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東京のアクセサリー

電車の中で、ハタチくらいの女の子ふたりの会話が聞こえてきた。

あー、これ東京のアクセサリー?
そうだよ~。
やっぱかわいいねー。

そう話しながらふたりはわたしの隣の隣あたりに座った。
彼女たちの会話の内容はよくわからないが、声のトーンと話し方だけで 「かわいいねー」 に共感したくなった。

ちょうどそのとき、その週の晩ごはんの献立を頭の中で再現することに苦戦していたわたしには、「東京」 も 「アクセサリー」 も、ときめきワードであったし、まず、声のトーンがとてもかわいらしかった。

でも、ふと思った。
「東京のアクセサリー」って。
「東京のアクセサリー」って、そんなくくり、おかしいぞ。
どこか異国のアクセサリーなら、〇〇のアクセサリーってくくる会話もありだけど「東京のアクセサリー」って。

控えめなトーンで会話をしている彼女たちの続きのストーリーはわたしの耳まで届かない。
ひとりがスマホで画像を見せながら、なんだか楽しげにふたりで会話している雰囲気をうっすら感じるのみだ。

「東京のアクセサリー」、、、聞き間違えたな。

東京の〇〇〇〇リー、と言えば、東京のスカイツリー だけど、違う。
スカイツリーならそう聞こえたはずだし、「やっぱかわいいねー」とはならないだろう。

東京のタペストリー、
東京のケミストリー
東京のラブストーリー、、、違う。東京から始まってついて「リー」で終わる言葉探しではない。

東京の、ア…といえば、、、東京の浅草、、リー?
浅草あたりー?、、、違うな、違う。
浅草リー?、アサクサリーてのがあるのか??
わたしの脳内には、雷門ピアスを耳からゆらす女子たちが、仲見世通りを楽しそうに歩く姿が浮かんだ。
浅草が若者の中でいま熱くて「アサクサリー」ってのがあるのかもしれない。その線でいってみよう、と、もう事実はどうでもよく、わたしの耳がどう聞こえたかったのか、というところにフューチャーしてこまごまとした想像をたのしんでから思った。

違うな。

「東京のアクセサリー」ってなんだったんだろう。

東京 も アクセサリー も、聞き間違いだったんだろう。

やっぱかわいいねー、と言われるそれに、
わたしはこの先めぐり合うことがあるのだろうか。

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