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二宮金次郎とニッチェル

ネパール人のスタッフ、ニッチェル。約3年半前に来日し、現在20歳。様々な困難を乗り越えて「日本の大学に進学する」という大きな夢を叶えました。

ニッチェルの日頃の姿が二宮金次郎と重なる部分があります。

二宮金次郎とは?二宮金次郎(二宮尊徳)は、江戸時代、小田原(神奈川県)近くの村の農民の子とし て生まれました。朝暗いうちから夜おそくまで、汗と泥にまみれて一所懸命に働きました。勉強が好きで、余裕ができれば僅かな時間も無駄にしないで勉強をしました。文字を学ぶため、箱に砂を入れ、棒で書いては消すことを繰り返したと伝えられています。貧しかった金次郎ですが、荒れ地を耕して米をつくり、余った米をお金にかえ、お金が貯まると土地を買うことを繰り返し、23歳の若さで立派な土地もちとなりました。 金次郎は一生を世の中の為に捧げ、大飢饉で困っていた関東や東北の多くの農村や藩のために働き、多くの人々を救ったということです。

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「積小為大」小さな努力の積み重ねが、やがて大きな収穫や発展に結びつく。小 事をおろそかにしていて、大事をなすことはできない。

自らの努力によって道を切り拓いたニッチェル。彼に関わる多くの人々に夢と希望を与えてくれました。

日本語が全く喋れないところから県立高校に通い始めて、今日に至るまで様々な困難があったと思います。彼は、一体どのような道のりを経てここまでくることができたのか?

今年4月からの大学進学にあたり、ニッチェルの今までを一緒に振り返ってみました。

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■ニッチェルが日本に来た理由

当初の目的は「出稼ぎ」。ネパールの家族や自分のこれからの生活が豊かになるように、夜間高校などに通いながらお金を稼いで仕送りをするつもりだった。ネパールでは45歳〜50歳には仕事をリタイアし、その後はリラックスした生活を送るそう。だからニッチェルも日本でお金を稼いで、家族の支えやリタイア後の自分の生活のためにもお金を貯めようと考えていた。


■日本語を学ぶことで勉強の楽しさを知る

ネパールでは勉強が嫌いだったというニッチェル。まさか日本に来てこんなにも勉強をすることになるとは思わなかったのだそう。

一番はじめにつまずいたことは「言葉」。日本語が聞けない喋れない読めない書けない。だから日本人のボランティアさんなどに手伝ってもらい猛勉強。すると、だんだん相手の話している内容がわかるようになり、自分でも喋れるようになり、読めるようになり、書けるようになり、「勉強する」ことの楽しさを知った。

興味を持って勉強すると、会話ができた、テストで良い点を取れたなどの達成感と、自分が成長しているという実感。そして、自分自身がもっと知りたいという好奇心が芽生えてきた。その感情は果てしなく、日本語だけじゃなく、もっともっといろんなことを勉強して、自分がどこまで難しいことにチャレンジしていけるのかという未知の世界を知りたくなった。

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■正しい方向に歩いている気がした高校生活

日本語の勉強をがんばれたのと同じで、高校の他の教科も頑張れば頑張るほど良い点が取れるようになった。一番ビックリしたのは、自分が頑張って結果を出せば、周りの人の反応は良い風に変わった。自分が興味を持って取り組むと、自然と「やりきる力」が出てくる。これがわかったときに、何となくながら正しい方向を歩くことができているような気がした。そうすると、来日する前に考えていた「ただお金を稼ぐ」ではなく、もっと高い目標を持てるのでは?と思うようになった。

日本の大学で新たな知識や経験を身につけて、他の人がやったことないようなことをしてみたいという夢ができた。


■一番嫌いな科目「体育」から一番大切なことを学んだ

そう思って高校時代は一所懸命勉強をした。当時、外国人の受け入れをしている高校は少なく、ニッチェルは通学に2時間以上かかる高校へ。勉強時間を確保するため、暑い日も寒い日も1日も休むことなく始発で通い続けた。それでも日本語で受ける授業は難しいし、大嫌いな体育もあった。でも、そんな大嫌いな体育の授業中に先生が言った言葉が、今のニッチェルの努力をする源になった。授業で大嫌いな腹筋をしていたときのこと。ある男子生徒がサボっているのをみて激怒した先生。

「腹筋が上手い人も下手な人もいることは知っている。しんどいことも知っている。でも、やるしかない状況のときは、一所懸命やりきることがいいに決まっている。同じ50分の授業でも、君たちがどう受け止めてどう過ごすかで全てが変わる」

ニッチェルはこの言葉を聞いたとき、どれだけ苦手なこと、嫌いなことでも一所懸命前を向いて頑張ることをやり抜こう、と決めたのだそう。

苦手な腹筋、プール、マラソン、少しでも楽しんで自分なりに一所懸命やり抜いた。それを続けると、学校生活の中で困ったときに優しくしてくれる人もできたし、授業とは全然違った場面でも助けてくれる人に出会えた。このことから嫌いなこと、苦手なことに対して「自分がどう対応するか」で正反対の事柄が起こったりする。前を向いてがんばることの素晴らしさを知った。


■大人になるということ

国語の授業の中でも、ニッチェルには忘れられない言葉と出会う。

とある先生が、「大人になるということはどういうことでしょう?」という質問をされたとき、ニッチェルは答えが見つからなかった。

先生の答えは、「自分の責任で何かを選択したときに、その選択に責任を持ち、どんな結果であれ納得し、受け入れることができるのが大人です」というもの。

このときニッチェルは、なるほど、と深く納得し、自分が選択して進んでいく道がたとえ後悔する結果でも、真摯に受け止めることを自分の人生の中で大切にしていきたい。そう誓った。

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■大学に合格することができて

高校生活で得たニッチェルの努力が実を結び、無事に大学に合格することができた。ニッチェルにとっては全ての授業が一生忘れられない50分。何か難しいことにチャレンジする、それを乗り越える過程がとてつもなく大事だということを知った。これからどんな困難があっても、自分ができることは全て前を向いてしっかりやりきると。

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こんな感じで、まかないの時間にニッチェルのこれまでを振り返りました。そして、今考えていることを深めるために、他にもいろんな話をしました。昔もよく、夢の話とかを営業後にたくさんしていたけど、こんな時間をとって話し合うのはなんだか久しぶりな感じがしました。

ニッチェルの学校生活を振り返ると話題はつきなくて、そこには私が知らない様々な登場人物やエピソードがあって、その全てが今のニッチェルを形作っているんだと驚きました。

ニッチェルの素晴らしいところは、誰かの話をまず素直に聞き入れて、実行して、体感して、それを経験にして更に活かすことができるところです。

10歳以上も歳下の彼ですが、本当に多くのことを彼から学ばせてもらっています。二宮金次郎の「積小為大」、ニッチェルが体現する日を夢見て、私も同じように頑張りたいです。

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