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涙のROCK断捨離 20.DREAM_THEATER「METOROPOLIS PART.2 : SCENES FROM A MEMORY」

ドリーム・シアター「メトロポリス・パート2 シーズン・フロム・ア・メモリー」/DREAM・THEATER「METOROPOLIS PART.2 : SCENES FROM A MEMORY」

私がドリーム・シアターを別格扱いするきっかけになったのが、このアルバムです。
ドリーム・シアターのベストはどれだ という話しは、人によって意見が分かれるのではないでしょうか。キャリアの長いアーティストでも、その代表作はけっこう絞られるものですが、ドリーム・シアターの場合は、デビューアルバムからから最新作まで全て評価が高く、特に1992年「イメージ・アンド・ワーズ」から2009年「ブラック・クラウズ・アンド・シルバー・ライニングズ」までの約20年間は名作揃いで、どれをトップに挙げてもおかしくないほどです。
その中で、私がベストに推すのが、この「メトロポリス・パート2」です。

全体を通してひとつのストーリーが展開されるコンセプト・アルバムで、2幕、9場、12曲 約1時間20分 のボリュームです。
哲学的なコンセプトを音楽で表現するというよりも、しっかりした物語に沿って楽曲が進行します。
ある前世の記憶に悩む男と催眠療法士のストーリーで、いわゆるロック・オペラというものです。こうしたアイデアでアルバムを作るというのは他に例がないわけではないのですが、「メトロポリス・パート2」はストーリーだけを切り出しても秀逸な出来なのです。

楽曲構成力の高さは言うまでもなく、テクニックも秀でたものですが、このアルバムではコンセプトを重視した抑制の効いた演奏をしているように感じられます。
全体を重視したために個々の楽曲の魅力や演奏の迫力に欠けるとの指摘は受けるとして、それでも超が付くほど最上級の曲と演奏です。

ヘビーでありながら高速に走り回るエレキ・ギター、ブレなく安定感あるリズム隊、リリカルなキーボード、パワーのあるボーカル。
個々の演奏力の高さに加えてバンドとしての統率が取れています。
ひところのイエスに、彼らの爪の垢を煎じて飲ませてやりたいほどです。
あえてバンドとしての難を言えば、全員が優等生的に上手すぎて、この音はこの人だというような突出した個性が弱い点でしょう。
ただ、そんな弱点もこうしたコンセプト・アルバムでは、強みとして活きていると思います。

書きながら聴き直してきたこのアルバムも、いよいよ終盤、「シーン8:ザ・スピリット・キャリー・オン」です。
歌も演奏も素晴らしく、ギターソロはロック史に残る名演でしょう。涙なしには聴けません。
ライブでは、ピンク・フロイドのように女性のバッキング・ボーカルがより強調されて大仰になりますが、このオリジナルは、感動の中にも抑制が効いています。
先に「楽曲の魅力に欠ける」と書きましたが、間違いでした。
この曲だけでも、アルバムを買う価値があります。
私の葬式で流して欲しいと思うほどの名曲です。

最後の曲になりました。
物語は幕を閉じますが、最後に意外な謎解きが示され、さらなる深みに感服させられるという仕掛が待っています。
このアルバムは、ロックという音楽が表現しうる、ひとつの完璧な姿をしています。決して、ベスト盤などで編集できない、アルバムとしての芸術品です。
聴き通すのは大変なので、誰にでもお勧めできるというものではありませんが、個人的には大切な一枚であることを再認識しました。

Spotifyでも聴けます。
https://open.spotify.com/album/1QZi8laY96nhaeGSklvN4D?si=8vB9f9LsTbu_nwsKesVWxQ


写真の使用許諾に感謝します。
Photo by Andrey Zvyagintsev on Unsplash