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紫陽花の花言葉 9

俺が電話に出るのを躊躇していると、兄が「電話に出ないのか?」と怪訝な顔をした。兄には、母との会話を聞かれたくはなかった。

「兄さん、ちょっと席外すね」
俺は電話に出るため、ファミレスの外に出た。

電話に出ると、母は「電話に出るのが遅い」と俺を責めた。俺は、今ファミレスで食事中だと伝えた。

「清明、あの人が亡くなってからの段取りなんだけど、どう立ち回れば周りの印象が良いかしら」
母は危篤の父の側に居てやらないどころか、葬式の話を持ち出してきた。そのことが、俺の感情を逆撫でした。

「母さん、どうしてあなたは自分のことしか考えられないんだ!あなたは父さんが死にそうだというのに、心配ではないのか?」

「……だって、私が居てもいなくてもあの人死ぬでしょ?」
母は悪びれるわけでもなく、淡々と言い放つと、電話を切った。

俺は大きくため息をついて、通話終了ボタンを押した。

母が父と結婚したのは、家を守る為だと分かっている。だけど、長年連れ添って多少は夫婦の情は芽生えなかったのだろうか。夏の夜の生暖かい風は、俺の憤りを吹き飛ばしてはくれなかった。

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さくらゆき
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