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紫陽花の季節、君はいない 27

6月21日。紫陽が消えてしまった日。
眠れずにいた俺は、何かに取り憑かれたように日の出前に家を出た。
雨は降っていないが、じめっとしている。
ふらふらと歩いて辿り着いたのは、八幡宮の鳥居の前だった。

此処までやって来たのに、境内に入るのは躊躇われた。

紫陽花ノ季節、ナノニ君ハイナイ。
分カッテイタノニ、来テシマッタ。

鳥居の柱にもたれ掛かる形で俺は座り込んだ。
ろくに眠らずに歩き続けたからか、そのまま意識を失ってしまった。

俺は気づけば闇に揺蕩っていた。
不思議と居心地は良い。

俺は世の中に必要とされていない。
柊司達にも、生まれ変わってくる彼女にも会わせる顔がない。
ナラバ、イッソノコト──

そう思った時、シャンと鈴の音が聞こえた。
闇から俺は急に明るい場所に出たので、目が眩んでしまった。

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