信用についての考察

◆信用とは

信用(客観性)とは、この人はこのような状況の時には、このように行動する、行動しないという経験的データに基づく信頼(主観性)度(確率)のこと。良いこと(例えばあの人は約束を守る)にも悪いこと(例えばあの人は約束を守らない)にも使えるし、0・100ではなく確率分布(例えばあの人は3回のうち1回は約束を守る・守らない)を持つ。

◆信用には感情レバレッジが働く

信用も信頼度であり、信頼は主観性なので、データは曖昧で適当な印象であることも多いし、感情によって比重が極端になることもある。例えば一度浮気した人はまた浮気する、というのは経験的データに基づく判断というより、感情的に二度と許せないという意味合いが強い。だから信用や信頼は相手の感情も関わってくる。感情はレバレッジのようなものなので、具体的な行動だけでなく感情を動かさないと信用はうまく築けない(例えば、あの人は客観的には3回に1回約束を守らないが、こないだ約束を破ったことはひどく傷ついたし謝ってもくれないので2回分カウントすると、あの人は3回に2回約束を守らない人だ)。

◆感情的な期待と落差

感情はレバレッジというのは、信用取引と似ている。はじめにレバレッジ(期待)を相手にかけるから、利益も損失も大きくなる。期待との落差が大きいほど、大きく利益を得た、損失したと人は錯覚する。期待が低ければあまり傷つかないし、喜びもない。期待が大きいとたくさん傷つくし、喜びも大きい。たくさん傷ついた人は、もう何も期待しない・させない戦略を取りがちだが、それだと喜びも全体として小さくなるので、いつでも最善とは限らない。よって、レバレッジをどう活用するかは信用をうまく築く上では重要となる。

◆最終的に日々の誠実な行動が勝つ

感情が冷める時、レバレッジ効果が消え去ることがある。その場合、今までレバレッジがかかっていた感情が消失し、冷静になり、一回の行動は一回にカウント修正される。例えば、恋愛感情に舞い上がっている間は感情レバレッジが高いので、喜びも傷つきも大きいのだが、恋愛感情が落ち着いてくると、なんと過去の経験データについてもレバレッジ効果が消える。あの時はすごく嬉しかったけど、よく考えたら一回は一回だな、と考え直しがはじまる。だから、レバレッジが使えるのはそんなに長期間ではなく、一定期間で精算が必要になるということを覚えておきたい。これも信用取引と似ているな。よって、日頃から誠実に行動している方が長期的には信用される。感情で舞い上がらせてくる人を人は魅力的に感じがちだが、冷静でも安定している人の魅力を知るには知性が要る。

◆自分がどうにも変われないことが逆に信用となる

この人はもう二度と変わりそうにないな…という性格的な部分ほど、実は信用されている部分だと言えるだろう。ある意味で期待通りの行動しかしない部分なので、慣れれば安心する。それに自分が合わせる術を見出せるなら、相手を変えようとするのではなく、諦めて相手の嫌な部分でも受け入れつつ、平和に暮らせる。

また、相手があまりにも期待してなさ過ぎることだと、突然突飛なサプライズをしても、喜びや失望よりも先に「おかしい、あの人がこんなことをするはずがない、何か裏があるのでは?」と勘繰られてしまう。

つかみどころがない人というのは、安定的な動きをしない人で、型にはめられるのが嫌いで多面的なので、いつどう変化するか読みにくい人。期待通りの動きはしてくれないので扱いづらいが、ある意味で面白い人ということになる。いつも同じ行動パターンしかしないと面白くはないので、つまらないという理由で飽きられる可能性はある。

この人は私が変えられるかもしれない、という期待に応えて感謝すると、相手は自己効力感と自己肯定感を増すので、適度に相手の願望に合わせて自分を変化させるのは、意外と見過ごされがちだが大事である。やりすぎると自分を見失うし、無理やり変わろうとしても逆戻りするとかえって失望させるので、無理はせず、ささいなことでいいから、「あなたのおかげでこれができたよ」と感謝するようにすると良いと思う。

だから、基本的には自然体で安定的なキャラクターでありつつ、あまり驚かせ過ぎない程度にサプライズ感もあった方がよくて、ささいな感謝を忘れないということが大切。

◆身近な人の信頼関係こそ大切

すべての人と信頼関係を結ぶのは現実的ではない。それよりも自分の身近な人との信頼関係を大事にした方が良い。その証拠に、信頼は主観的で感情を伴うが、信頼度は経験データの蓄積の差によっても生じる、という点をあげたい。

Aさんと付き合いの長いBさんは、Aさんの行動を長い期間観察している。Aさんと付き合いの短いCさんは、Aさんの行動データを少ししか持っていない。データを多く持っている方のBさんにとっては、Aさんのその後の一度の行動で確率が変動する変化率は小さい。一方、Cさんの方ではAさんのその後の一度の行動で確率が変動する変化率が大きい。つまり、信用はある程度貯金できる。はじめに良い印象を蓄積してあると、多少失敗しても信用を失う度合いは小さい。しかし、直接的な付き合いがない人ほど、一度の失敗に対する信用損失度合いは大きく、挽回する機会さえ失いかねない。つまり、誤解も生じやすいということ。これは例えば、ネットの炎上における身内と部外者の印象の相違も説明する。

よって、自分の行動を普段から多角的に観察している人たちから信用される方が大事であり、部外者からの無理解にそこまで動揺する必要はない。

◆バカ正直=信用される行為?

お世辞や忖度が信用できないから正直に話す人が信用できる、ということについては注意事項があって、正直なのは基本的に良いことなのだが、場を弁えず話すことは相手の感情に配慮していないという点で信用されない危険がある。まず、前提として嘘を言わなければいいのであって、言い方や伝え方を気をつけたり、状況を考えて何をあえて言わないかをよく考えて行動すれば良いと思う。人は、相手が何を言うかと同時に相手が何を言わないかでも思考や感情を読み取っているから、基本的に隠すことは難しい。だからといって、状況を考えず思いついたことを即座に話してしまうとか、相手の感情に配慮しない言い方をするのは、自分を生身の人間として扱ってもらえているのかという点で感情レバレッジに作用するので、嘘をつくのと同じ程度信用はされにくいと思う。それに、嘘は場合によっては親切になる場面もあるからである。もっと言うと、正直か嘘かは表面では分かりづらく、分かるのは論理的かどうか、筋が通っているかどうかである。信用にとって大事なのは、その発言が正直か嘘かという以上に、この人は、相手を生身の人間として大切に扱う気持ちがあることが伝わるかどうかだと思う。

◆秘密の共有について

言動の中で感情を隠すことは基本的に難しいのだろう。秘密を隠し通す場合には、秘密にしたいことだけでなく周辺情報はすべて沈黙する他ない。そうでないと、質問された時に周辺情報から容易に推察される。「これについては話したな、これについては答えなかった、答えに一瞬詰まったな、この発言とこの発言に矛盾がある」みたいに。だから、秘密にしたいことについては、それに関連する情報は丸ごと一切誰にも話さない、何を訊かれても沈黙するという徹底さが必要なのだろう。それはとても苦しいことでもあるので、なるべく秘密は抱え込まない方がいい。しかし、秘密を作り、秘密を守ることが信用を作る要素だったりする。内部でしか公開されない情報を守れるかどうかは、親密さに交えてもらえるかどうかに関わる。だれかの秘密をペラペラしゃべるなら、自分のこともペラペラしゃべられていると相手は感じるから信用はされない。

◆信頼について

ここまで、信用について主に考察してきた。信用と信頼の違いは客観的か主観的かという点があるが、信頼についてはもう少し深い意味があると思われる。信用というのはデータによって適切に判断しようとする判断だが、信頼というのはデータを無視して判断することなので、主観的に相手に最大限の期待をすることである。それは無責任ではないか?失敗した時の失望に耐えられるのか?と感じるのは尤もだが、自分の判断力を超越し、可能性に賭けて、運命に任せるということである。人は自分の主観的な判断で相手を決めつけて支配しがちである。しかし、自分の経験的データは所詮ちっぽけなものである。だから、相手には未知の可能性が潜在している可能性が十分に考えられる。賭けるのは勇気の要ることだし、無責任と感じる気持ちも分かるが、人間の行為は究極的にはどれもギャンブルである。確実なことは何も言えない。たった一度の人生、やりたいことをやらずに後悔するよりは、やって砕けた方がマシ。勝算のある勝負しかしないという生き方もあるが、人は結局、何かしらに賭けなくてはならない。だけど、自分が信じた結果に後から文句は言えない。本人が人生の厳しさを受け止めてそこまで覚悟を決めているなら、予測はどんなに低確率だとしても応援するのが筋ではないか。確率を少しでも上げる手伝いをするかどうかが、単なる無責任や見限りと、応援の違いかも知れない。信頼には愛が試される。

◆運命を信頼して生きよ

最後に人生を要約したい。人生、ベースには信頼がないと何も行動できない。なぜなら100%確実なんてことは世の中にないから。信用だけでは未知数の部分の不安要素は何かしら残るので、運命を信頼しないと何も行動できない。何か行動するには信頼という名の勇気や覚悟が必要なのだ。信頼して傷ついた経験が多いと、もうこれ以上傷つきたくないので信用できる根拠を探してばかりになり、慎重になり過ぎて行動に移せなくなる。でも、どこかで信頼して飛び込まないと何も進まない。勇気をもってあなたの人生を飛び込もう。

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