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涙のROCK断捨離 29.CARAVAN「In_the_Land of GRAY and Pink」

キャラバン「9フィートのアンダーグラウンド」/CARAVAN「In the Land of GRAY  and Pink」
1971年

このアルバムでは原題と日本盤のタイトルが異なっていて、原盤と同じタイトルの曲は4曲目、日本盤と同じタイトルの曲は5曲目に収録されています。
昔は海外アーティストのアルバムタイトルや曲名を日本独自でアレンジするということは珍しくありませんでした。当時の日本人の英語力も含めて、マーケットに浸透させるためには、(アーティストの意向はさておき)有効な方法だったと思えます。中には、担当者の苦労が伺える素晴らしい日本語のタイトルもありますので、どこかで別の記事にしてみたいと思います。

キャラバンは、1960年代の終わり頃活動したバンドで、よくカンタベリー系の代表格として紹介されています。
カンタベリー系というのは、渋谷系みたいな括り方ですが、何をもってカンタベリー系なのか、ちょっと捉えにくいところがあります。
個人的なイメージとしては、ヒッピー思想をベースにサイケデリックな楽曲を展開するものの、熱くなり過ぎないクールなロックという感じでしょうか。自由で感性のおもむくままというマインドだったのか、プログレのように緻密な作り込みをするというよりは、ラフなポップだったり即興演奏への志向性が強いように思えます。また、シャウトしないボーカルの落ち着きに、そこはかとないインテリ感があったりもします。

さて、「灰色とピンク色の世界」です。
ジャケットはまさに原タイトルの通りのイラストで、「指輪物語」の世界がピンク色に染まったような風景が描かれています。
タイトル曲までの前半4曲は、肩の力の抜けたポップな曲が続きます。
改めて聴いてみても「いいね!」ボタンを押す程度には良いですが、人生に影響を及ぼすようなものではありません。
ただ、この空気感が好きな人には、暑苦しかったり大袈裟だったり、やたらと感情を表に出してくる音楽は、センスが無いものとして一蹴されそうです。このフリーな感覚こそが、はまると居心地の良いカンタベリー派の魅力なのでしょう。
最後の曲は、約23分もの大曲です。
かなりの部分は歌の無いインストゥルメンタルですが、演奏はしっかりとしてバランスが良く、メロディアスで退屈させません。
カンタベリー派は、クールさが魅力と書きましたが、ここで聴ける演奏は抒情性が強く、緊張と緩和の作り方もジャズ・ロックというよりはプログレのそれです。淡白なボーカルも、ここでは非常に効果的で、胸を締め付けます。

キャラバンは、この後も活動を続け、後に続く作品も良質なものなので、もっと評価されても良いのですが、日本では一部の音楽ファンにしか聴かれていないようで勿体なく思います。キャラバンから1枚を選ぶとなると、実はもう少し後の作品の方がお勧めかもしれません。
しかし、このアルバムは、この時代のひとつの音楽潮流を代表する、貴重な作品であることは間違いありません。

今気づいたのですが、日本語タイトルが「グレイとピンクの地」になっていました。

Spotifyでも聴けます。
https://open.spotify.com/album/3ey3MCD8D6RRMK0LXMpltW?si=ODRFcHfET1eSPlYfQm26Pw

書き始めたのは「断捨離」がきっかけだったので、これまでCDを手放すかどうかを書いて文章を締めていたのですが、それをやめることにします。
手放すからと言って、良くない音楽と言うわけではないからです。

写真の使用許諾に感謝します。
kordula vahleによるPixabayからの画像