見出し画像

【掌編小説】家路のコーヒー。


……ゴン、ガシャン。
そんな音を立てて、「あたたかい」コーヒーが自動販売機の取り出し口に落ちてきた。自分は猫舌であるが、さすがにこの外気温では「あたたかい」ものを買ってあったまりたくなる。くわえて砂糖とミルクがたっぷり入った甘いコーヒーにした。正直寒さで体が冷え切ったせいでカロリーも消費しているだろうから。

すると、今押したボタンのコーヒーがちょうど売り切れの表示になる。
「運がよかったなあ。いやそれとも、こんなことで運を使ってしまったってやつかな?」
……どうも自分はマイナス方向に物事を考える傾向がある。よくないことだ、というのは分かっているのだが、持って生まれた性分、というやつだろうか。マイナス思考がつねに頭のどこかにあるのだ。

ここの自動販売機は設定温度が高めだったので、手袋で熱めのコーヒーを持ちながら、自動販売機の前でぼーっとしていた。すぐにコーヒーの温度が下がるだろうから。

「…………」
ぼーっとしていたら、何気に本で読んだこんな言葉が思い浮かんできた。
『想像している悪いことの殆どは起こりえないことだ』……というやつだった。何かの自己啓発本だったか。

確かに、自分が想像した、悪いことが実際に起こった率はごくごく少ない。……もしかしたらなかったかもしれない。だが、悪いことを考える、ということはそれだけで精神をすり減らせるものなのだ。それはつまり、疲れにつながるということである。

……そういえば、あいつは底抜けに明るいやつだよなあ、なんでこんな俺とつるんでいるのか分からないくらい。

俺にはとある友人がいる。何があろうと前向きな思考が変化しない、ポジティブ人間の友人が。
昨年遠方に転勤になってしまったため、しばらくは直には会っていないものの、メッセージアプリでのやりとりはしていた。あいつはそういえば、ココアが好きだよな。夏でも冬でもしょっちゅうココアを買っていた。あいつは今頃、ホットココア片手に帰り道だろうか、と思った。

ぼんやりそんな事を考えつつ、少し冷めたであろうコーヒーのプルトップを開けて一口目をぐい……、とやったところで気がついた。あ、これはココアじゃないか。まちがいに今頃気がつくとは……。

……だが寒さにこごえた体には普段口にしないまろやかな甘さが妙な癒やしになった。ココアはせいぜい2回くらいしか飲んだことがなかったが、こんなにココアって旨かったっけ?

その瞬間、なんとなくスマホを取り出し、メッセージアプリにこう打っていた。

『ココアが旨かった』

すると、一拍おいてすぐ返事がきた。

『たまにはいいだろう?』

というメッセージ。

……なんだか全てを見透かされているような気がしたので、そのあとメッセージは送らなかった。

【了】

本日は掌編小説更新です。

今回は「ChatGPT」と「Dream by WOMBO」の合わせ技ということで2つのAIに手伝って貰いました。最初、「ChatGPT」に『掌編小説むけの季節が冬であるテーマを10個ほど出してください』ってことで10個ネタを出して貰いましたが、それをそのまま使うのは面白くないので、そのネタを合成して別のネタ作った感じです。それが冬の街中に佇む自動販売機でコーヒーを買う男のイメージでした。じゃあそこから話を広げよう的な。

で、そのネタをさらに「Dream by WOMBO」でイラスト出力してもらいました。
呪文はこんな感じ。
『吹雪の中に立っている雪の積もったジュースの自動販売機から缶を取り出す男性がいる絵』
フィルターはInk v3を使いました。そして今回出力して貰ったこのイラストから話を書いた感じです。

とはいえ書いてみたら、途中ずいぶん話が変わったなあ、という感じでした。最初のイメージはもうちょっと暗かった。絵に出力されたオジサンキャラが当初影背負ってたので(^_^;)


この記事が参加している募集

気が向きましたらお茶おごってやるか~的にサポートしていただけたら有り難いです。創作の燃料にはなります。