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アメリカオカシイそれでいい 6-医療

さあ来ました。米国の一番の問題。医療。
私は医療従事者では無いですが、重度の障がいがある子を育てていますので割と詳しい方です。サラリーマンとしても、個人事業主としても、経営者としても加入した事がありますので、どんなオプションがあるのかも知っています。

障がいのある子どもの医療費やセラピーで、今までにたぶん何千万円分くらい掛かっています。しか~し!

障がいのある子の医療で自分たちに掛かったコストはほぼ医療保険代のみです。
破産しておりません!今のところ。笑

どうしてかと言うと、正式に障がいがある方の場合は州の保険に加入できるのです。その内容は州によって異なりますが、私が住むマサチューセッツ州(オバマケア以前から州民皆保険がある)の場合は、収入が一定以下の場合は州保険が丸々カバー、収入が一定以上の場合は、民間保険がカバーできないところを州保険がカバーという形のセーフティーネットになっております。

我が家は後者ですので、まずは自分たちでそこそこ良い保険に加入する必要がありました。その保険代は高いですよ。

事業主として加入していたころは家族4人で年間200万円以上払っていましたからね。

その上に障がい者でない残りの家族は、例えば風邪をひいてもその保険が全部払ってくれるわけでは無く、保険の内容にもよるのですが、1回に何千円とか何パーセントとかの基本料金のようなものがあって、その上に検査費だの治療費だのが乗っかるんです。そこにさらに高い薬代が被さります。

医師は他人の保険の事など知りませんので、説明はしてくれません。医学的に適切と思われる判断を提案してくるだけです。なので診察中に何かを勧められても、簡単に「はいどうぞやってください」と言ってはいけません。

まずは自分の加入する保険会社がカバーできるか確認する作業をします。

内容を細かく聞き、できれば医療コードまでもらって保険会社に問い合わせます。ウェブサイトやアプリもありますが、良く分からない時は電話で問い合わせます。カードに番号が書かれていますので、病院でその場で電話でも大丈夫です。言葉が解らなければ通訳を要求もできます。ここの医師が今年の何月にこれをやったら何がカバーされるのか、いくらかかるのかと具体的に聞きます。そこでオッケーが出たら、その記録も担当者の名前も全部取って置きます。後で払わないと言われたり、高額請求された時の対策です。

また、定期健診などに伴う検査やワクチンは予防医療として州が無料提供にしている場合もあります。自分がその対象になる条件であれば、使わない手はありません。こういうのも保険会社や医師と確認しながらになります。

さて。まずここに問題があります。

適切な医療保険に加入し、州の制度を把握し、さらに医師に「ちょっと待ってください!」と言い、保険会社に問い合わせ、「事前承認を医師に送ってください」とできる成人は人口の何パーセントでしょう?

私の感覚ではかなり低いと見ています。
だって医師でさえ分からないって言いますからね。笑

民間保険が何をカバーするかいつの間にか変えられている場合だってあるわけです。薬代がどう変化するかなんて予測不能です。おそらく保険会社の人もわからないのです。
どんな制度だよ!

私の性格がどうしてこうなってしまったのか。
アメリカのせいです!笑

最悪の場合は高額負担になってしまいますが、ちゃんとした保険に加入していれば、年間の自己負担額の上限がありますので、それでどうにかなります。でもそれも家族加入だと100万円とか200万円とかそういう額です。個人だともう少し低いです。中間層以上なら、どうにかしのげるかもしれません。

またサラリーマンは、会社が民間保険代やかかった医療費の一部を負担する場合もあります。現在、私はその状態です。お陰様で今は楽しています。

実は、もしかしたら日本のサラリーマンよりも医療費がかかっていないかもしれないんです。

しかし一方で、米国には明日の食費も心配な方々が大勢います。事前確認や保険会社との交渉で困難に陥ってしまう方もいます。それで破産してしまうのです。マイケル・ムーアの指摘は良かったですが、こういう背景をあまり説明しなかったために、日本ではやや勘違いされています。

米国の医療自体は優れています。病院は日本よりも事務的な雰囲気ではありますが、きっちり仕事してくれます。

結局は格差が問題なのです。

私だって今仕事が無くなれば、保険を切り替えなければいけなくなります。おそらく夫の会社が提供するものになるでしょう。そして夫も失業したら…

それで「オバマケア」で持病がある人、自営業、失業中、サラリーマンで無い方でも加入できる制度を導入したわけです。もちろん民間企業は何らかの理由をつけて医療費や医薬費をあげてきます。前にも言いましたが、米国は基本、性悪説でまわります。陰謀とはちと違うんです。

トム・ソーヤーの世界から大して変わっていない、海千山千の国なのです。

これを間違った陰謀論に置き換えると失敗します。

トランプ政権が何もできなかったのはそれです。
トランプ前大統領の提案はほぼ現状維持で、貯蓄できる余裕がある人の減税と投資銀行が儲かるものでした。それでは余計に格差拡大、医療費高騰してしまいます。結局オバマケアは維持され、共和党州でも保険加入者が増加しました。

だから今は具体案も出せずにダンマリなわけです。

バイデン政権が補助を続けて今はだいぶマシになりました。

2022年には"No Surprises Act"も通りました。保険対象の医療機関で治療を受けているにもかかわらず、保険対象外の医療者が医療行為をして高額請求になってしまうケースがよくあるんです。

私もこれだけ気を付けていてもサプライズ経験があります。レントゲン自体はカバーされているのに、その写真を見て判断する医師が外部の医師だからって、その部分の自己負担分を請求してきたんですよ。
患者がそんなの知るわけないじゃないですか!
その時は会社のカバーで払ってしまいましたが、今はこれに正式に文句言えるようになったようです。

さて。ハリス政権はここから何を目標にしているかというと、更なる加入者支援薬価の制御、価格上昇に上限を設けて高騰を抑えること、高齢者医療・介護支援の拡大、医療費負債の救済、ノーサプライズ法に救急車代も加えること、生殖の権利を守ること、適切な避妊や中絶へのアクセス改善など、庶民にとって現実味がある方向で進んでおります。

良くまとめられている記事がこれ。

一方トランプ氏は無策のまま批判するだけですが、偏った保守思想が医療研究の阻害や人権問題に発展する可能性があります。

私個人的には、ハリス副大統領の方針はなかなか良いと考えています。日本では「どうして日本のような、安価で誰もが同じ内容の国民皆保険にしないのか?」と思われる方が多いでしょう。

しかしそれは医療従事者が米国に比べ、低い報酬で重労働をして成り立っています。少子高齢化の中で人材も財源も不足しているのに、どうするんでしょう?

医療が無料もしくは安価な国が多い欧州を見ても、やはり医療従事者の報酬が低く、最低限をカバーする医療ですよね。
イギリスは崩壊していると聞きます。

それを考慮すると、米国のやり方が間違っているとは言い切れないものがあるんです。利益ばかり追求する米国の医療機関と製薬会社は問題ですが、良い人材を確保し、資本力、競争力を高めて技術を押し上げているという現実もあります。

2019年の時点では、ハリス氏は米国版の国民皆保険制度案である「メディケア・フォー・オール」を勧めていた立場ではあるものの、民間保険が補完する形がいいと言っていたんですよね。

今は「メディケア・フォー・オール」については言及しません。私が思うには、かなり現実路線なんだと思います。

トランプ氏とマスク氏の考える理想の医療保険ってどんなだろう?

超高額の民間の保険に加入できる者には、マスク氏が宇宙のどこかに連れてって機械の体をくれるとか?

絶対ネジ。

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