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契約は一方的な反故ができないから価値があるのです。

 AV新法で「女優は無条件に契約を破棄できる」権利を認めようという話があります。

 個別の道徳的な是非には今は触れません。

 私が気になるのは「それ、すでに契約じゃないでしょ?」という点です。これが認められたら企業はリスクが高すぎて女優を雇えない。一つの産業が崩壊すると思います。
 これは女優さんが望むことではないでしょう。

 経済活動は契約を守ることが大前提で、契約のない商取引は不可能です。***********

補足

 一見すると弱者を守るように見えて、逆効果という事例はいくつもあります。

 例えば賃貸住宅。居住権は強力に守られている。大家はおいそれと契約を解除できない。

 しかし、それゆえに身寄りのない人、シングルマザー、外国人などは契約を断られる。また家賃は高額です。

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 雇用もそうです。企業は雇用契約を解除することが非常に難しい。そして、それゆえに少しでもリスクがあれば不採用にするし、採用数をギリギリに絞る。賃金も安い。

 また給与は下げられないから上がらない。

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 最低賃金も同じ。法律で強制的に値上げすれば、企業は機械化して採用を減らす。雇用が減るだけです。
 あるいは赤字になって倒産する。韓国経済はこれで崩壊しました。文大統領が大衆受けを狙って法定賃金を上げ続けたからです。

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 権利を無料で手に入れるのは無理なのです。

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おまけ

 基本的には民間企業の経営に、「公共の福祉のために〇〇をしろ」と行政が口を挟んでも長期的には大抵失敗します。

 例えば、アパート経営者に対して、自らの利益を犠牲にしてでも顧客(店子)が得をするように規制を加えたとします。

 短期的には顧客は救われる。しかしアパート経営から撤退する人が増え、新規参入は減ります。アパート供給は減り、家賃は上がる。顧客はむしろ不利益を負うでしょう。

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 この種の議論で起きる多くの誤謬は、市場に流動性があるのを忘れていることです。

 今日現在アパート経営をしている事業者に、その事業を続けろと命令することはできないのです。
 また今日現在アパート経営をしていない人に、参入しろと命令することもできない。

 アパート経営をする事業者は時々刻々入れ替わっている。固定メンバーじゃないのです。

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 つまり「損をしてでも〇〇をしろ」と言った所で、従う事業者がいなくなるだけです。

 それゆえに、企業に従業員への福祉を期待するのは無意味なのです。従業員に利益を還元しろといった所で、対象企業がいなくなるだけ。
 福祉は「事業をやめることが不可能な」行政の仕事なのです。

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おまけ2

 コロナ対策として、政府は看護師に「もっと働け」と圧力を掛けました。

 その結果として看護師の数が減りました。逆効果です。



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