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本日の一曲 vol.413 ストラングラーズ ナッシング・オン・アース (The Stranglers: Just Like Nothing On Earth, 1981)

ストラングラーズは、1974年ころに結成されたイギリスのバンドであり、ギターとボーカルのヒュー・コーンウェル(Hugh Cornwell)さん、ベースのジャン・ジャック・バーネル(Jean-Jacques “JJ” Burnel)さん、ドラムのジェット・ブラック(Jet Black)さん、キーボードのデイヴ・グリーンフィールド(Dave Greenfield)さんの4人が当初のメンバーでした。

ストラングラーズは、1976年にラモーンズ(The Ramones)とパティ・スミス(Patty Smith)さんが最初のイギリスツアーをしたときに前座を務めたことから、パンク・ムーブメントの中の一つのバンドだと言われていました。しかし、セックス・ピストルズ(Sex Pistols)やクラッシュ(The Clash)などとは違って、デイブ・グリーンフィールドさんのキーボードがサウンドの前面に出ていたことと、JJさんのベースラインが際立っていたことがあり、パンク・バンドと言ってよいのか、カテゴライズには当てはまらないバンドでした。

ただ、当初は確かに攻撃的なサウンドであり、歌の内容から右翼だと言われていました。1977年にリリースされたセカンド・アルバム「ノー・モア・ヒーローズ(No More Heroes)」から「疎外されて(I Feel Like A Wog)」です。「wog」とは、アジア・アフリカ系の移民に対して肌の色を揶揄する軽蔑語です。

また、メンバーの中ではJJさんが三島由紀夫さんのファンであり、また極真空手をやっていたことから、日本とは馴染みが深く、1978年にリリースされた3枚目のアルバム「ブラック・アンド・ホワイト(Black And White)」には、「死と夜と血(三島由紀夫に捧ぐ)(Death And Night And Blood (Yukio))」という曲が収録されています。この曲の題名は、三島由紀夫さんの小説「仮面の告白」からの引用です。

引用された部分は、「仮面の告白」第1章の幼少期の読書の嗜好を回顧する場面です。

 子供に手のとどくかぎりのお伽噺を渉猟しながら、私は王女たちを愛さなかった。王子だけを愛した。殺される王子たち、死の運命にある王子たちは一層愛した。殺される若者たちを凡て愛した。
 しかし私にはまだわからなかった。何だって数あるアンデルセン童話の中から、あの「薔薇の妖精」の、恋人が記念(かたみ)にくれた薔薇に接吻しているところを大きなナイフで悪党に刺し殺され首を斬られる美しい若者だけが、心に深く影を落とすのかを。なぜ多くのワイルドの童話のなかで、「漁夫と人魚」の、人魚を抱き緊めたまま浜辺に打ち上げられる若い漁夫の亡骸(なきがら)だけが私を魅するのかを。
 勿論、私は他の子供らしいものをも十分に愛した。アンデルセンで好きなのは「夜鶯」であり、また、子供らしい多くの漫画の本を喜んだ。しかしともすると私の心が、死と夜と血潮へむかってゆくのを、遮(さまた)げることはできなかった。

三島由紀夫「仮面の告白」第1章より

ストラングラーズは、着実にファンを増やしていましたが、本日ご紹介する「ナッシング・オン・アース」が収録された5枚目のアルバム「メニンブラック(The Gospel According To The MenInBlack)」は、確実にファンを減らしたと言われています。

この「メニンブラック」というアルバムは、4枚目のアルバム「レイヴン(The Raven)」に収録された1曲「メニンブラック(Meninblack)」のコンセプトを1枚のアルバムにしたものです。

メニンブラックとは、1997年公開の映画「メン・イン・ブラック」もありましたが、もともとは都市伝説の一つで、「UFOや宇宙人などの目撃者・研究者の前に現れ、警告や脅迫を与えたりさまざまな圧力や妨害を行う謎の組織」のことあり、アルバム「メニンブラック」は、UFO、エイリアン、陰謀論をテーマにしたものです。

本日ご紹介する「ナッシング・オン・アース」の歌詞の大意は、地球上に存在しないものに遭遇したということです。

ここでは、デイヴ・グリーンフィールドさんのキーボードが中心に音楽が組み立てられており、もはやパンクロックの枠を踏み越えて、実験的な音楽を展開しています。

アルバムのプレイリストです。

その後、ストラングラーズは、1990年にヒュー・コーンウェルさんが脱退、2020年にデイヴ・グリーンフィールドさんが、2022年にジェット・ブラックさんがそれぞれ鬼籍に入り、現在は、JJさんが中心になってバンドを継続しています。

(by R)

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