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紫陽花の季節、君はいない 24

夜明け前、俺はひどい胸の締め付けと吐き気で目を覚ました。
苦しくてもがいたので、シーツがぐしゃぐしゃになってしまっていた。

「…紫陽、紫陽。」
すがるような気持ちで、彼女の名前を繰り返し呼んだ。
頭の中でリフレインする義母の呪いの言葉を打ち消したかった。
しかし、呼べば呼ぶ程呪いが心に刻まれていくようだった。

『貴方ノオ友達ノ奥サンヤ子ドモハ、無事デ済ムカシラネ──』

これは夢だ。義母が実際に言った言葉ではない。
だけど、実母も紫陽も俺のせいで死んでしまったのは事実だ。

俺は疫病神なのだろうか?
そうだとしたら、あおいさんが無事に子どもを出産するには、俺はいない方がいいのではないだろうか?

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