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涙のROCK断捨離 58.XTC「SKYLARKING」

XTC「スカイラ―キング」/XTC「SKYLARKING」
1986年

いきなり虫の鳴き声って?
XTCなので、何があっても驚かない心構えはできていたものの、あまりにも予想とかけ離れた音から始まり、そのまま優しいくつろいだ雰囲気の曲が流れ出して、「今回はそういうのなの?」と構え直したのでした。

XTCは、1970年代の後半にデビューしたので、いわゆるUKロック、パンク・ムーブメントの流れで語られることがありますが、どうも見た目が違うな―と感じていました。
ただ、大友克洋氏の「AKIRA」に描かれていた不良のように、こういう普通そうな連中の方が壊れているかもしれないと、危険な雰囲気だけは感じ取っていました。そしてその勘は、だいたい当たっていたと思います。これは、ヤバいポップ・バンドでした。

1979年から1989年までの10年間に発表されたアルバムは、どれもが素晴らしいアルバムです。(その前後も活動していますが。)
しかしながら、その中でベスト・アルバムはどれかと問われて、この「スカイラ―キング」を選ぶ人は少ないもしれません。
CDの解説には、アメリカでのヒットを狙ったレコード会社がトッド・ラングレンをプロデュースに起用することを思いついて実現したようなことが書かれていました。
跳ねるように粒立った音やひねくれたメロディライン、しゃらくさい小業のようなものは控えめに、ストレスなく聴きやすいマイルドな仕上がりになっています。
トッド・ラングレンらしさ全開でもないですし、XTCらしさ爆発でもなくて、モヤモヤします。
フランスのレストランで出されたカレーがすごく美味しかったのに、本音を言えばインド・レストランの方が好きだったと感じてしまうような感じでしょうか。やっぱり本場のスパイスはしっかり効かせて欲しいのです。それが口に合わないなら、それはそれで良いのです。
XTCは多彩なポップセンスを持つ職人肌なアーティストですが、癖は強いので、万人が好きにならなくても良いのだと思うのです。

ただ、そんな風にこのアルバムにイマイチな評価をしてみても、繰り返し聴いていると、なんだか中毒性があって、ずっと流しっぱなしにしてしまうのですからXTCは侮れません。

アルバムの最後に収録されている「Dear God」は、歌詞も含めて名曲です。
この1曲をもって、このアルバムをベストに推してもいいくらいです。
Youtubeに和訳付きのPVがありますので、XTCファンには言わずもがな、全てのロックファン、なんならロック好きで無い方にも、歌詞を読みながら聴いて欲しいです。

Spotifyで聴け聴けます。