最近の記事
GREAT CHOPINZEES~ショパン演奏の秘かな愉しみ(トレイラー)
前回のレコードコンサート「レシェティツキの弟子たち」から約5年。昨日4/8(土)富士レコード社さんのお招きで開催させていただきました「GREAT CHOPINZEES~ショパン演奏の秘かな愉しみ」が盛況のうちに終了いたしました。 約二時間半、2回の休憩を挟みながらの長丁場でしたが、皆様リラックスして楽しんでいただけたようで、当日の朝までムービーを作りながらレコード選定に迷った甲斐がありました。ご来場の皆様、スタッフの方々、応援してくださった方々に深く感謝しております。 記録も兼ねまして、今回は6章に分けてサクラフォン秘蔵のSPレコードをご紹介いたしました。ムービーのトレイラーとトラックリストのご報告をさせていただきます。 「GREAT CHOPINZEES〜ショパン演奏の密かな愉しみ」 第1章:偉大なるショパンジーたち Vladimir de Pachmann (1848-1933):ワルツ 第6番, Op.64-1(前口上付き) Victor GIlle (1884-1964):夜想曲 第5番, Op.15-2 Auguste de Radwan (1867-1957):二つのマズルカ, Op.6-2 & 30-4 第2章:ショパン異種格闘技 Adolphe Hennebains (1862-1914):夜想曲 第5番, Op.15-2(タファネル編)(フルート独奏、オーケストラ伴奏) Dino Jonesco ( ??? ):ワルツ 第7番, Op.64-2(ツィンバロム独奏、ピアノ伴奏) Lalyta Almirón (1914-1997):夜想曲 第2番, Op.9-2(タレガ編)(ギター独奏) ~ 休憩 第3章:日本のショパンジー 澤田 柳吉 (1886-1936):ワルツ 第7番, Op.64-2 野辺地 勝久(1910-1966):夜想曲 第16番, Op.55-2 第4章:忘れられたショパンジーたち Gertrude Meller (1879-1945):夜想曲 第10番, Op.32-2 Wilhelm Backhaus (1884-1969)):練習曲, Op.10-7 & ワルツ 第6番, Op.64-1 ~ 休憩 第5章:装飾的ショパン Vladimir de Pachmann (1848-1933):ゴドウスキー編;革命のエチュード(左手のみ) Victor Schiøler (1899-1967):ゴドウスキー編;蝶々のエチュード Raoul von Koczalski (1884-1948):夜想曲 第2番, Op.9-2(ヴァリアント付) Cecile Staub Genhart (1898-1983):ザドラ編;ワルツ 第6番, Op.64-1 第6章:歌ショパン歌 Miiza Korjus (1909-1980):乙女の願い〜17のポーランドの歌(ドイツ語、オーケストラ伴奏) ~ 終幕 また更に楽しい企画で、次回もお会いできることを楽しみにしております。Sakuraphon 夏目久生
マガジン
記事
- 再生
ショパンの孫弟子による伝説のノクターン
19世紀生まれのピアニストによる歴史的名盤⑤ ラウル・フォン・コチャルスキ(1885-1948, ポーランド ) ショパン「夜想曲第2番変ホ長調 作品9-2 (ヴァリアント付)」(1938年録音) ● ショパンの高弟カロル・ミクリにショパン伝統の継承者として育てられたサラブレットであるコチャルスキによる伝説的なSPレコード。聴き慣れないヴァリアント(装飾音)は、ミクリがショパン自身の演奏を聴いて書き留めたものと伝えられており、さらにはも別バージョンまでコチャルスキのさらに古いSP録音やミハウォスキの録音に残されています。 ショパンは即興的な装飾音を付けて演奏した例が幾つも伝えられていますが、これのレコードはそれを裏付けています。 コチャルスキが、どの程度ショパン自身の演奏スタイルを再現しているか、過大評価は禁物ですが師ミクリから多くの証言を得た事は確かです。このレコード以外にも「幻想即興曲」などの演奏は拍の取り方が違う楽譜を元に演奏されていて非常に興味深いものです。 ▶︎ コチャルスキは、晩年のライブ録音に、よりリラックスした本来の姿を見出す事ができます。(私にはレコード録音は、少し強張ったように聴こえます。)またピアノロールも数本残しており、こちらは余り知られていません。ショパンのクラコヴィアク Op.14や、独奏版のピアノ協奏曲第1番ホ短調 Op.11などレコード録音されていない曲も多くあり、いつの日かCD復刻される事を願って止みません。
- 再生
19世紀生まれのピアニストによる歴史的名盤④ フランシス・プランテ
19世紀生まれのピアニストによる歴史的名盤④ フランシス・プランテ (1839-1934, フランス) ショパン「練習曲 ハ長調 Op.10-7」(1928録音) https://youtu.be/UOVs526XWJw ●ショパン自身のピアノ演奏を聴いたことがあるとされる唯一のピアニストによるショパンのレコード。この最晩年の演奏は、スイスの自宅までコロムビアが機材を運び込んだ甲斐もあり、愛用のエラールの響きによるプランテの伝説的な「フローティング・トーン」の実演に接する事が出来る訳です。このフローティング・トーンについては、こんな逸話が残されています。 「ええ、私も一音だけならプランテのタッチを真似する事は出来ますよ。でも一曲通して彼のトーンで演奏することはとても出来ません。」 プランテを聴くたびに思い出すのは、アンドレ・ジッド著「ショパンについての覚え書き」です。 ノーベル賞作家として記憶されているジッドは、幼少期にショパンの弟子に学んだアマチュア・ピアニスト。 この著作中で、コルトーのレコードも、ラジオから聴こえてきた名ピアニスト(誰なのか?)のショパンも、ダリウス・ミヨーのサロンで聴いた技巧的に完璧なショパンにも、ジッドは嫌悪の念を示します。 こういう事はなかなか明け透けに口にしない様にしてるのですが、実は僕も同じ想いを抱いています。そして、その対極にあって、ショパンの本質に迫る演奏は、プランテのレコードによって明示されていると考えています。 プランテの演奏は、音楽の構造的な美しさ、和声の精妙さ、対位法的な内声の明確化、フレーズ一音一音の音価をたっぷりと聴かせてくれます。如何に多くのピアニストたちが、ショパン音楽の魅力的な部分を早いテンポですっ飛ばしているかが良く判ります。 ▶︎プランテのSPレコードは、LPやCDで各社から復刻されており、現在でも容易に聴くことが出来ます。しかし、ハプフェルト社に残されたピアノロールは、あまり良い状態で採録されていない動画でしか聴くことが叶いません。レコード録音の少ないプランテの貴重な資料として、この分野の復刻が進むよう切に願っています。
- 再生
19世紀生まれのピアニストによる歴史的名盤③ モーリッツ・ローゼンタール
19世紀生まれのピアニストによる歴史的名盤③ モーリッツ・ローゼンタール(Moritz Rosenthal, 1862-1946, ポーランド) ●ショパンの弟子であるカロル・ミクリと、フランツ・リスト本人に学んだポーランド出身でアメリカで活躍した伝説のヴィルトゥオーゾ。若い頃はその超絶技巧的な演奏が過ぎて、評論家から苦言を呈されるほどでしたが、成熟するにつれて詩情溢れるショパン弾きとして、パハマン、パデレフスキ、ブゾーニ、ゴドフスキ、ホフマン、ラフマニノフ、ザウアー、ダルベールなどと並んで、世界的に賞賛され大成功を収めます。 リストの弟子にはいろいろなタイプのピアニストがいますが、ローゼンタールはベートーヴェンの録音を残していない数少ない弟子です。リストといえば、ベートーヴェンの弟子であるカール・ツェルニーの弟子なので、その他の弟子たちは皆、偉大なベートーヴェン弾きであることが多いのです。 恐らく、晩年のリストよりも、ミクリやリストの弟子のヨゼフィ(リストに就く前に学んだ)から学んだことの方が多く影響しているのではないかと思います。 ローゼンタールのレコードは、ミクリ門下のコチャルスキや、リスト門下のザウアーなどと並んで、ショパン演奏を語る上でも欠かせない歴史的名盤の宝庫です。数ある名演盤から一曲をピックアップするのは非常に難しいのですが、ここでは僕が初めて聴いたローゼンタール盤のショパン「エチュード ハ長調, Op.10-1」を選んでみました。 当時、ポリーニの機械的に完璧なエチュードを愛聴していた僕にとって、ペダルを極力抑えたレガート、繊細で美しいタッチで演奏されるローゼンタールのレコードはまさに衝撃的でした。 https://youtu.be/13bZhjSo4Jc ▶︎ちなみに、若き日のヴィルトゥオーゾとしての片鱗は、ローゼンタール編曲のJ.シュトラウス「美しき青きドナウ」( https://youtu.be/IbDWpdFLdBw ) や、リスト「ハンガリア狂詩曲第二番」( https://youtu.be/SuFxcFlT3-I )、などの録音で聞くことができます。 また詩情豊かなショパン演奏として「ワルツ第7番嬰ハ短調, Op.64-2」( https://youtu.be/Rucq0tWGloY )も必聴です。リズムの取り方、装飾音のあしらい、トリオ部分の美しさなど、隅々まで繊細で美しい超一流の名演奏です。