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世界ウェブ記事大賞を終えて

昨日、世界ウェブ記事大賞の結果発表を終えた。

世界各地の文化にまつわるウェブ記事を募集するというコンテストだ。

https://traveloco.jp/kaigaizine/sekai-award_2019

38の国と地域、92の記事が集まった。

イギリス、アフガニスタン、アフリカ、アメリカ、アルゼンチン、アルバニア、イスラエル、イタリア、イラン、インド、インドネシア、エジプト、オーストラリア、オランダ、カナダ、カンボジア、シンガポール、タイ、チェコ、チベット、チリ、ドイツ、トルクメニスタン、ニュージーランド、ネパール、パナマ、フィリピン、ブラジル、フランス、ベトナム、ベネズエラ、ベルギー、マレーシア、メキシコ、ロシア、韓国、台湾、中国。

その中で7名の審査員におもしろいと言わせた記事を載せてある。ベタな言い回しになるけど、デザイナーさんから結果発表のページが上がってきたとき、「あぁ、これが見たかったんだ」と胸にグッと来た。なかなか壮観なので、ぜひ見てほしい。って、このnoteを読んでる人はもう見てるかな…。

※記事の最後に、惜しくも入賞に届かなかった作品の一部を紹介します。

コンテストを終えて

まだ各関係者への報告作業などが少し残っているけど、表側の仕事はほとんど終わったと言っていい。この企画を言い出したのは4月のこと、結果発表まで半年以上がかかってしまったが、ここまでこれてよかった。よかった。テーマが海外という特性上、応募者には海外在住者も多いため受賞イベントはないが、ずっと勝手に抱えていたプレッシャーからようやく開放されて、ホッと胸をなでおろしている。今日は無意味に昼まで寝た。なのでだるい。

そんなわけで、タイミングは今しかないので思いもふくめて少し振り返りたい。これから書く訳だけどたぶん自分語りになると思う。いつもの調子で。

なぜやったのか(大きなくくりでの)

大きなくくりなら、「海外はおもしろいぞ」と言いたいにほかならない。

ただ「海外」と言うとあまりに漠然としている、具体的に言えば「あなたの知らない世界」だ。まだ見ぬ世界。自分はその魅力をはじめて住んだ外国ベトナムで知った。当地の3~4歳児すら知っている常識すら自分は知らない世界。だから、考え、試して、学んでいく、そんなレベル上げのような感覚が楽しくて、生まれ育った日本では味わえない、外国人の役得を知った。

そしてそのうち段々と、同じようなことをほかの国に住んでいる人もまた思っているのだということを知った。ただ、ほとんどの人はその国に住みつづけるケースが多いようで(当たり前か)、そのおもしろさのすべてがその国と結びつけて考えていることもあるが、一カ国だけでなくいくつかの国に共通していたり、あるいは日本以外なら共通する話もたくさんあると思う。

たとえば、ベトナムだと、日本のようにインフラがシッカリしていなかったり、お店のマニュアルも作り込まれていなかったりするので、それがハプニングを招いて日本じゃ味わえないような想定外のおもしろい体験がある。しかしこれはベトナムならではなんかじゃなく、ベトナムはおろかアジアのみならず、新興国にありがちな話だ。だからこそ言える、海外はおもしろい。

でも最初からおもしろいとわかりきった上で行く人などいない。なにも海外というか、場所だけの話じゃない。趣味にしたってスポーツにしたって、おもしろさをわかりきった上での「挑戦」はありえない。ただ、見聞きして、「おもしろいらしい」ということは分かる、「行ってみよう」という気にもなる。そんな好奇心、海外というものに向けるなら冒険心かもしれない、それを少しでも煽りたい。自分は日頃そんなことばかりを考えているし、それがこのコンテストをはじめた動機だし、根底に流れるモチベーションだ。

ただ、「行けばしあわせになれる」だなんて言わない、それはケース・バイ・ケースだから。友達ができるかもしれない、でも仕事を失うかもしれない。人生の伴侶と出会えるかもしれない、でも事故に遭って死ぬかもしれない。それでもハプニングこそが人生だと思う人は行けばいいと思う。少なくとも、行く前から責任の所在を求める人は行かない方がいいとは思うけど。

なぜやったのか(小さなくくりでの)

そんなわけで海外おもしろいぞと言いたいのだけど、そもそも日本語ネットコンテンツには海外の話題が少ないと思ってる。そのカテゴリはたいてい、観光かビジネスの大きく2種類。とくに前者は旅行に必要とされるものだし情報を揃えれば用が足りるから、バリエーションも少ない。海外と国内で分けたとき、国内は無数にあるのにこれはどうかと思って。その背景も分かるがそれはあとで書くとして、まずは「海外についての記事」を(とくに執筆依頼をするような立場の人たちに)意識してもらうところからだと思った。いきなり何も依頼してほしいとかでなく、まず「海外についての記事」というものがあるんだなと。今はそれすら形になっていないと思っているので。

個人的にこれから、出版社やメディアなどに「こういうことがありまして」とコンテストのことを伝えていきたいと思ってる。一発大きな花火を打ち上げたところで「きれいだったね」で終わっちゃ困る。「うちでもあの花火を打ちたい」「花火じゃなくてもいいからなにかやりたい」、そうして大小に関わらず機会を連続させていかないとな、と考えている。応募開始時の挨拶で「人をワクワクさせられる魅力的な記事を書ける人には、今後も活躍してほしいと思っております」と書いた通り、もとよりその目的なのだから。

検索できない世界

コンテストのキャッチコピーを「検索できない世界を教えてほしい」にしたのは、もちろん意味があって。というよりそこそこ強いこだわりがあって。

今って、その人に嗜好にあったものを届けるような形でインターネット上を情報が流通していると思う。そりゃそうだ、そっちの方が売れるんだから。でも、その嗜好は現在より過去のものだから、人が新しいものに触れる機会をトコトン奪う。同じメーカーの新商品、同じ業態の新店舗、とかならあるだろうけど、どこまでいっても180度の変化は訪れない。それがやだなぁ、なんて思ってる。消えたら困るけど。極論、なにもかも過去の自分を参考にしてしまっては、同じサイクルをただ繰り返すだけの人生になってしまう。

その基本にあるものが検索で、さっき「おもしろいとわかりきった上で新しいことを実践する人などいない」といったようなことを書いたけど、もっとシンプルにするなら「やらないうちからおもしろいものはわからない」だ。最低限「おもしろそう」までいかないと、たどり着かない。ちょうど最近、Googleが「ここ5年間で最大のアルゴリズムのアップデートを行う」と発表していた。簡単に言えば文脈を読み取って検索できるようにします、みたいな話だった。でも、人間が変わらなければどうしようもないし、根本的に、検索はどこまで高性能になったところで検索する人間の問いに従順だろう。

なのでこのコンテストでは、審査側が「おもしろそう」にすら到達していない、なんだったら「あなたたちは知らないだろうこんなおもしろいもの」くらいのものを送ってほしいという意味もこめてキャッチコピーを設定した。もうひとつ、海外といえばガイドブックでも足りる観光記事が多いので、そこを気にしつつ「役に立つだけでは評価しない」と宣言したつもり。そうして思い返せば、趣旨に沿った作品ばかりだったことが今になってうれしい。

反省点

すごくある。

なんだろうな。

全体的に不器用すぎた気がする。進めるだけで精一杯で、どこでなにをどうしたら盛り上がるのか分からなかった。どこかでだれかに失礼なことをしてしまっているのではと、その意味では今もなおプレッシャーを感じている。

それといくらなんでも手弁当がすぎた。たくさんの方に協力してもらったことは言うまでもないけれど、そのうえで自分にできることは自分でやろうとしすぎた気もする。お願いできる余地はあったのかもしれない。とはいえそれはそれで経験にはなったので、ノウハウというほどのものは得ていないけど、もし同じようなことをやろうとしている方がいれば少しはなにか意味のあることを言えるかもしれない。行った作業を書き出しておきます。

・コンセプト設計
・応募ページ設計
・文章作成と写真準備
 応募ページ
 SNS投稿
 プレスリリース関連
・審査&集計
・連絡
 →審査員
 →協賛企業
 →応募者からの問い合わせ
 →プレスリリース担当
 →ウェブ制作(デザイン)担当
 →ウェブ制作(コーディング)担当

やってよかった

実を言うと、結果発表を見てグッと来つつも、ひとり相撲になっていないかという心配があった。でも、それでも、受賞を喜んでいただいている方のツイートを見て、パッと弾け飛びました。あ~、やった甲斐あったな!!と。

聖人君子ぶるつもりは一切ないけど、みなさんのその喜びの先につづく未来があるのなら、自分は今ここでお役御免で死んでもいいや。いや死なねぇし死にたくねぇけど。ただ一瞬そんな気持ちになるほどうれしいことでした。

2回目は、もっと楽ができるならやります。願わくばやりたい。

おまけ(入賞しなかったけどおもしろかった記事)

審査は採点式&多数決で行ったので、少人数が推してるものは結果として上がりづらかった。そんな中で、個人的に印象に残った記事をちょっと紹介。

インドで“沸騰したお湯は安全”神話が崩れたって話

海外ZINE賞の「チベットで絵日記を描きはじめた」でも同じことを思ったのですが、海外に行ってイラストを描くというだけで希少なクリエイターだと思ってます。日本人でいうとエンジニアもそうらしいですよ(私が元エンジニア)。デスクワークの人ほど出不精になるのかもしれません。そうした作品はいくつかありましたが、絵に味があるな~~!と思った。ただ、ネガティブな出来事をいかに軽妙に書くかというのは、技が求められますよね。

~迫り来るおびただしいクチバシ~ オーストラリアの生き物たち

なにかにつけて表現がツボだった。きっとなにを書いてもおもしろく(俺にとっては)書ける方なんだと思う。そしてなぜか画像が粗い、テレビ台の下に放置されたホームビデオみたいな…実はけっこう、昔の話なのかな。こういう動物をユーモラスに表現した記事は個人的に好みなのかもしれません。そういえば自分が過去にいただいた賞も、ダチョウに乗った話だったし。

チリの路上パフォーマンス選手権

題材と、その料理の仕方がきれいで、良い意味でウェブ記事的。それでいてさりげなく、かつシッカリとチリの日常風景を教えてくれてるんですよね。個人的には優秀賞に並んでもよさそうだと思ってた。今もチリにいたら執筆をお願いしたかったかもしれない。しいて言うなら、かつ無理を承知で言うなら、ひとりでもインタビューして彼らの生活に切り込めたら最高だった。

ゲームも旅をする ~モロッコで現地人と遊んだゲームを求めて~

この記事、最高だった。副賞として執筆を依頼するという特性上、海外ZINE賞には選ばなかった(選べなかった)けど。モロッコで出合ったゲームの名前が知りたくて調べたら中国やインド、スペインにも似たものが見つかったという話。最近いろんな国の記事を編集していて、「あれとこれって似てるな」と思うことがあり、世界のつながりをよく感じます。それとダブった。

後半はネットリサーチで、そこをどう見るかちょっと悩んだんだけど、「いろんな国に似たゲームがあった!」という感動は変わらないしきっかけは現地でのことなので、ヨシ!と最高点をつけました。

お弁当箱の概念がうすい会社で1年はたらいた話

ニュージーランド(のとある職場では)、ランチにお弁当箱ではなく皿を使う。カルチャーショックとして分かりやすくて、飲み込みやすい良さがあった。ただ、過去の話だからだろうけど、ヴィジュアルが鍵になる場面があったので、たとえ再現でもいいので写真はあった方がさらに良かったと思う。

それと登場人物(=皿の使い方)が複数あって、勤め先の業務の話、締め、と、もう切り取り線がうっすら見えるくらいにきれいに構成が分かれているので、見出しをうまく挟んだら読みやすくなったかも。審査内容でいえば、優秀賞のラインまであと一歩でした。

空港までの1時間。タクシーにて

友人なので気兼ねなく言うけど、いい文章を書く方。よくFacebookにアップしていて、実はこれも「それ、ブログに上げてエントリーしてくれない?」と私からお願いしたものだったり。ただ、よほど作品性に関係してこなければ、やはり写真があった方がいいと私は思うんですよね。当時の現場で撮ってなくても、同じ場所、なんなら同じ街の写真でぜんぜんいいから。想像以上に読者は、想像する取っ掛かりをほしがっていると思う。

なかのさん、ぜひこれからも書きつづけてほしいです。

フォトグラファーと台湾の永春で降りてみます。

実は評価が大きく分かれた作品。読み物というよりは、読み物が添えられたポートフォリオという印象です。いや、それ以上に実験的作品と言うべきか、それはタイトルも物語っていますね。文化についての掘り下げがある訳ではないので、その点で王道(多数派?)ではないんですが、台北の魅力を再発見させられるという意味でものすごく楽しく読ませてもらいました。

そういや海外ZINEでも写ルンですで街並みを撮るという企画をやってたな。

ベビーシッターライフ in New York

私がいくつか付けさせていただいた最高点のひとつ。ニューヨークでベビーシッターとして働く中で、ヘレンという人物からさまざまな人を紹介され交流する…。写真があるに越したことはない、と常々思ってはいるんですが、ないのにこれは…スラスラとよく読ませてくれるなぁ~と感心しました。

優秀賞の「船越さん~」とよく似てますね、あれがタイの田舎ならこっちはニューヨークです。街がぜんぜん違うのにそのおかしさはどこか共通しているという点で、人の営みって変わらないんだなーと感じ入ります。

冒頭で軽く触れられていますが、最後になってこれが20年近く前の話だったと思い出させられるのが、いいです。その一気に現代に引き戻される様は、読んだ人にしか味わえないタイムトリップ感があります。なにかに似てると思ったらあれだ、映画タイタニックで終盤が現代の話なのにちょい似てる。

と!以上です!おまけと言いながらなんだこの長さは~。

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「ネルソンがんば!」と思われたら、たまにベトナムビールをおごってください。大衆ビール"333"は50円。なんと100円でビールが2杯も飲めます。300円なら接待用"サッポロプレミアム"を即買いです。

\超吉/
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ベトナムに詳しめの文筆業、編集者、企画好き、ふざけたがり。大阪出身。海外の日本人街と日本の多文化社会化に興味しんしん。2011年からホーチミン市を拠点にさまざまな人物文化場所を取材。ブログ「べとまる」のほか、「デイリーポータルZ」「エキサイト」などで執筆。ただいま起業準備中。
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