キラーより先に殺すな

「死亡時刻は午前4時。紐による絞殺だ。」

 部屋の中心、馬鹿みたいに横たわる久瑠谷ジャックを見てベレー帽の男は言う。こいつはこの久瑠谷亭に泊まっていた探偵、緑山ジョーだ。

「この建物はひどい台風に囲われ、この部屋も密室だった。」探偵はいう。

「犯人はこの中にいる。」

 部屋の5人が固まった。

「なんてこと!」先にわめいたのは久瑠谷ジャックの女、久瑠谷ジェーンだ。

「じゃあ、執事のアダムよ!!彼はマスターキーを持っていたわよ!!」ジェーンは叫ぶ。

「奥様!!」執事の泡湖アダムが驚く。

「私は夜通しソープと窓を修理していましたが、その時間はずっと金づちを叩いていましたよ!奥様も文句を言いに来たではないですか!!」

ソープは庭師の古池ソープのことだ。

「全くそうだぜ奥さんよぉ!こっちが必至こいてんのにうるさいとかぬかしやがってよぉ!!」ソープも言い返す。うるせえ。

「何よ!庭師のくせに!!」ジェーンもうるさい。

「まあまあ奥さん。気持ちもわかりますがね。」ジョーと宿泊していた青山コンボ刑事だ。

「子供もいることですし、ここは穏便に。ね。騒いでも解決しませんよ。ね。」

 子供とはソファーの上でふんぞり返る久瑠谷サニーのことだ。中学生じゃねえか。

「うるさいわね!こんな状況で落ち着けだなんて!あんたはー、」

 遮るようにぱしゅっと音が響く。消音された亜音速弾がフルカスタムのグロックから放たれた音だ。

 俺が撃った。

 ジェーンのイヤリングが弾けた。

「ビービーうるせぇなこの糞アマが!ベッドの上とは違うんだよ!!」

 あの夜俺はジェーンに腰を叩きつけていた。一晩中だ。

 そして俺は人を殺すとき、銃以外使うことはない。

「畜生!むかっ腹がたつぜ!誰だよジャックを殺った奴は!!」

 そう、俺がジャックを殺るはずだった。犯人が俺じゃないのは俺がよく知っている。

「出てこなきゃ全員殺す!出てきても全員殺す!!いいな!?」

俺は最高のキラー、天地キングだ。

【続く】

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