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IBD患者におけるセレン欠乏とセレン注射製剤

こんにちわ!データ大好き病院薬剤師のさめ猫です。
今回は、薬剤についてです。

IBD:Inflammatory Bowel Disease

炎症性腸疾患(IBD)患者においては栄養障害が問題となります。

IBDに限らず、様々な理由により経腸栄養が行えずTPNを継続する患者も多いです。

そこで問題となることがあるのがセレン欠乏です。

セレンとは

ヒトが生理機能を維持する上で必須の微量元素であり、通常の食生活においては欠乏することはないとされています。しかし、食事などから十分なセレンが摂取できない場合には、不整脈や頻脈を引き起こす心筋症、四肢の筋肉痛や筋力低下、爪の白色化、視覚障害、神経障害、変形性骨軟骨変性症、皮膚のびらんなどの臨床症状を呈するセレン欠乏症を発症することがあります。

セレン欠乏症

1979年に中心静脈栄養(TPN)療法施行時に報告されて以降、長期TPN療法施行例の増加に伴い、多くの症例が報告されるようになりました。セレン欠乏症の中でも、心筋症は拡張型心筋症を呈し、重篤化すると心不全に進行することがあります。

セレン欠乏症の診断基準

1. 下記の症状/検査所見のうち1項目以上を満たす
 1)爪・皮膚ー 爪白色化・爪変形、皮膚炎、脱毛・毛髪の変色
 2)心筋障害ー 心筋症、虚血性心疾患、不整脈、頻脈
 3)筋症状 ー 下肢の筋肉痛、筋力低下、歩行困難
 4)血液症状ー 赤血球の大球性変化、大球性貧血
 5)検査所見- T3低値、AST・ALT上昇、CPK上昇
 6)心電図変化ー ST低下、T波陰転化
2. 上記症状の原因となる他の疾患が否定される
3. 血清セレン濃度(μg/dL)
 ・0-5歳 ≦6.0
 ・6-14歳 ≦7.0
 ・15-18歳 ≦8.0
 ・19歳~ ≦10.0
4. セレンを補充することにより症状が改善する
Definite(確定診断):上記項目の1、2、3、4をすべて満たすもの。
Probable:セレン補充前に1、2、3を満たすもの。セレン補充治療の適応となる。

そして起こった医療事故

以前は、セレン注射製剤は製造販売されていなかったため、注射製剤は院内製剤で対応されていました。

アセレンドの登場

現在は、アセレンド注100μgが薬価収載となり、低セレン血症患者に高カロリー輸液内に混注する形で使用されています。

経口栄養剤とセレン

エンシュア、エレンタール、ヘパン、アミノレバンにはセレンが配合されていませんが、『エネーボ』『イノラス』にはセレンが配合されています。

食品とセレン

魚介類、肉類、うるめいわし、まぐろ、あわび、たらこ、かつお、さば、わらび、ミルクチョコレート、ホタテ、ねぎ、玉ねぎ、トマト、胚芽など

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