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覚える~忘れねばこそ、思い出さず候~

 時間をかけずに英語の点数を上げたい。そんなあなたにお勧めの方法は、単語を覚えることだ。これ以上のシンプルな方法はない。誰もがすぐに始められる。効果も実感しやすい。二十年も前、私も大学受験を経験した。志望大学はセンター試験で8割の得点を要求していた。詳細は忘れたが、国語と理科が届かず、数学と日本史で超えて目標は達成したことは覚えている。だから英語は8割程度だったのだろう。私は暗記が嫌いで、英語の点数は高くなかった。高3の夏休みまで数学漬けにする高校の謎の方針も加わり、私は夏休み明けに「数学以外なんもやってない」という窮地に立たされた。否応なく単語を覚えた。自然と読める範囲が広がり、目標点も達成できた。
 どうやって覚えるか――。よく聞くのは、単語帳にさらっと目を通すのを何周も繰り返す、単語の意味を物語でイメージ化する、など。私自身は、とにかく書きながら読む、を繰り返した。巷には無数の方法が存在する。その違いは相対的なもので、それぞれに利点や効果があるのだろう。これら一般的な暗記法には共通点がある。それは、頭への入れ方に着目している、ということだ。繰り返し見る、イメージ化する、何度も書く、いずれも、特定の情報をどうやって頭に入れるのか、を重視している。そして、この「どうやって」で他の方法よりもより効果的な違いを作り出し、「最強の暗記法」などと打ち出している。これは、覚える側にとっても有益だ。覚える側は、情報の仕入れ方に得意不得意があり、様々な仕入れ方が存在していた方が自分に適したものを見つけやすいからだ。
 しかし、覚えるという作業は、頭に入れるだけではない。もちろん、覚えるという言葉は「特定の情報を頭に入れる」という意味だ。しかし、何かを覚えるのは、思い出すためだ。だから、最終的に思い出せることが重要なのだ。有名な恋文の一節に「忘れねばこそ、思い出さず候」というものがある。「あなたのことを忘れてないから、あえて思い出さずにいるのよ」という意味だ。恋人相手にはお洒落でも、受験生が単語相手に使ってはいけない。覚えるのは、思い出すためなのだから。そう考えると、覚え方には注意が必要だ。「頭への入れ方」は、覚える側が得意なものでいいだろう。でも「ちゃんと思い出す」ことができなければ意味がない。だから、「頭に入れる」作業の後に「思い出す」作業を必ず行う。たとえ思い出すことができなかったとしても、「思い出そうとする」こと自体が記憶によい影響を与えるという研究結果もあるそうだ。覚えるからには「忘れねばこそ、思い出し候」でなくては。

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