大学非常勤講師の経験②


 講義は90分です。90分、結構長いです。いやかなり長いです。それが×2講義なので、土曜日はぐったりします。

 その講義ですが、講義中、学生の様子がこんなにも手に取るようにわかるとは思ってもいませんでした。学生の集中力が切れてくることが、手に取るようにわかります。しかし、ちょっとおもしろい小話をすると、食いついてくることも手に取るようにわかります。そして、出席だけとっていなくなる学生も手に取るようにわかります(笑)。同じように机を見ていても、まじめに講義を受けてノートをとっているのか、ただスマホを見ているのかもよくわかります。教壇に立ってはじめて、学生の反応や動きってこんなにもはっきりわかるもんだとわかりました。(ということは、私が学生の頃はいかに不真面目だったか先生にはバレバレだったわけですね。だから留年するんだよ(笑))

 さて、講義では教授から「基礎的な内容を教えてほしい」とあったので、学問としての面白さを伝えたいつもりでした。しかし、学問的に面白いと思っても、これはあくまで「教員側」の価値観であり、「学生側」はなにも面白さを感じていないということが分かりました。その反応が無言の学生からひしひしと伝わってきました。

 そこで、この点について教授に相談すると、「好きなようにやっていいよ」とのこと。う~ん一番困る返答。ここでも放任(笑)。ということは、考えるわけです。学生を食いつかせつつ、基礎的な内容を身につけさせる方法を。一番学生が、食いつく内容は「社会との関わり」に関すること。確かに学生というのは、大人に見えても、まだ社会に出たことはありません。私の学生時代も、大学生で20才を超えていたとはいえ、自分では大人とも思っていなかったですし、社会人とはどのようなものか理解していませんでした。なので社会というのは、なにか未知のもの、わくわくすると同時に、不安なものでした。そこと学問を結びつけると、学生は興味をもって聞いてもらえる。そう確信しました。

 さらに、講義の内容をより易しく、わかりやすくを心掛け、そこに事例を織りなすことで、学生の食いつきがガラッと変わりました。ものすごく作りこんだスライドをもって、講義をする日は楽しみで、ここぞ!というところで、学生の興味が一斉に上がる瞬間がわかるようになると、背中が「ゾクッと」する感覚があり、「こりゃたまらん」という変な達成感も得られました(笑)。

 その結果、学生の講義評価は毎回5段階中4.5前後をとるようになり、コメントなどでも「先生の講義は楽しい」という記述をもらうことができ、SNSなどで、私の講義を受けた学生が後輩に向けて「この講義はとった方がよい、おすすめ」などの記述を見かけるようになりました。その後その学生がゼミなどに配属されたときには、基礎的な内容が身についていると教授からお褒めの言葉をもらうことができました。さらに私の講義をとっていない学生からも、質問を受けるようになったりして、「あ~あの教授が言っていたことはそういうことか~」などといった、教授と学生の間の認識のずれを取り持つ役にもなっていました。

 また、非常勤講師として講義をするにあたって、自分自身に課した課題もあります。それは、「私自身も勉強し続けること」です。私自身も勉強しなければ、90分の講義×16回×2講義をこなすだけの「ネタ」がいづれ枯渇します。つまりアウトプットするからには、インプットも同時に行わなければなりません。そこで、非常勤講師を続けるにあたり、「1年に1本は論文を必ず書く」という課題を課しました。論文を書くためには勉強しなければいけませんし、学問の先端も知らないといけない、さらに紙に落とし込む論文にすることで知ったつもりではなく、自分自身の知識の定着も図れます。その内容を学生に講義を通して伝えることです。このサイクルを続けることを意識しました。

 で、その結果、5年間非常勤講師を続けることができました。6年目もお話をいただいたのですが、それはお断りしました。なぜか。。。

 それは、

以降続く。

 

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