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「フェイクニュースの見分け方も?」エチオピアで2万人の子供達が受けてる新しい教育

エチオピアのAI企業iCog LabsのCEO Getnet氏の初来日。
おかげさまで、100名以上の申込みをいただいたイベントだけでなく、20社以上の方々と濃いミーティングもできて、ますます次の展開が楽しみに!

中でも、今回の滞在で何度も質問された件が、

の中でも反響が一番大きかった

「就業時間の20%は、子供達を含む後進の教育に充てること」

という教育事業の話。

このiCog Labsが展開する教育事業について、ここで2020年2月現在の情報をまとめたいと思います。

0. プロジェクトの概観

iCogが提供する教育事業は、現在多岐にわたっていて、次の4つのプログラムが走っています。

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1.キッズ向けデジタルリテラシー教育
     "Anyone Can Code"(通称ACC)

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2017年に始まって、いまエチオピア全土で2万人以上の教育に広がっているのが、8歳から12歳の子供達を対象にしたデジタルリテラシー教育、その名も"Anyone Can Code"。

2014年最年少でノーベル平和賞受賞したマララ・ユスフザイさんも(!!)、ACCを聞きつけて本人たっての希望で訪問しています。(写真は、女の子向けのGirls Can Codeのイベントを訪問した2019年7月の様子 )

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Twitter やSquare創業のジャック・ドーシーさんも、アフリカ滞在の一番に訪問してTweet.

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このように、ACCが世界的に知られている理由は、代表の"ベティー"ことBetty Dessieによるところが大きいです。

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※↑はBooking.comが主催するTechnology Playmaker Awards 2019にて表彰されたときのベティ。

彼女の有名な伝説は、9歳のときに始まります。

エチオピア東部のハラールという街で生まれたベティ。
9歳の誕生日に、父親にプレゼントをねだるも父親にその気がないことがわかると、父親の仕事ー電気機器の販売の脇で、初めての起業を果たします。

父親のお店に来たお客さんへ、携帯に音楽送信をしてあげたり、ビデオ編集をしたり、小さな仕事を請け負って、約90ドルを売り上げ、誕生日を祝ったそうです。

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その後、東アフリカ随一の AI企業iCog Labsにジョインし、テックシーンの最年少の先駆者としても活躍。

Bluetoothを使って肺炎を診断する「バイオメディカル・スマートジャケット」や、エチオピア政府が、灌漑用の河川の地図を作成するアプリなど、彼女のみで著作権をもつソフトウェアが4つあるほどです。

その活躍は、CNNやBCCで特集されています。

その彼女が代表となって、エチオピアだけでなく、世界展開しつつあるのが、iCogのACCなのです。

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どんな内容か、というと、それぞれ100時間のコースがLevel.0〜9の10のレベルで展開されていて、Level.0では、デジタルリテラシーに特化した内容に。

・検索の仕方
・フェイクニュースの見分け方
・ SNSの背景と使い方     などなど

Level.1では、マサチューセッツ工科大学(MIT)・ メディアラボが開発したプログラミング学習用ソフトScratchを使った簡単なロボティクス授業も。

MITとは、カリキュラム開発においても協力関係にあります。

このプログラム、エチオピアでは、放課後や夏休みに提供されるのですが、公立学校にはスポンサードを募って無料で提供、私立学校では生徒が受講料を支払う形で運営されています。

エチオピア全土で展開される、とあって、同国でデジタルマネー事業を展開したいクレジットカード会社やアフリカでの知名度を上げたい企業などがスポンサーに。

このプログラムは、スウェーデンやカナダ、イギリス、アメリカ(2箇所)で展開中(実施準備中)で、昨年末には、Dell社のスポンサードでスウェーデン・ストックホルムでのACCが先日修了したところです。

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2.問題解決型学習・PBL "iCog Makers"

「現代では、いわゆるMOOCと言われるオンライン講義が広く活用されるようになって、情報や知識というのは非常に簡単に手に入れることができるようになっています。様々な最先端の論文や本、有名な教授の講義も簡単に世界中でオンラインで手に入れることができたり、アクセスして勉強することができるようになっているのですが、大きな課題の一つははこれらの知識をどう使うか、どう使って新しいものを生み出し、どうマネタイズするか、ビジネスにしていくか、という点です。」

「知識はすでに世の中にある。それをどう活かすか、が大事」と、2/7のトークイベントでも繰り返していたiCog Labs代表のGetnet。

ACCなどの機会で、一通り情報や技術を扱えるようになったら、それをどう使うか学ぶために、と2つめのプログラム「iCog Makers」を展開しています。

12歳から18歳を対象にしつつ、大学生もメインにこのプログラムに参加しており、エチオピア国内の36の大学、ケニア、ナイジェリアで1校ずつにて実施されています。

3.米国大使館やJICAが共催するビジネスプラン・コンテスト「Solve IT」

2018年からスタートして、今年3年目を迎えるのが「SolveIT」というビジネスプランコンテスト。エチオピア全土から昨年は2,000名超える応募者があったといいます。

2のiCog Makersでは、課題がプログラム内で提示されているのですが、SolveITは、リアルな現実で起こっている課題を、自分で見つけ、若い人なりの自由な発想でその解決策を考えていく、というのが特徴です。

例えば、ある貧しい地域で育った青年は、PCもインターネット環境も十分になく、手元の携帯だけで、MOOCなどで自学学習を進めたその意欲の高さから、SolveIT参加を勧められたそうです。

近くの大学のPC環境など研究環境を貸してもらえるようになった彼は、自分の家で家業として飼っている牛に注目します。

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自分の家の5頭の牛が、いつどのくらいミルクを出すのか?さらには自分の地域にはどれだけの牛がいて、どれだけのミルクの供給量があるのか?
日夜牛飼いを訪ねては牛の情報をGPS情報と紐付けて登録し、一帯の牛の管理ができるアプリを開発。

また一方で、ミルクがなくて困っている飲食店の協会を訪問。「ミルクを売るところがない」と自分たちが困っていると思ったら、彼ら飲食店側は、「ミルクを売りに来てくれない」と困っていることを知ります。

そこで、スクーターを一台、リースで入手し、アプリ上で最短距離で"最新のミルク"を回収し、お店に届けるルートを示して、実際に配達するビジネスをスタート。現在3人の新しい雇用を生んで、地元の牛飼い産業にイノベーションを起こしているそうです。

もちろん、このビジネスは、エチオピアだけでなく課題があるので、スケーラビリティが見込めるポテンシャル大!!!

Getnetは、この青年から相談の電話がある度に「いいね!やってみたら!」と背中を押すだけだった、といいますが、こういった才能を発掘し、課題解決策、ビジネスの種を創出しているのが、このプログラムです。

JICAは、私たちの紹介でiCog Labsと出会った、というご縁もあり、彼らとのIT・AIソリューション提供を仕事にしているGAXの秋間信人(夫)を、去年のSolveITの審査員に招聘していただきました。

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※そのときの彼の記事がこちら→アフリカ発のリバース・イノベーションの可能性について考えてみた」

4.2020年いよいよローンチ!インキュベーションプログラム「Solve IT アクセラレーター」

そして、2020年、今年ローンチされるのが、実際のビジネス創出を目論んだ「Solve IT アクセラレーター」という4つめのプログラムです。

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JICAも参画する本プロジェクト。上位5社についてはシードマネーが出資されるという3ヶ月のインテンシブなプログラムです。

海外への視察プログラムも組み込まれる予定で、彼らが日本に来るかも!?という話も。(引き続き、関係各所の皆さんと進めていきたいと思います。)

このように、子供達のリテラシー教育から、テックベンチャー創出・投資まで、エコシステムを作り続けているiCog Labs。エチオピアでのパイロットをもとに、アフリカ全域、もしくは世界各国に展開する準備にも入っています。

iCog Labsはもちろん、アフリカのリーダー達に学べる話題は、これだけじゃないので!さらに、アフリカであることより、"人類として"いま学ぶべきことが多いこと多いこと!! 

という訳で、随時仲間を募集中です!そして、あらゆる形で、これらの取り組みに関心あるよ!という方は是非お声がけください^^ 

関係各所との調整もありますが、ぜひGameChanging Accelerator(ゲームチェンジを加速させるもの)としての取り組み、1人1人の人生の松明を赤々と燃やすような取り組みへと進めていきたいと思います。

どうぞよろしくお願いいたします!

後日談:この直後にご存知のように新型コロナウイルスの影響で、ことごとく来日企画が無期限延期となってしまいました。あきらめないチカラ、もしくは諦めの悪さで定評をいただいている(?)私としては、違う形であってもライフワークを果たしていきたいと思います。

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