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虎に翼111話(一美)

それぞれの歳月

家で…
百合「そうだ  朋一さんからおハガキが届いたんですよ」

朋一は 今、長崎地裁で判事補に…
ハガキには
『家に帰れば ご飯がある
有り難みを 今更ながら感じてます』と…

百合「あら こんな時間。
のどかさん 遅いわねぇ」
百合の話を聞いていた
航一の表情は
(おや…?)

寅子は しきりに汗を扇いでいる。(更年期か…?)

百合はボケが始まったのか…?

それぞれが
それぞれに年月を重ねた
様子の
家の 人々
猪爪家の 人々
…….……………………
昭和34年11月
*(原爆が落とされて既に14年の年月が経っている)
ようやく 約4年間、27回に及ぶ原爆裁判の準備手続き
*(準備手続きが…です)
終わった。
………………………
汐見「ここからが本当の
始まりです『あの戦争を
どう捉えるのか』
という
難しい問題を含む裁判ですが 誠心誠意 臨みましょう」
漆間「でも…  ぃぇ…」
寅子「この場では  思ってることは 口に出して」
漆間「この4年間ずっと
向き合ってきて…
ぁ…僕の感情は抜きにして
原爆の被害者である原告側が求めることを法的に認めるのは…」
汐見「ぅん  日本にもアメリカにも賠償責任があることを法的に立証するのは難しいと思う
国は早期の結審を求めてくるでしょう
でも  我々は 法の下 法廷の場で全ての論点について
議論し尽くしましょう

……………………

山田 轟 法律事務所で…

雲野「第一回 口頭弁論
期日は来年の2月8日となった。二人共ぜひ傍聴してもらいたい」
「もちろんです」
よね「ぁ、それで  岩居先生の ご体調は?」
雲野「だいぶ いいようだ
いゃあ…しかし
まさか私より先に
岩居君が過労で倒れるとはな…  はっはっはっは…」
「笑いごとじゃない
働き過ぎですよ。二人とも」
雲野「いやいや まだまだ
働かねば。損害賠償の訴えが認められれば  国に賠償を求める国民が何万 いや何十万と現れる。政府は何としても その事態を阻止しようとするに違いない。
それでも やらねばならん
決して風化させないために今、動かなければ

この直後  雲野 倒れる
「先生っ‼︎」
「救急車っ‼︎」
雲野先生っ!」
…………………

寅子「……そんな  」
電話はからだった
「急なことで驚いたよなぁ  おそらく葬儀はあさって…」
の受話器を奪い取るや否や 寅子に話す よね
「おまえは来るな!
葬儀にも、ここにも。
原爆の裁判 おまえ関わってるんだろ
私たちも手伝うことになった。判決に難癖つけられたくないだろ」
………………………
後日 山田 轟 法律事務所で…

岩居「原告は不安がってる
雲野先生亡き今『この訴訟は無理ではないか』って…
俺も無理だ と思う
そもそも彼らは
必ずしも裁判に乗り気じゃなかった
よね「いったい彼らは
いつ迄 耐えなければいけないんだ」
「やっと裁判が開かれる
とこ迄 来たんです。
あなただって本当は
雲野先生の意思=遺志を
こんなところで途絶えさせたくない はずだ」
よね「やりましょうよ
岩居先生」
…………………
年が明けた
昭和35年1月
日米安保条約改定が行われ
日米の協力体制が強化された。
その翌月
(ますます やりづらくなった…)
原爆裁判の第一回 口頭弁論

岩居「裁判長  今一度
訴状の骨子を 法廷で陳述してもよろしいでしょうか」
岩居「提訴から5年。
広島 長崎への原爆投下により原告やその家族
民間人を無差別に殺害し
苦痛を与えた原爆投下は
人道に反する国際法違反であり、米国は被曝者に対して損害賠償を支払う義務があります」

と、ここで
傍聴席に入って来た人が…

岩居「しかし政府は平和条約により、戦争によって生じた 一切の損害賠償請求権を放棄している。
これは国民の財産権を侵害したことに他ならない。
政府は米国に代わり
これを保障すべきである」

傍聴席に現れたのは
齢を重ねた
竹中記者

     :一美







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