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毎日がアニバーサリー・今日はフィルター記念日

9月9日、重陽の節句は、Sambor Village再出発記念日。今年で3周年です。
その記念日を前に、今日は新しいプールのフィルターを迎えました。

ことは数年前から起きていた。
Sambor Villageの宝のひとつ、プール。
強い日差しの中、緑のカーテンの下のプールは最高。子どもたちの最大のお気に入り。

海で生きていた頃の記憶が蘇るプール


そのプールのお水を快適に保つための2人の戦士、ポンプとフィルター。
ポンプで水を循環させ、フィルターで浄化していくという鉄壁の二人三脚。
この2人のうち、ポンプは数年ごとに世代交代がなされ、現在までで3代目。対する相方のフィルターさん、こちらがなんと2008年の創業時から現役第一線の大ベテランでした。

ベテランの危機

そのベテランに翳りが見えだしたのはちょうど1年前、2022の洪水のあたりから。


洪水直後。一度川とインフィニティになった
(これでも泳ぐのはうちの息子)

それまで難なくこなしていたことに時間がかかるようになったり、ときどき内部の砂が流失したり。そうした微妙なベテランのコンディションをメンテスタッフたちが整えながら、なんとかやってきたんです。

・・が。

そんなベテランに決定的な外傷ができたのが約4ヶ月前。衰えていたパッキンにヒビ。そこから絶え間なく水が漏れる。
今までずっと寄り添ってきたスタッフから、もうこれ以上は、との報告が。

君の代わりが見つからない。

もともとプール関連で取引のある会社を中心に、既に後継の打診はしていました。何せ大ベテラン。いつ“そのとき“がきてもおかしくないということで、買い替えの話は1年前から出ていた。

・・ただ。

このベテラン、小柄なのに頑張り屋さんで、15年も第一線を駆けてきたゆえに、在庫もなく「その古いタイプはもう作ってないですね」と鼻で笑われる始末。うちのベテランを鼻で笑いやがって!(この時点でその会社は嫌い)

普段取引がないところにも修理、買い替えの両面で問い合わせをして見るも「首都まで送ってください。かなり古いタイプなので、現物見せてもらわないと。最低3日は見てください、それでも修理できるかはわからないですけど」という対応。

ベテランを修理し続けてきたメンバーがそれを聞いて「3日の間うちのプールどうすんだ!それならいい、限界までなんとかつなぐ!」と気炎を吐いて騙しだまし動かし続けてきたものの。

8月末、そのメンテリーダーから「ベテランの後継者探しを最優先事項に」というリクエストがあり、本気で決めるときがもうそこまできていた。

こういう人に出会いたかった

どの会社も決め手に欠ける。フィルターは高額、そしてコンポントムにはない。
首都の会社に決めかけて、金額交渉をしていたとき、ふっと。

「あの人に相談してみたら、何かわかるかも・・」

と浮かんできた顔が、5月のスタッフトリップでお世話になった超・大人気でありながらhome感のあるViroth’s hotel のGM。
マネージャが電話で状況を伝えると「適任がいる。この人に電話してごらん」と電話番号をすぐに送ってくれた。

そして、その番号にコンタクトをすると「ポンプとフィルターの写真を送って」とすぐに返信があり、送った写真を見て、これまた余計なもののない明快な言い方でベテランが今抱える課題を見抜き、今この機種の在庫はないが、後継モデルがすぐ手に入るかどうか確認するという旨の回答が。

さらに「これまでこういう問題はなかったか?」と、ベテランが抱えていたモヤッとした不調とその原因を私たちにもわかるようにすっきりと説明してくれた。

そして「後継モデルが見つかった。このポンプとの組み合わせ、容量だったらこの機種がちょうど良い。これでよければ、明日資材を揃えてコンポントムまで行って設置まで一緒にやることもできる。もちろん、資材だけ送ってそちらでやるという手もあるが」とまたまた明快な提案。そして、早い。

あなたです。
ベテランの世代交代に際して、後継機種以上に私たちが探していたのはあなただ!
ベテランのことを見た上で、それに合わせた後継を選んでくれるその姿勢。
スピード感と、明快さと、よければ自分も行って設置するという控えめだけど自信のある態度。売ることより、伴走することに意識が向けられている安心感。

首都の会社で決めきれなかった要因は、これだ。そちらの事情は知りませんけど、商品は売りますよ、という熱伝導の低さが気になっていたんだ。

「デポジットすぐ送ります。ぜひ明日一緒に来てほしいです。お願いします。」と回答したのが昨日の夕方5時。そして、新人フィルターを伴って、彼が現れたのが本日午後2時30分。

電話だけで話をしていた彼は、目元にも所作にも経験からくる自信が静かに漂う、鋭さとシンプルさを纏った、まさに職人さんだった。

到着後、余計なことを一切せず、すぐに設置が始まる。
これまでベテランのケアをしてきたメンバーをはじめ、ホテルの男性チームがそれをサポートする。電話で指摘された問題点はまさにその通りで、具体的な改革案も出され、現場は迷いなく進んでいく。作業の過程で私たちが抱えていたプールの課題のすべてに、明快で具体的な理由と対処法をくれる。

タクシー降りて、プール小屋へ直行

メンテリーダー、マネージャと彼が話をしている。どうやら創業当初の施工時からポンプとフィルターの処理容量が釣り合っていなかったらしい。ポンプがフィルターの2倍の容量で稼働するという、エネルギー量の違いすぎる二人三脚の状態が少なくとも5年以上続いていて、それがベテランフィルターには大いに負担になっていたようだ(そりゃそうだ)。

創業時のメンテスタッフはもうおらず、施工した業者もわからない。故障すると機材だけが首都との間を往復し、それを現場でなんとか設置・運用するというのがコロナ以前の状況。プール管理の基本は知っているものの、修理や課題の相談を現場で見てくれる人はおらず、自分たちで状況を見て対処するというのがSambor Villageの日常だった。

「心配しなくていい。設置が終わったら俺が全部トレーニングする。」

・・本当に、あなたのような人に出会いたかったんです。

フィルター交換は、熱の交換であった


新人フィルターはベテランより大きい。プール管理小屋の壁を壊して設置する。

右の宇宙味があるのが新人フィルターく

内部に必要な砂の容量は260kg。従来の100kgの2倍。彼が事前に用意してきた砂の量は230kg。残り30kgは?もう砂袋ないっすよという男子スタッフの問いかけに「ベテラン(とは彼は言わないけど)の中に入っている砂をきれいに洗って。それを使う」と。痺れる。これまで長きに渡り支えてくれたベテランの一部が新人に引き継がれる。グッとくる(さらに経費も削減!)。

砂を入れていく。左が燻銀職人さん

「1日で終わると思ったけど、この感じだともう少しかかるな。」という彼に
「本当にありがとうございます。目の前の霧があっという間に晴れるようです」と伝えると「Viroth’sのGMが、私の大切な友人だから、よろしく世話をしてやってくれと言ったんだ」と。その一言に、また痺れる。

あのときスタッフトリップでお世話になったのはこちらの方なのに。

地方の格下ホテルが訪ねていっただけなのに。

その一言で彼が即座に動き、コンポントムという地方くんだり(カンボジア国内だとほんとにそういう感じ)までわざわざ出向いてくれたことに、GMと彼の間の関係性も滲み出ている。

私たちの生きる時間は、こうやってこの世界のあらゆることに支えられている。
GMにお礼のメッセージをすると「彼、すごくいい奴だろう?」と。
これにもまたやられる。恩に着せず、スッと他者を立てる。

世界は、本当はこういう粋で、カッコ良いやさしさに満ちている。
私たちがそこに目を向けたら、手を伸ばしたら。

きっとかつては世界のそこここに、こういうシーンがあったんだろうな。
そして、少しだけ見えにくくなっているだけで、今もそれは確かにあるんだ。
GM、その燻銀かっこいい人々の生態系に触れさせてくれてありがとうございます。

人と人の間の静かな熱の交換を経て、Sambor Villageのプールは新時代に入ります。(ちなみに、現在も目下、作業中。)

2023.9.7

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