「年収ガイド」とはいったい何者か?

※以下ページには直リンクを避けるため、アーカイブサイト(archive.vn)を利用しています。ご了承ください。また、当サイトの記述は2022年1月現在、私が把握している内容です。今後の動向次第では、細部に誤差が生まれる可能性もあります。

さて、「年収ガイド」(https://www.nenshuu.net)というサイトをご存じだろうか。その名の通り、サラリーマンから上場企業・地方公務員の年収・収入を調べることができるサイトである。

このサイトは、「○○(企業名・市町村等) 年収」と検索すると、上位に入ってくるサイトであるため、知っている人も多いと思われる。しかしながらこのサイト、問題点を抱えている。

出典が明記されていない

まずこのサイト、出典や出拠がページに記載されていない。トップページにも「有価証券報告書や政府発表の各種統計資料から年収・生涯年収などの各種データを算出」とあるが、それならその資料を出典元として掲載することも可能ではないのか。

また、お問い合わせにも「統計データ取得方法について」「年収や各種データの算出方法について」といった内容のお問い合わせには回答できないとある。数値の基本的な間違いには対応するとあるが、年収4,000,000万円みたいな書き方をしてしまったケースしか想定していなさそうだ。

このような「不確実なウェブサイト」が多いと、別の有志が正確な情報を発信しようとサイトを作成しても、SEOや先行者利益の問題で苦戦は避けられないだろう。

なお、お問い合わせの連絡先が「fake」であるが、内容に出典がない以外はフェイクを彷彿させる内容は見当たらず、偶然だといえよう(都合よく引用して不利益を生じても「あのサイトはfakeだから。」と逃げ口にする可能性は…ないか)。

(ちなみに辿りに辿ったところ、確かに出典と思しき書類は発見できた(総務省の地方公務員給与実態はこちら)。しかしながら、生データに直接リンクし、実存性を把握することができれば、よりよいサイトになるものだと思われる。)

会社

お問い合わせによると、このサイトは「dareca Co., Ltd.」なる企業が経営している。

会社であれば、国税庁法人番号公表サイトより、法人番号が公表されているのだが、当該会社の屋号である「dareca」を使った企業は1社たりとも確認ができなかった。表記揺れで「dareka」も確認ができず。「ダレカ」であれば大阪府枚方市に1社存在し(法人番号8120001171283)、自社ページよりウェブサイト関係の仕事をしていることは確認できたが、年収ガイドとのリンクは掲載されていない。

なお、最初は同社と別の企業と推測していたが、変更履歴情報より、お問い合わせに記載された住所がかつての本店の所在地であることが判明、会社であることの確認は取れた。但し、お問い合わせに掲載されている住所には20日ほどしか本店を置いていない(引っ越しの合間だけそこに支店を置いたという可能性は十分にある)

結びに

Wikipediaを読む際も、まず出典から確認してしまう癖がついている故(どうしても書籍出典の場合は検証をすることが困難であるが)、当初よりこのサイトには疑念性を抱いていた。しかし、そういう癖がなく、スマホで眺めるような人は、もしかしたら気づかず使っている人も多いかもしれない。

後だが、論文等で使う場合、可能な限りだが一次出典に当たるほうが良い。国会図書館にしか存在しないなどの特殊な書類で、調達が非常に困難であれば話は別かもしれないが、ネット上で確保できるのであれば。玉石混淆の山の中から目当てのものを探すのは非常に困難だ。だから、そのサイトがどこにあるのか、百円単位という中途半端であれば1円単位や千円単位に表記して、都道府県・市区町村ごとに並べて調べものに使えるようにしよう。それが、本来のキュレーション(curationの原義は、図書館の学芸員などを意味する)サイトの役目ではないか。

なおWikipediaを確認したことろ、市議会のサイトが2件ほど出典に用いられていることを確認した。まさか卒業論文・研究に使っている人はいないと思うが、今後も注意していきたいところ。

閲覧者プレゼント

令和2年 地方公務員給与の実態(令和2年4月1日地方公務員給与実態調査結果)
 ・ 別冊 第3 都道府県別、市区町村別給与等の一覧表(PDF)(脚注がない場合、百円単位であることに注意。10000とあれば100万円。)
国税庁 民間給与実態統計調査結果

追記(3/25)

類似サイトの「年収ラボ」の場合、統計元の記載がしっかりされている。こういうサイトであればまだマトモと言えよう。

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