見出し画像

【曲評】aiko「トンネル」

2020年はいろいろな意味で忘れられない1年となりました。暗い話は無し。aikoサブスク解禁、そしてアルバム『BABY』リリースから10年の節目です。主宰は1990年生まれですので発売当時、大学在学中ということになります。匿名希望、身バレ上等を標榜しておりますがしかしこのくらいでご勘弁を。さっさと楽曲「トンネル」の話にまいりましょう。

とはいえ四方山話をさせて下さい。音楽との出会いは映像や風景と一体型になって、突如我々の前に訪れるものです。全身に電気が走る感覚。主宰も、何度かその経験があります。忘れられない楽曲を取り上げると、安藤裕子の「ドラマチックレコード」。午前7時40分頃、中学の制服に着替えつつ何気なく付けたケーブルテレビの音楽専門チャンネル。

そこに突如、安藤裕子が姿を現します。薄もやがかった音像と透明感ある声との心地良いミスマッチ。映画のようなMVは自身のディレクション。もう着替えどころの騒ぎではなくなりました。電話帳横のメモ用紙に、歌手名と楽曲名を殴り書きひとまず学校へ。その日のことはなんにも覚えておらず、下校するやいなやレコード屋へ自転車を走らせたことだけが記憶に残る。

aiko「トンネル」に話を戻します。リリース当時、プロモーションの為関西一円のFM局を回っていた彼女。世間はお花見シーズン真っ只中です。主宰も例に漏れず、阪急沿線某所のお花見スポットでたらふく日本酒を煽る煽る。「酒買い足してこい」の号令一下、近くの酒屋さんへふらふらになりながら歩いていきました。先輩後輩を引き連れながら。

あんなに呑んだはずなのにまだ日本酒の棚に手が伸びている。その最中この楽曲とめぐり会うことになるのでした。「真っ直ぐ続くトンネルで/ひとり後退りをした/足並み合わすのを忘れて/コントロールを失ったんだ/口ずさんだ歌と一緒に/想いがこぼれてしまった」1サビまで聞き終えてなお、その場から一歩たりとも動くことができなくなっていました。

結局、引き連れた先輩後輩を差し置いて、フェードアウトしていくアウトロまで全部聞いた。曲評を標榜したからにはもっとこう、歌詞の世界観を掘り下げるだとか、阪急沿線を歌にした楽曲もあるくらいですからロケーションを探り当てようだとか、そういった工夫が必要なのかもしれません。しかしあの日あの時あの場所で出会った記憶こそが何よりの曲評ではないかと。

アルバム『BABY』を締め括る楽曲。風呂敷を畳むための楽曲。コンセプトを完成させるための楽曲。日本酒に甘辛があるように二人の登場人物の恋模様も時に甘く時に辛い。もしもパソコンの前でテレビの前でこの曲と出会っていたとしたら、また違った感情が芽生えていたことかもしれません。酔いが醒めるような清々しさは更なる口寂しさを生みさらに日本酒を流し込んだ。

2020年3月31日


#音楽 #aiko #トンネル #BABY #安藤裕子 #ドラマチックレコード #日本酒 #お花見 #三国駅 #レビュー #コラム #サブスク解禁 #記念日

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?