大野 尚斗 /侍キュイジニエ

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大野 尚斗 /侍キュイジニエ

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(中) バックパッカー料理人 第14便

⑤Fäviken ファミリーミール... 今日のまかないの担当は誰だ? レストランで働く上で楽しみのひとつでもあり、試練のひとつでもあるまかない。 僕らがレストランで過ごす時間は、家にいるよりもずっと長い。 だからか、まかないはファミリーミールと呼ばれたりもする。 ここファヴィケンは火曜から土曜までの営業の1週間、毎日15:30がまかないの時間。 30名から35名分用意する。 まかないの担当は毎日ローテションで入れ替わり、前の週の土曜までに次の1週間分のメニューをシェフに

    • (中)バックパッカー料理人 第13便

      ④Fäviken どうしても食べたくて... 布団から出るのが辛くなるほど寒くなってきた。 昨晩は、僕もトーマスも夜中に3度ほどヴィクターにいびきがうるさいと起こされたから余計眠い。。。ヴィクごめん まだ寝ているトーマスを起こし、今日も玄関に座り込みいつも通り満席の24名分プラス2組のジュニエーブルを組んでいく。 キッチンの壁のタイルには、閉店までの予約リストが貼られている。毎朝、毎晩予約リストを確認して、NG食材やVIPの有無を確認する。ここでいうVIPは主に世界中の他

      • (中)バックパッカー料理人 第12便

        ③Fäviken サバイバル... チャイナに配属された僕の1日は、他の人たちより早くはじまる。 10年間毎回提供し続けているスペシャリテのスカロップ(ホタテ)の料理に使うジュニエーブル(ネズの実の木)と、メインのお肉のプレゼンテーションであしらうスプルース(もみの木)の枝を集めセットしなければいけない。 毎朝、起きて支度をしたら寮の玄関に座り込み、分厚く頑丈な手袋と、強靭なハサミを持ってジュニエーブルの枝を2つ1セットで組み合わせる。同じサイズ、色あい、葉のボリューム感

        • (中)バックパッカー料理人 第11便

          ②Fäviken 追い回しは任せろ... ファヴィケンの朝は... 遅い。 僕ら研修生をここではレストランと同じようにスタジエと呼ぶことにしよう。 寮からレストランまでは車で約20分。毎朝、スーシェフや部門シェフたち3人が車でピックアップしてくれる。 毎朝と言いつつ、ピックアップの時間は12:15。 寮から木の中を走り抜け大通りの脇がポイント。爆音の音楽ともにやってくるシェフたちに拾ってもらい和気あいあいとレストランへ向かう。 これから毎朝、毎晩見続ける車中からの景色に上

        (中) バックパッカー料理人 第14便

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        • 中 バックパッカー料理人
          14本
        • 上 バックパッカー料理人
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        • Alinea
          9本
        • 自己紹介
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        記事

          (中)バックパッカー料理人 第10便

          ①Fäviken 伝説となったレストラン... 2019年12月14日。 北欧はスウェーデンの僻地Järpen(ヤルペン)にあった。 世界中からフーディーと呼ばれる人たちが駆けつけ、ミシュラン2星、World's 50 Best Restaurantsで2016年には41位にもランクインし、トップ100以内常連のレストランFäviken(ファヴィケン)が閉店した。 盛大な閉店パーティから2ヶ月ほど前、僕はスロヴェニアからミラノへと電車で戻り、ミラノ空港からスウェーデンの首都

          (中)バックパッカー料理人 第10便

          (中) バックパッカー料理人 第9便

          レストランを支えるは、チーム力...地元のスーパーを見て回れば、その土地の特産物や住民の食生活もわかる。スロヴェニアはチーズやワインが有名だけれど、ここコバリッドはハチミツも有名らしい。地元の子供が描いたであろう可愛いエチケットの瓶がならぶ。 街からレストランまでは、調べると一本道でそこそこ距離がある。持ち歩いている新しい料理が思いついたらすぐ書くようの大学ノートの一番最後に"Hiša Franko”と大きく書いて、ヒッチハイクを試みた。 10分、20分と待てど通るは数台

          (中) バックパッカー料理人 第9便

          (中)バックパッカー料理人 第8便

          スロヴェニアのおっちゃんは歳とったら大体ハイジのおじいちゃん... 旧ユーゴスラビアのひとつ、スロヴェニアへの道のりは近いようで遠い。 北イタリアから入るには、飛行機で首都のリュブリャナへ飛ぶか、国境を電車で山越えしていくかだ。今回の目的地であるコバリッドはスロヴェニアの中でも、北の山奥の小さな村、夏にはヨーロッパのセレブたちが避暑地としてバカンスに訪れる隠れたリゾート地でもある。 初めて行く国は、国境越えるまで、越えてからも頭の中で色々と想像するだけでとても楽しいもんだ

          (中)バックパッカー料理人 第8便

          (中)バックパッカー料理人 第7便

          ティラミスと青年... 次なる目的地は、初めての国スロヴェニア。 スロヴェニアの山を超えた先にある小さな村コバリッドにあるWorlds 50 Bestでも最優秀女性シェフに選ばれ、2020年には初登場でミシュラン2星にも選ばれたレストランHiša Franko へ向かうためだ。 マントヴァからスロヴェニアまでは遠く1日ではとてもたどり着けない、途中ヴェネチア辺りで1泊することに決めてはみたが、ヴェネチアにはおいしいごはん屋さんはおろか、安い宿も壊滅的にない観光地だ。 地図

          (中)バックパッカー料理人 第7便

          (中)バックパッカー料理人 第6便

          dal Pescatore... 福岡空港から13,638km... 北イタリアはマントヴァ州の片田舎、カンネート・スッローリオ ミシュラン3星を維持し続ける伝説のレストラン。 代々家業を継ぎ、今は2013 World50 Best Restaurants 最優秀女性シェフに選ばれた3代目ナディア・サンティーニが指揮をとる。 多くの日本人シェフたちがここで修行を積んでいることも知られ、日本でも有名なレストランの1つだ。今回、東京、目黒でミシュラン1星を獲得されているイタリア

          (中)バックパッカー料理人 第6便

          (中) バックパッカー料理人 第5便

          大地が育むおいしさ... やっと待ちに待ったボローニャ名物、そして世界中で愛されるボロネーゼを本場で学べる時がきた。 使うお肉は豚と牛かと思いきや、前日仕入れて少し余っていた羊も入れるというじゃないか。そもそも、どんな料理も家庭料理から全ては始まっている。残り物を上手においしくということだ。 まずお肉の仕分けに取り掛かった。太い筋は外し、脂身の多い部分と赤身の部分とで切り分けていく、そして別々にミンサーで荒目のミンチにしていく。脂も全て使えるわけでなく、旨味の脂もあれば臭み

          (中) バックパッカー料理人 第5便

          (中) バックパッカー料理人 第4便

          料理人に壁はない... 3歳の女の子をだき抱え、ベビーカーを押す奥さんにキスをして子供を預けるシェフ ここ、ドロゲリア・デラ・ロッサにはシェフが2人いる。一緒に出勤する日もあれば、交代で営業する時もある。キッチンもサービスもみんな仲がよく、雰囲気も最高だ。 初日から、言葉が分からないけれど、全てのことを隠さずになんでも教えてくれ、やらせてくれた。 そんな僕の朝1番の仕事は、厨房のセッティング(点火、お湯のセット、鍋やまな板出し)をさっさと済ませ、パスタ作りからはじまる。

          (中) バックパッカー料理人 第4便

          (中) バックパッカー料理人 第3便

          **再会...** 最上のチーズ カステルマーニョ・ダルペッジョのニョッキを最高の景色のなか味わい、山を下り向かった先は、ピエモンテだけじゃないイタリアで外せないワイン、バローロとバルバレスコのワイナリー。 案内してくれた方と仲のいいワイナリーへ時間がすぎているにも関わらずご案内してくださった。 標高差の激しいピエモンテは普通に過ごしているだけで体力を使うけれども、空気が澄んでいるからかさほど疲れない。 透明度の高い空気は肺から爪先、頭のてっぺんとスゥーと入ってくる。

          (中) バックパッカー料理人 第3便

          (中) バックパッカー料理人 第2便

          幻のチーズと至高のヘーゼルナッツ... 旅の荷物は極力少ない方がいい 機内持ち込みできるサイズのスーツケース1つに包丁と砥石、コックコートと着替えと全部入れて、スーツケースの半分は旅路、気になった掘り出し物や調味料を買って帰るために空っぽに。それと、リュックサックには愛用のマックブックとノートと歯ブラシ。 どこを歩いていても、いつも荷物の少なさに驚かれる。 これが旅上手のやり方だ ミラノ中央駅から、ブラという街で乗り換えアルバへと向かった。 名物のトリュフ祭までは早かった

          (中) バックパッカー料理人 第2便

          (中) バックパッカー料理人 第1便

          憧れを、憧れで終わらせない... 閉店...  Netflixの大人気シリーズChef's Tableで見た、北欧はスウェーデンの僻地にあるミシュラン2星のレストランFäviken ミニマリズムを象徴するかのようなシンプルなドレッセ(盛り付け)と原始的な調理法に北欧の伝統と文化が込められたセンスの塊。 一舜で虜になった 食べに行ってみたい... イノベーティブ系の料理は、ほとんどがコンセプト重視でおいしさと相反しているから、最新の技術や論理をほぼほ

          (中) バックパッカー料理人 第1便

          旅する侍キュイジニエ 撮影秘話

          きっかけは... 2019年の正月にひょんなことから出演させていただいた、フジテレビさんのアインシュタインの食卓という番組から全ては始まった。  1時間番組で僕は後半の30分も放映され、カメラも苦手で慣れてもなく、それも初めて有名なタレントさんとの共演はものすごく緊張した。 菊池桃子さん、鈴木杏樹さん、鈴木浩介さん方と共演させていただいた。 生まれて初めて、有名な芸能人の方々と間近で、というか0距離で。 不思議と、収録の前日の夕方にはミーハーな浮かれた気持ちは消

          旅する侍キュイジニエ 撮影秘話

          海外修行の手引き

          世界にはまだ知られていないレストランがある そこには未知の食材・調味料・調理法・文化・センス・空気がありふれている ミシュラン・Worlds 50 Best・ゴエミヨ・ラリスト・食べログ... 数多くのランキング形式のガイドブックやアワードがあるけれども おいしさ ≠ 順位 であることを念頭に置いて欲しい 僕が世界中を旅し、地元の食堂からミシュラン3星に輝くレストランまで研修や正社員として働きまくっている目的は、 食への好奇心 世界中のお客さんを呼ぶため 世界に友達

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