2019.8.25 おしんの視聴率90%・・・なぜイランは親日なのか?
令和元年6月13日…
安倍総理は、現職首相として約41年ぶりにイランを訪問しました。
アメリカ・イギリスをはじめ、西側諸国ではほとんど会える人がいません。
ハメネイ最高指導者との会談を実現しました。
そのほかにも、ここイランでは日本の大人気ドラマ「おしん」の最高視聴率が90%台を記録するなど、かなりの親日国として知られています。
しかし、なぜここまでイランと日本の関係は深まったのか?
その絆を繋いだのは遡ること60年以上も前、勇気ある一人の起業家とその社員の行動にありました…。
「日本人、英雄」
「ジャポン、イデミツ」
出光興産の石油タンカー「日章丸」が、再びイランの港に入港すると、国民は熱狂的な歓迎で出迎えました。
イランはもともと豊富な石油資源を持ちながら、イギリス国策会社による搾取を受け、国民は貧困に喘いでいました。
そのイランから初めて直接石油を買い付け、長い搾取からの解放を試みたのが日本の出光でした。
イギリスは即座に訴えを起こしましたが、裁判の末、出光の勝訴が確定。
昭和28年6月7日…
日章丸は、堂々と2回目のイラン入港を果たしました。
この船に乗っていた航海士の平松 泰信氏は、当時の出来事をこのように綴っています…。
“徐行中の日章丸の上空に飛行機が旋回し、よく来た日章丸、遠路ご苦労様と、無数の花束や五色の切り紙が撒かれた。
船員たちは頭から花だらけになった。
陸上には数百メートルにわたって一般市民が集結し、国旗を振りかざして
「ニッチョーマル」
とわめき立てていた。”
さらに、当時の首相であるモサデク氏はある日、出光のテヘラン駐在所長を
自邸に招き、こう言ったそうです。
“日本人の偉大さは、常にイラン人敬服の的であり、その勇猛果敢な精神に驚嘆している。
お互い不幸にして戦いには負けたが、いつの日か再び立ち上がる日の
あることを確信している。
お互い東洋人として手を取り合っていきたい。
日本がイランの石油を買う決心をされたことは感謝に堪えない。
日本はイランの救世主であると思っている。
ぜひ、以上のことを日本に伝えて、我々イラン国民の真意を汲んで欲しい。”
もちろん、出光はただの善意ではなく、ビジネスとしてこの取引を決断しました。
事実、イラン産石油の輸入により、翌年には純利益が4倍にも跳ね上がるほど、日本での販売シェアを拡大する一助になりました。
しかし、この取引によって出光そして日本国が得たものは、単にモノや金のみではなく、もっと大きなものでした。
出光にとってイランとの取引は、全社員の士気を鼓舞し、皆を1つの目的と使命の達成に向けて結集したことで、さらなる飛躍の精神的原動力になりました。
さらに、日本にとって当時まだ一般国民の中に色濃く残っていた「敗戦コンプレックス」を払拭するのに大いに貢献しました。
出光佐三氏は、イラン産石油の取引で得たものについて、こんな風に語っています。
“日を経るに従って、全国津々浦々から激励の声や電報や手紙が山となって積まれた。
私はこれを青年の声と感じた。
日本の青年は何者かを探しつつある。
日本人とは何か?
日本とは何か?
と探し迷っている。
まことに気の毒である。
1日も早くこの謎を解いて、進むべき目標を与えねばならぬ。
君は嘘つきだといわれ烈火のごとく憤る日本人。
君は泥棒だといわれては殴りかかる日本人。
親の喜びを喜ぶ日本人。
弟の出世にわが身を忘れる日本人。
友の苦労を分かちうる日本人。
祖先と祖国を忘れえない日本人。
この血は青年の血管に十分に流れている。
私の終戦後の経験に見るも、青年の望むものは利己ではない。
もちろん給与でも、地位でも名誉でもない。
人のため、社会のため、大衆のためにはじめて生き甲斐を感ずるのである。
この尊い精神が、かつては尽忠報国の明治維新となり、明治の建国となったのである。
私にとって、イラン石油の輸入で損得をはるかに超越した大きな儲けは日本人としての血の流れが青年の純真な血管に流れていることを知り得たことである。“
(参考文献:【評伝】出光佐三 高倉 秀二 著 )
明治より受け継いだ強い日本精神を持って、国際石油カルテルの圧力を撥ね付け、日本に手頃な価格で石油を供給。
のちに1兆円を超える企業へと成長した出光興産。
その勇気ある行動が、戦後の高度成長を創る一助となり、さらに世界に誇る“日本ブランド”の確立にも大きく貢献したことは間違いないでしょう。
しかし、翻って今の日本を見るとどうでしょうか?
今だけ
金だけ
自分だけ
そんな言葉に代表されるように、いつしか人も企業も利己的になり、自分の利益を得ることに夢中…。
かつての日本では存在すらしなかった汚職や不祥事が蔓延するように
なってしまいました。
このままでは、先人たちが築き上げた日本ブランドは地に堕ち、私たちの子供・孫の世代には二流、三流へと落ちぶれた日本を残すことになってしまうかもしれません…。
では、いったいなぜこのようなことが頻発するようになってしまったのか?
明治維新・高度成長といった偉業を成し遂げてきた日本が、再びかつてのような力を取り戻すにはどうしたらいいのか?
先日書き綴った今は亡き出光佐三氏の知られざる思想・行動を紐解いた記事で、現代の日本人に最も必要な“和魂洋才”の力を知って頂ければと思います。
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