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暴力告白

校舎と校舎の間にある中庭で、男女が向かい合って立っている。その周りを生徒たちが野次馬めいて遠巻きに見守っていた。

見るからに愛の告白の場面だった。

男の方は長身で体格がよく、そのルックスはイケメンだ。たしかサッカー部キャプテンの某だったかな。

もう一方の女生徒はまごうことなき美少女だった。

スラリと伸ばした鳥の濡羽色の長髪に、精緻かつ上品に整った容姿にすらりと均整の取れた体型。

彼女はこの学校の有名人だ。

緊張した面持ちの男子生徒に対して余裕のある表情を見せる女子生徒。


見た目だけならお似合いのふたりといえよう。

緊張と好奇心が包む空気の中、ふたりはしばらく黙って向かい合っていた。

すると、男が口火を切った。

「好きです。俺と付き合ってくださらァッ!」

その言葉とともにイケメンの右ストレートが彼女を襲った。

しかし少女は難なくその拳を片手で受け流し、間髪入れずにガラ空きの腹に重いボディーブローを決める。

崩れ落ちるイケメン。その体はピクピクと痙攣している。そんな彼の頭部を少女は容赦なく蹴飛ばした。


「ふふ……。あなたはどうやらわたくしを超える暴力者ではなかったようですね 」

息を切らした様子もなく彼女は言い放った。

部室棟の3F、窓辺からオレはその様子をじっと見ていた。


札井凛久(さつい りく)――彼女は我が校が誇る絶世の美少女にして屈指の暴力強者だ。

「好みのタイプはわたくしよりずっと強い殿方です」

そう公言してはばからず、告白の場で自分を討ち取った者と付き合うと宣っていた。

入学当初から彼女に告白を挑む者は跡を絶たなかったが、そのすべてを血の海に沈めていた。


オレは今目の当たりにした凄惨な暴力の身震いしつつ心を決めて、窓から飛び降りた。

そして部室棟にある茶道部(暴力)に歩を進めていた彼女の目の前に着地する。

「あら」


俺は今から彼女に告白するのだ。

つづく


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