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アダム・グラント著『GIVE&TAKE』は単純に与える人が成功する話ではない③

まさか3話まで進むなんて思ってもみなかった。こんなしょぼい経営者が偉っそうに組織論話すなんて、頭に来てる人もいると思うが、ここは表現の自由ということで。

②まではテイカーとマッチャーについて述べてきた。まずマッチャーの複雑な対応について述べる。

マッチャーと一緒に仕事をするときは・・・

マッチャーでも私の今周りにいるマッチャーは、とてもテイカーに似ている。似ているが、一番異なるのは、こちらがやったことに対してはきちんと覚えておいていてくれる。だから、報酬にも何も言わなくても反映してくれる。そういう人には、こちらも自ら提案したり、何かミスったりしたら自ら報酬を下げたりして見合うだけの対応をしている。

ただ、こちらは末端、開発なら外注することなく自社で、制作でも自社でやっているので、どんな案件でも1番の皺寄せが来るポジションだ。だからこそ、初めて仕事をする相手とは必ず下手に出て様子を伺うことにしている。

下手に出てやりとりをすると本性がわかる

これやってみたらわかるのだが、最初に自己紹介をするときから、本当に恭しく「私たち、デザインも開発能力もあるけれど、おっちょこちょいで粗忽なんですー」みたいな感じで自社の弱みを正直に話す。

思い込みの激しい人は、そのまま言葉を鵜呑みにして色眼鏡で見て仕事をする。しかし、一歩踏み込んだ思考をする人は、この私の言葉が本当か、というか裏がないか?みたいな詮索をして様子見をしながら進める。

制作や開発は基本的に長期にわたることが多いため、途中で、お互いの価値観のずれや話し合いでは解決できない部分がわかると、極めて厄介でこちらも仕事を投げ出すこともできない。なので、最初のこの見極めが大事なのだ。なにせ厄介なマッチャーはどこにでもいるから避けて通れない。

結局、最後は受け入れてマッチャーとして対応する

マッチャーやテイカーとどうしても仕事をせざるを得ない時は、最終的に、余計な仕事はしない、提案もしない、言われたことだけする、みたいなこちらが損をしない最低限のラインを敷いて、確実に仕事をすることに徹する。クライアントが優良なギバーだったら、必ず様々な提案をして相手の事業の拡大になる一角になる努力をするが、必要以上にしない、関わらないということが自分の身を守ることにもつながるのだ。

真のギバーとは!?

私もわかっているかどうか微妙だが、弊社の開発エンジニアはギバーだと思っている。彼は、報酬が高い方だと思う。高すぎることはないが、ブロックチェーンエンジニアだし、その他様々な事業に関わってきている。色々と怒られることも、喝を入れられることも、報酬に対して文句を言われることもあるが、どんなに色眼鏡を入れて考えても考えなくても、彼はきちんと私の事業に誠意をもって向き合ってくれているのはわかる。愛想は良くないし、決してリップサービスができるわけではないけれど、言葉の節々に、相手の役に立ちたいという思いの断片が散りばめられている。

本当のギバーは恩着せがましくない

以前、広告代理店に勤めていたとき、先輩から『クライアントに貸しはいくらでも作っていいけど借りは絶対に作るな』と言われていた。広告代理店の人間は本当に駆け引きというか、恩をうまく売って、回収のために多額の案件を受注することに長けている人が多かったと思う。

だけど本当のギバーは、恩とか貸しとか借りとかそういう世界にもいないんだと思う。彼らが考えるのは、自分の仕事が効果的に結果を出せるか、発注者である私の役に立てるかどうか、そういうドライでありながら、相手のことを切実に思う、一方通行なエールだ。ただ彼は、下層のギバーというわけではなく、明らかに上流層のギバーだ。どこの会社でも十分やっていける。

こう書いてくると、この3種の人々を見抜いたところで、逆に生きづらく、人を信用するのにも時間がかかるのではないかと思う方も多いかもしれない。実際そうだ。しかも見抜くにも時間がかかるし、なんならいまだによく失敗する。人を見抜く、採用ほど難しい、高度な技を必要とするものはないと思っている。

何度か失敗して裏切られて初めてわかること

自慢ではないけれど、私も開発者もクリエイターもみんな揃って何度か酷い目にあっている。受託企業で最も怖いのは債権回収、いわば納品後に入金というフローをとっていると、納品物に納得がいかないと支払いをしないというクライアントもいるのだ。もちろん毎度ではないが、デザイン、開発など人がある程度見てわかるものを、さらに人の感性に頼るものを作っていると完璧なものを納品すること自体が不可能である。

基本的に満足してもらえることが多いし、だからこそリピートクライアントで売上を立てているが、クライアント自体が素人でコミュニケーションが低い場合、こちらで汲み取るにも限界がある。失敗もたくさんしているのだ。

払わないとした場合、多くのクリエイターの場合、開発者の場合、泣き寝入りが多い。しかし、私はそこは訴訟にまで持ち込んで戦うことにしている。それは何も自社の利益のためだけではなく、クリエイターや開発者に向けて、あなた方のために私は戦いますよ!という姿勢を見せることに意義があるからだ。

私自身は大した存在ではないかもしれないけれど、今まで業界の中でもかなりトップクラスのCGクリエイター、デザイナー、開発者と仕事をしてもらえるのは、素直に自分を知って、コンセプトを持って戦う姿を見せてきたからだと思う。

ヒエラルキの上層のギバーはむやみやたらに人を助けるだけでなく、自分が与えられるものを、コンセプトのなかに組み込みながら結果を出していける人なのだと思う。

下層のギバーも上層のギバーにし、テイカーの犠牲にしない、真の姿を見抜ける経営者に心からなりたいと私はいつも思う。


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