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宮本武蔵と坂本龍馬

6月1日の話。

長い自粛生活が明けて、時間の流れも人の流れも以前のようにまわりだそうとしている。

ゆったりとした時間が流れていたので
わたしはなんとなく、このゆったりペースのがいいなと思ったりもしていたのだが、まわり始めればそれはそれでちょっとの心地良さも感じたりしている。

とはいえ、そのうち、気持ちや頭が混乱し出すのではないか。
子どもも自分もはりきりすぎず、ゆるりと世の流れにのっていこう、、、
てなことを考えながら、晩ごはんの味噌汁をよそっている時、長男から唐突な問いかけがきた。

「歴史上の人物でフルネームが駅名になっている人がいます。さて、誰でしょう」
唐突だ。
子どもの問いかけはいつだって唐突だ。
わたしはできる限りの脳内情報を集めながら答えようとした。
「吉田…、いや、違うな…明智…」
「正解言うね! 正解は、宮本武蔵駅!」
早いわっ!
正解言いたすぎ!
とツッコミながらも、ハイハイそれねとうなづき、正解できなかったぐらいでは悔しがらない大人の余裕を披露。

クイズとは、そう、不正解からの話題の広がりこそが醍醐味なのだ、と言わんばかりに知識をかき集める。

「宮本武蔵駅っていったら高松だね、あ、違うか!高知だね」と。
「ついでに路線どこ?」と。
重ねたり尋ねてたりして、
あなたの話を、あなたの知識を、もっと広げてみせておくれと、言わんばかりに乗り出したところ、

「高知は、坂本龍馬ね。」真顔で返された。

坂本龍馬だ。

高知は、坂本龍馬だ。
今完全にわたしの頭の中にあるのは坂本龍馬だ。
銅像も、教科書の写真らしきものも、武田鉄矢が扮しているものも、全力で坂本龍馬だ。

「え?! じゃ、宮本武蔵って誰??」

残念な大人丸出しな発言であるが、
そんな恥ずかしさよりも、混乱していた。
宮本武蔵と言われて坂本龍馬を頭に描いていた。
たぶん、わたしの人生ではこれまでずっとそうだった。
宮本武蔵が坂本龍馬で、坂本龍馬はもちろん坂本龍馬だった。
自分が自分でこわい。

「宮本武蔵駅はみまさかってとこにある駅だよ。美作って書いてみまさか。あ、岡山県のね。」

みまさか=美作
美作=岡山
岡山=宮本武蔵
…あなたはなぜそれを知っているのか。わたしから生まれ、わたしと11年、ほぼ共に歩んできたはずだ。

たしか宮本武蔵は江戸の始まりくらいの人で、坂本龍馬は幕末の人だから200年以上は時代が違うんじゃないかな。
…あなたはなぜそれを知っているのか。わたしから生まれる前から知っているのか。

「200年、、、え?生まれ変わり??」
無理やり宮本武蔵と坂本龍馬を同一人物にしたい気持ちからか、自分でも驚く謎の問いかけ。

「生まれ変わり~、、、とかは誰も分からない話だけど、あれだよね。よく知らんけどなんかしら共通点的なとこあるかもね。ワンチャン生まれ変わりはあるかも。」長男はやさしく笑った。

「背格好とか似てるよね!?」
まだ言うかこのお母さん…状態。背格好が似ていようが間違えた理由にはなるまい。

「背格好~、、、は知らんけど。」
あきれてる、というよりはわりと真剣に背格好を想像する顔で付き合ってくれている。

「え?ちょっと待って。混乱!混乱中!やだー。坂本龍馬は知ってるのに宮本武蔵も坂本龍馬だわぁ。」

改めてひどく混乱する大人を見て、おそらく彼は非常に冷静であったと思う。

Webで画像検索して宮本武蔵画像をわたしに見せた。
結論。
「この人は知らんわ。
完全に宮本武蔵も坂本龍馬だったわ。」by 40代女性(三児の母)

「200年以上時代違う人と間違われるって、もし本人だったら相当ビビるっしょ。」
…爽やかに笑って言うが、混乱する人に向かって宮本武蔵ないし坂本龍馬本人の気持ちを想像させるという荒業。
そこへ思考をもっていくと、余計に混乱を招くので合わせて笑うだけに留めた。

「ま、その土地の人じゃないし、その時代の人じゃないし、混ざるよねー。混ざる混ざる。」
優しい家庭教師のようななぐさめ方。あなたはあなたの将来のどこかで家庭教師をやるといいかもしれない。

長い自粛生活が明け、この先おこるかもしれない気持ちや頭の混乱をちょっと心配したりしていたが、、、大丈夫だ。
よく分かった。
わたしは日常的に混乱している。
そして、そんなときも、子どもは意外なほどに冷静でやさしい。
恐れることは無い。
混乱こそなんらかのチャンス!
なんらかの!!

追伸)
大変恐縮ですが、坂本龍馬と宮本武蔵の違いをはっきり脳に刻み込める何か、本とか映画とかで、歴史がごちゃまぜになっている私にも理解できそうなおすすめがあれば、ぜひ教えてください<(_ _)>

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