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映画日誌’20-15:ジョン・F・ドノヴァンの死と生

trailer:

introduction:

『Mommy/マミー』でカンヌ国際映画祭審査委員賞を受賞し、前作『たかが世界の終わり』でカンヌ国際映画祭グランプリに輝いたグザヴィエ・ドランによる、初英語監督作品。ニューヨークを舞台に、夭折したスター俳優と少年の密かな交流と、謎に満ちた死の真相が描かれる。主演はドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」シリーズなどのキット・ハリントン、『ルーム』『ワンダー 君は太陽』などで知られる天才子役ジェイコブ・トレンブレイ。ナタリー・ポートマン、スーザン・サランドン、キャシー・ベイツら、豪華な顔ぶれが共演する。(2019年 カナダ,イギリス)

story:

2006年、ニューヨーク。人気俳優のジョン・F・ドノヴァンが29歳の若さでこの世を去った。自殺か事故か、あるいは事件か、謎に包まれた死の真相の鍵を握るのは、11歳の少年ルパート・ターナーだった。それから10年の時が過ぎ、ジョンとルパートの“秘密の文通”が一冊の本として出版される。新進俳優として注目される存在になっていたルパートが、彼と交わした100通以上の手紙の公開に踏み切ったのだ。そしてルパートは、著名なジャーナリストの取材を受け、すべてを明らかにすると宣言するが...

review:

美しき天才、グザヴィエ・ドランの新作である。19歳の時に監督、主演、脚本、プロデュースをした半自叙伝的なデビュー作『マイ・マザー』で国際的に高い評価を得、その後『わたしはロランス』がトロント国際映画祭で最優秀カナダ映画賞受賞、カンヌ国際映画祭ある視点部門女優賞とクィア・パルム賞を受賞。『Mommy/マミー』で、カンヌ国際映画祭審査員賞受賞、カナダ・スクリーン・アワードで最優秀作品賞を含む9部門を受賞。前作『たかが世界の終わり』は、カンヌ国際映画祭グランプリはじめ、セザール賞最優秀監督賞と最優秀編集賞など多くの映画賞を受賞。って、この子まだ20代よ。恐ろしい子・・・!と言う訳で、公開を待ち望んでいたのであるが、8歳だったドランが当時『タイタニック』に出ていたレオナルド・ディカプリオにファンレターを書いたという自身の思い出をヒントに、着想から10年の歳月を経て挑んだ本作は、これまでの作品と比べるとやや大衆寄りだ。以前からのファンに言わせれれば「こんなのドランじゃない」らしい。ハリウッド臭が鼻につくと、賛否両論。私も『わたしはロランス』に魅了されて以来ドランを追いかけてきたが、いやいや、難解だから芸術性が高いということではないし、分かりやすいことが低俗ということでもないだろう。大衆に歩み寄ったとしても、ドランはドランである。とにかく映像が圧倒的に美しい。おそらく計算され尽くした、鮮烈な印象を残す映像表現に、Adeleの ”Rolling in the Deep” やThe Verveの "Bitter Sweet Symphony” などのエモーショナルな音楽が効果的に挿入され、もうそれだけで惹きつけられてしまう。やはり、グザヴィエ・ドランの才能に魅せられてしまったら、もう抗えないのだ。彼の映像世界はいつだって我々を驚喜させ、感情の奥深いところを揺さぶる。ドランの感性を堪能できた私はたいへん満足したのであるが、ドランがこだわり続けている、母親と息子の葛藤、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の生きづらさ、といったテーマは相変わらず。たしかに言われてみると、もうそろそろ良くない!?って思ったりもする。しかも今回にいたっては、生い立ちやセクシャリティに共通点を持つ、スター俳優ジョンとそれに憧れる少年ルパートが交わしていた秘密の文通を軸に、青年ルパートが回想しながら死の真相に迫るって、テーマ増幅させすぎや。ストーリーと構成に関しては少々脇が甘い。しかし、そんなことはどうでもいいのである。なぜなら、圧倒的に美しかったから。そして、「マイ・プライベード・アイダホ」のオマージュが素敵だったから。

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