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「不思議な薬箱を開く時」

こんにちは、
「不思議な薬箱を開く時」です。
今までご紹介したお薬の中で、
戦争に関わる効果が期待されているものが、
けっこう多いとお気づきですよね。
必要は発明の母と言います。
強い兵士を求める研究は、
いつの時代にもあったということです。
今回も、その一つです。

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「皮膚が金属のように固くなる薬」

フランク王国の国王、カール1世の時代に、
この薬は、開発されました。
カール1世の生涯の大半は、
征服行で占められていました。
46年間の治世のあいだに、
53回もの軍事遠征を行ったのです。
そんなカール1世が、
強い兵士を望まないはずはありません。
新しい武器の開発は元より、
それと同等の強さを持つ兵士の軍隊を作ることは、
軍事国家である以上、悲願でもあったのです。
宮廷医師であり、錬金術師でもあった、
アルフレッド・ファムラーは、
筋肉増強や、活力、俊敏さの増強ができる薬の研究を
命じられていました。
基礎体力を鍛え上げるだけではなく、
戦うための体力的機能を上げることを
究極の目的としていたのです。
国王からの命令は絶対です。
アルフレッド・ファムラーとしては、
ストレスを軽減する薬の方が必要だったかもしれません。
押し潰されそうなプレッシャーの中、
ようやく思いついたのが、
皮膚を鋼のように変えることです。
相当な打撃を与えない限り、
傷一つつけることができないような、
強靭な皮膚であれば、
戦いの際にかなり有利なはずです。
往々にして、この手の薬の被検体は、
奴隷、囚人などの犯罪者であり、
そのほとんどが、処刑代わりの投薬となります。
つまり、高い確率で死亡するということですね。
実験という大量虐殺を重ねた8年間の成果は、
剣で切傷を付けることが出来ない皮膚でした。
国王は、アルフレッドが開発した薬を服用した兵士2人に、
御前試合を命じます。
ご丁寧に鍛冶屋を呼んで、
剣を鋭く研がせもしました。
試合は、二人の兵士がへとへとになって、
倒れてしまうまで続きましたが、
どちらも傷一つ負うことがなかったのです。
国王は、いたく満足され、
アルフレッドに、軍隊を作れるほどの調剤を
命じたのです。
調剤の書には、成功を見なかった、
他のあやしくも危険な薬の調剤法も記されていました。
では、調剤料をご紹介しましょう。

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「皮膚が金属のように固くなる薬」処方

琥珀・・・・・・・・・・・・・親指大1個
硫酸銅・・・・・・・・・・・・小指大1個
ビスマス塩・・・・・・・・・・親指大1個
輝銀鉱・・・・・・・・・・・・親指大1個
バイライト・・・・・・・・・・親指大1個
グラファイト・・・・・・・・・親指大1個
クロム鉱石・・・・・・・・・・小指大1個
襚石・・・・・・・・・・・・・親指大1個
真珠・・・・・・・・・・・・・小指大2個
磁気鉄・・・・・・・・・・・・小指大1個
金・・・・・・・・・・・・・・親指大1個
羊の胎児の胆石・・・・・・・・2個
牛頭石・・・・・・・・・・・・2個

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諸注意
すべてを丁寧に粉砕し、粉末状にします。
牛頭石は、その名の通り、
牛の脳に稀に形成されるカルシウムの塊です。
かなりの数の犠牲が必要になるでしょう。
羊の胎児の胆石も、同じことが言えます。
それ以外の薬種は、さほどの苦労なく、
手に入るでしょう。

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備考欄
始めに言っておかなくてはいけませんね。
副作用があります。
皮膚が金属のように固くなるのは確かですが、
内臓をしっかり守れるかという点については、
保証できかねます。
強い力で衝撃を与えると、
確かに、皮膚には傷は付きませんが、
内臓には、かなりの衝撃が与えられることになります。
つまり、内臓までは、固くならないということですね。
記録には、全身が破れた血管のせいで、
不気味に青黒くなり、
足や腕が砕けた骨の袋のようになっていたと記されています。
表に出血しないと言うだけで、
内出血はし放題であり、
不用心に戦いつづけますと、
恐ろしいことになるでしょう。
保険に入っているから、
死にそうなことをしてもいい、
なんてことは、あり得ないのです。

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