要素を当てはめることができる。これが何を意味してどう活用できるのかはまだ分かりませんが、凄く面白いことだなあと。

タイトルのない曲を作って、聞いてもらった人に曲名付けて貰って統計取るとか楽しそうですね。誰かもうやってるのかな。

この記事が参加している募集

イベントレポ

最後まで読んでいただいてありがとうございます! いただいたサポートは、きゃすりばーとしての活動に大事に使わせていただいています。