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夕方のスーパーで

先日、手巻き寿司をしようか、ということで、夕方のスーパーへひとり乗り込んだ。
お刺身がお値打ちになっているのを見込んでの夕方出動だ。

ついでにいくつか買い物をしようと思い、今日こそカートを使ってみよう !と以前に吐露した葛藤に挑もうと思ったが、リズムに乗れずまたもやカゴを腕にかけて買い物をスタートした。

(以前、吐露した葛藤はこちら)


またも、使えなかったな、、、と少し残念に思いつつも、目的を果たすべく鮮魚コーナーへ向かった。
狙い通り少しお値打ちになっていたお刺身を選び、ついでに足りないものを買っておこうと頭の中で在庫状況を思い出しながら歩いていると、目の前にぱっと知った顔が現れた。

そのスーパーでちょくちょく会う友人だった。
彼女は後ろからわたしの存在に気づき 「よっ!」 というかんじで前に回りこみ手を顔の横でパーにした。

おー!とリアクションを取りつつ、「手巻き寿司しようと思って、、」なんて聞かれていないスーパーに居る理由を言おうと思ったが、彼女は電話中だったので 「よっ!」 という形態模写に対し、「おー!」 という形態模写で返し小さく手を振った。

彼女は 「またね!」 の形態模写をしながら、去っていった。「あ、ごめん、友達に会った」 と電話の相手に説明していた。

彼女はカートを押していた。
カートコンプレックスなわたしとしては、少しだけよぎるおいてきぼり感をじんわり受け止めながら彼女をぼんやりみた。
そして、ハッとした。

えーーー!!
いま、カート押しながら、電話しながら、手振ったぞ!!

どうやったんだ?
どんだけカートマスターなんだ!!

スマホを肩と耳ではさんでいた、ような気がする。
右手を顔の横に出して 「よっ!」 とやったような気がする。
カートはどこで押したんだ?
左手?
え?どうなってたんだ、、、。

残りの買い物時間と、レジの間、ずっと頭の中でそのときの不思議を解明しようとしていた。
そのせいもあってかまたしても麦茶パックを買い忘れた。

カートを使えなかったこと、友人が超と言ってもいいほどのカートマスターだったこと、あのとき彼女がどういう状態だったか、そんなことを繰り返し頭の中で回しながら自宅の自転車置き場につき、荷物を降ろしながらほぼ無意識で口元をぺろりと舐めた。

!!
味がする!!
スーパーに出かける前に、小腹すいていると買いすぎちゃうからな、なんて理由を付けながら食べた子どもに人気のせんべい系菓子。
“魔法の粉” が病み付きになる、と言われるせんべい系菓子の味がした。

試しに反対側の口元も舐めてみる。
味がした。

大人としたことが、、、
“魔法の粉” 口元にまあまあ付けて買い物してもうた、、、。

すぐに友人の顔が浮かんだ。
気づかれただろうか。
いや、彼女はもし口元になんか付いてたらすぐにそれを知らせてくれる人だ。
他の誰かに気づかれただろうか。
レジのお姉さん。若いアルバイトの子だった。
気づいていたかもしれない。
いや、粉自体に色があるわけではないし、口元に目が行くほどわたしの口は魅力的ではない。

他に、そんなに接近した人はいないはず、と振り返る中で、スーパーの入り口につながれていた小さな犬が浮かんだ。
めっちゃ尻尾を振っていたのは、わたしが口元に美味しい粉つけてたからだったのか。

カートを手にすることができない、などと謎の控えめさんを演じつつ、
なんて大胆なおてんばをしてたんだろう。

出かける前には、鏡を見よう。

もう、絶対そうしよう、と心に決めた夕方だった。

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