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GR@DATE WING 03 L'Anticaジャケットのモチーフは「薔薇物語」であり、そこから見えてくるコンセプト

 宗教画のごときL'Anticaのジャケット「薔薇物語」がモチーフではないだろうか。

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神の絵

 「薔薇物語」とは13世紀のフランス文学である。1230年頃に書かれたギョーム・ド・ロリスの正篇とそれから約40年後にジャン・ド・マンが書いた続篇からなる。内容は夢の中で「愛の神」に5本の矢を射られることで「薔薇」と呼ばれる女性に恋をした詩人が、擬人化された感情や概念と議論を繰り広げながら「薔薇を手折る」(愛を手にする)までの物語である。本篇愛の指南書でもあり、宮廷的騎士道恋愛観を描いたものである。続篇知の百科全書といわれるほど様々な面から社会を記している。中世フランスのアレゴリー文学の傑作らしい。向こうではかなり有名な本だそう。
 私はL'Anticaのジャケットのモチーフを探しているときに初めて知ったので未読であり、全てインターネット知識であることを告白する。

「薔薇物語」がモチーフであるとする根拠として、

・様々なところに薔薇の意匠がある。
・霧子のスカートを包む檻のようなもの白い薔薇のイメージが、幽閉された「歓待」と、主人公が恋する幽閉された「薔薇」と類似する。
黒い薔薇が霧子に絡みついている。これは「歓待」「薔薇」が敵に囚われていることを表していると思われる。「鱗・鱗・謹・賀」の思い出アピール映像でも黒い薔薇に捕まっているうえに刺のある部屋の中にいることから幽閉されていることがわかる。

霧子思い出2

黒い薔薇が蒼い炎で燃え落ちることで動き出す霧子


後ろの三人がマイクを持っており、三峰が黒い薔薇を切ろうとしている。これは議論することで敵を倒す「薔薇物語」と類似する。主人公は薔薇を手折ることが目的であり、ハサミで切ろうとしていることから、やはり黒い薔薇は敵側であると考えられる。
・騎士達は美人と記述されておりジャケットと一致する。
・女神の使いには羽が生えていると記述されており摩美々には翼が生えている。咲耶は羽が生えていないが思い出アピール映像で鳥がいて羽が蒼く燃える演出がある。摩美々も同じくアピール映像で羽が蒼く燃えている。

 これらのことから三峰主人公「薔薇」に恋をした詩人、「薔薇」への案内人「歓待」そして主人公が恋をしている「薔薇」霧子。「歓待」を閉じ込めた「嫉妬」達を倒すため議論で戦う「愛の神の騎士達」咲耶摩美々。騎士に指示を与える(放射状に伸びる黄金の帯がおそらく指示を表している)「愛の神」恋鐘だと推測する。

 また不一致点として、物語では薔薇は赤であると記述があったがジャケットでは衣装の柄を除いた薔薇は白と黒のみである。これは19世紀から盛んになる花言葉の文化が、13世紀に書かれた「薔薇物語」にはまだなく、花言葉が浸透した現代風にシャニマスがアレンジしたからだと捉えることができる。

 ちなみに白い薔薇の花言葉は「純潔」「私はあなたにふさわしい」「深い尊敬」
黒い薔薇の花言葉は「憎しみ」「恨み」「あなたはあくまでわたしのもの」「決して滅びることのない愛」「永遠」

 「薔薇物語」がモチーフであるとする仮説によって見えてくることはこのジャケットのコンセプトである。

 「薔薇物語」は正篇と続篇でテーマが異なる。正篇のテーマは宮廷風騎士道的で幻想的な「女性賛美」であり、続篇のテーマは正篇のテーマ「女性賛美」を否定した「完璧な女性など存在しない、反女性賛美」である。

 そして物語の顛末反対である。
 正篇は「歓待」の案内で「薔薇」に会いに行く途中、「危惧」「悪口」「羞恥」「恐怖」「理性」「嫉妬」によりはばまれ「歓待」「薔薇」は捕まり、バッドエンドである。
 続篇は「愛の神」からの追加騎士「閑暇」「高貴」「裕福」「誠実」「憐憫」「鷹揚」「大胆」「名誉」「慇懃」「快楽」「純朴」「愛玩」「確信」「愉悦」「快活」「美」「青春」「謙虚」「忍耐」「隠匿」「偽りの外見」「不自然な禁欲」と共に敵を倒し「薔薇」を手折ってハッピーエンドである。

 囚われた「歓待」「薔薇」を救おうとしているところからジャケットは続篇であることがわかる。

 ここから考えるジャケットコンセプトはこうだ。

 L'Anticaアイドル(幻想的偶像)として賛美されているが、実際は危惧、羞恥、恐怖おびえることもある女性でもあった。アイドルの自分とは違い実際の等身大の自分は完璧ではないことを自覚している。しかし、それでも愛(薔薇)を得るためにそれらに立ち向かっていく

「アイドルと等身大の自分とのギャップを理解しながらも愛を求めていく彼女達」

 これがこのジャケットのコンセプトでありL'AnticaのGR@DATEなのだ。
   

おまけ
何故、それぞれがその配役なのか?

 愛の象徴でもある「薔薇」、「薔薇」に導く「歓待」を配役された霧子はこの中で最も特殊である。 これは霧子はWINGにて「自分を変えたい」という問題を抱えていたが、Pが「そのままでいい」と言ったことで、霧子はアイドルと等身大の自分にギャップがなく、コンセプトにそぐわない存在になっているためだ。またその献身的で優しい性格からも「歓待」と「薔薇」の役割に沿うのだと思う。

三峰思い出

 主人公である三峰はまさしくこのコンセプトの通り、このメンバーで最もアイドルと等身大の自分にギャップがあると自覚のある人物であり、だからこそ主人公なのだろう。
 「薔薇物語」は夢物語なので霧子のコミュっぽいけど、これは三峰のコミュなのだ。
 また思い出アピールの演出で(おそらく)黒い薔薇の花弁が蒼い炎で燃え落ちてはいるが、自身の衣装には見える限りでは薔薇の意匠がなく他4人とはハッキリと区別されていると感じる。映像の中でやたら蒼い蝶々🦋がでてくるのは意味深だけどなんも思いつかない。インターネットで調べると縁起が良いことだけはわかった。ただ色対比として非常に赤い映像が流れる恋鐘と対比的につくられたのかもしれない。関係ないかもしれないがイソップ童話に蝶々が薔薇に恋する物語があり、もしかしたらこれをモチーフとして扱っているのかもしれない。内容は非常に短いので気になったら調べて読んでみて欲しい。この物語のテーマは「自分にない誠実さを他者に期待するな」である。

イソップ物語・薔薇と蝶 http://catdiary.webcrow.jp/aesop110/110.html

 特徴的な「愛の神」である恋鐘。思い出アピール映像が他の四人とは大きく異なり、全身を赤く燃やしながら玉座(?)に座るという映像。愛の神は、詩人に目が覚めたら本に記すように伝えたり、主人公が愛に生きるように仕向けたり、たくさんの使いを引き連れる権力があったりと自由奔放なキャラクター。また主人公に「希望」「甘美な想念」「甘美な言葉」「甘美な視線」を与えたりもする。恋鐘はPラブだし、愛に生きてるところやムードメーカーなところは似てるといえば似ている。「愛の神」を演じる恋鐘のイメージは普段の恋鐘よりカッコよく見え、ギャップがあり、それがコンセプトを強めているのかもしれない。

恋鐘思い出

他4人の思い出アピールでは蒼い炎であるのに対し赤い炎が全身を包んでいる

摩美々と咲耶は「愛の女神の騎士」なのだろうがその中のどれかはわからない(本を読んでいないのもあって情報不足)。本篇で活躍するらしい「誠実」と「憐憫」なのかな?だとしたら咲耶が「誠実」で堕天した悪魔のようなビジュアルの摩美々が「憐憫」だと勝手なイメージで考える。

わからんわ。

咲耶思い出

緑に光って消える猛禽類の羽や並んでいる軍人が象徴的

摩美々思い出

摩美々は堕天した悪魔の姿から神に背く敵側かもしれない

 思い出アピール映像の青い炎が何を示しているのか、黒い薔薇を燃やすのは敵だからわかるが、摩美々の羽を燃やすのはなぜか。咲耶と摩美々の構図が恋鐘に背を向けていることから、神に背く、敵側であるかもしれないことを照査したい。
「薔薇物語」の敵は主人公の中の感情の擬人化である。

駄文長文終わり 薔薇物語読んだことある人なんか教えてけろ〜

捕捉)愛の神は主人公の心臓に5本の矢で射られて薔薇に恋するわけだが、この5本の矢は「美」「純朴」「慇懃」「愛玩」「美しい外見」である。アンティーカという5本の矢に射られて魅了されている私たちこそがこのジャケットの第二の主人公なのだ。 

参考にしたWeb群

http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp/dspace/bitstream/10069/15131/1/kyoyoJ21_02_04_t.pdf
https://55096962.at.webry.info/201008/article_10.html
https://bookmeter.com/books/27527
https://bookmeter.com/books/27528
https://kotobank.jp/word/薔薇物語-116761
https://uedanobutaka.info/official/2018/01/09/『薔薇物語』-バラと呼ばれる女性を巡る物語/
https://epi-w.at.webry.info/201202/article_5.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/薔薇物語
https://49497.diarynote.jp/200609261657520000/