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織物応用講義の真面目レポート


東京校6期も早いもので5講目になります。今日もnote編集部の渡邊がレポートをお送りします。

5講は織物の応用編、化学繊維に関する講義でした。
講義を受けるまでは化学繊維と聞くと、天然繊維と比較して「体に良くない?」というイメージを持っていましたが、 本講義ではそのような誤ったイメージを覆し、さらに化学繊維にしかない魅力や特徴について学ぶことができました。

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日本の化学繊維の立ち位置

まず前提として日本の繊維産業を振り返ってみたいと思います。

皆さんの中には、繊維産業は斜陽産業である、と聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。実際に日本のアパレルメーカーが生産地の海外移行を進めたことにより国内の生産量は減少していきました。経済産業省の統計をみてみると1991年比で約1/4 に減少していることがわかります。

参考URL:繊維産業の課題と経済産業省の取り組み

この現象の裏では中国の繊維産業、特に90年以降の大きな躍進も関係しており、現在では世界における生産額のうち約70%を中国が占めるようになっています。

さて次に、世界全体で繊維産業を見てみるとどうでしょうか。

繊維産業の課題と経済産業省の取組のコピー


繊維生産額は毎年増加傾向にあります。 世界的には人口が増加していて、それに伴って需要も増えているからです。 繊維産業の内訳を見てみると天然繊維の生産量はここ数年では横ばいとなっているのに対し、 化学繊維は過去20年間にわたり年に5%ずつ成長をしているそうです。

では内訳という意味で日本の繊維産業はどう変化をしてきたのでしょうか。

化学繊維と天然繊維の双方とも全体としては減少傾向にありますが、 化学繊維のうちキュプラやレーヨン、そしてアセテートを含むセルロース繊維の生産は年間10%ずつ増加しており現在では18万トンにものぼるそうです(2017年時点)

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つまり日本の繊維産業のなかでもこと化学繊維に関して言えば、 繊維に機能を付与したり性能を高める技術の高さからも、決して斜陽産業ではないと言えるのではないでしょうか。


日本でしか生産をしていない化学繊維

世界中で日本の1社のみしか生産していない化学繊維があります。 今回の講義でも学んだベンベルグです。ベンベルグとは世界で唯一、旭化成が生産している再生セルロース繊維・キュプラのブランド名です。 産地の学校でも東京校とは別にベンベルグに特化したプログラムがあります。 

なぜ現在ベンベルグは日本でしか生産がされていないのでしょうか。 実はこれまでベンベルグは(2009年まではイタリアなど)日本以外の国でも生産されていたそうですが、 ポリエステルやナイロン等の合成繊維に価格で太刀打ちすることができず、生産量は下降の一途を辿ってきました。

日本でのみベンベルグの生産量が維持した理由の1つとして、意外にも「インド」が大きく影響しています。 インドの女性はサリーやデュパタという民族衣装を着用します。 ベンベルグは肌触りや光沢がシルクに似ているのに加え、 インドの高温多湿な気候に合った機能性までも備えていることから民族衣装向けに普及していったそうです。

綿やレーヨンなどで作られた更に安価な民族衣装も多く流通するなか、 ベンベルグは機能性のある天然由来の上質素材として現地で人気になりました。

これにはインドの中流層増加にともなう需要の変化が関係しているそうで、 社会のニーズに合った取り組みがいかに大事であるかがわかるエピソードだと感じました(第2講の染屋の青木先生のお話にも繋がります)。

また先にも触れましたが、産地の学校ではベンベルグの素材に特化した 「ベンベルグラボ」というコースがあります。 直近では 2019年7月〜11月の期間で第2期のコースが開催され、 その講義内容レポートもnoteにまとまっているため詳しく知りたい方は是非ご参考になさってください。

ベンベルグの他にも、新素材としてラムースや合成クモ糸繊維、ミノムシの糸、トリポーラス、、、 といった素材の研究が行われており、日本は世界でも化学繊維の分野で先進的なポジションにあります。

例えばシワになりにくい、型くずれしにくいといった形態安定機能や速乾、防寒、導電といった機能を持つ化学繊維の素材が増加傾向にあるため、 これからも化学繊維の動向には注目したいと思いました。


<参考記事>

・ベンベルグとインドの関わり
https://toyokeizai.net/articles/-/175634
https://aya-nakazato.com/bembergmuseum/

・繊維産業の課題と経済産業省の取り組み https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/fiber/pdf/180620seni_kadai_torikumi_r.pdf


渡邊

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