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「桜島の噴火は日常」ってどういうこと?

桜島は世界でも有数の活火山であるということは知られていても、どのくらいの頻度で噴火しているのか?人が住んでいるのか?など、意外に知られていないことが多いようです。
そこで、今回は意外に知られていない桜島の「今」をご紹介したいと思います。

まず、噴火の頻度ですが、1年間の平均噴火回数は約200回多い時は1年間に996回も噴火しています。1年は365日ですから、平均すると1日に2~3回の時もあるのです! ほぼ毎日のように噴火しているのが桜島の特徴ですね。

噴火の際には噴煙が1000~2000mほどモクモクと上がり、風下の方には火山灰を降らせます。火山灰は細かいパウダー状の砂みたいな感じで、道路や車にうっすらと積もりますが、厚さは1mmにもなりません。でも、掃除して集めるとまぁまぁの量になります。鹿児島市ではこれを集めるための専用の黄色い袋(克灰袋:こくはいぶくろ)が無料で配布されています。

火山灰が降っている様子
克灰袋と宅地内降灰指定置場

ということで、鹿児島の人にとって桜島の噴火は日常。あいさつ代わりに「昨日は灰がひどかったねぇ」とか「最近の桜島おとなしいねぇ(噴火しないね)」などと話すことも多いです。
私は噴火による降灰を「天気が一つ増えたようなものですw」と説明しています。鹿児島の天気には、晴れ、雨、曇り、があって、雪はあまりないですね。
灰が降ったときは、通り雨が来た時のように屋根のあるところでちょっとやり過ごせば大丈夫。10~20分ほど待てば降り止むことが多いです。でも、急いでいるときは、仕方なく灰をかぶりながら歩いたりしますね。

ところで、火山灰ってそもそも何なのでしょう?
実は、鹿児島県民でも知らないことが多いのですが、桜島の火山灰は溶岩が砕けて小さくなった石の破片なのです。火口付近で固まった溶岩のフタがマグマから抜け出たガスの圧力で破壊されて飛び散った破片のうち、2mmより小さいものが火山灰です。

しかし、全て粉々になって2mmより小さくなるわけではなく、なかには数mほどのかたまりのまま飛び散ることもあります。
そんな大きな石が飛んできたら危険なわけですが、さすがに大きな石は重すぎて遠くまで飛ぶことができません。だいたい火口から2km以内に落ちることが多いです。
ということで、桜島は火口から2km以内が立ち入り禁止区域となっていて登山することができないのです。
桜島には約3700人が住んでいますが、ほとんどが火口から4km以上の場所なので安心して暮らしています。

通常の桜島の立ち入り禁止区域(噴火警戒レベル3)

では、2kmよりも外側はいつも安全なのか?というと必ずしもそうではありません。ごくまれに大きな噴火をすると、大きな石が2kmを超えて落下することもあります。実際、これまでに4回ほど被害が起きる噴火もありました。*

*現在の噴火活動が始まった1955年から2021年までに13,932回発生した爆発的噴火のうち、死者が出たのは最初の1回だけ(1/13,932=0.007%)、負傷者が出たのは4回です(4/13,932=0.029%)。
情報源はこちら。
https://www.data.jma.go.jp/.../506.../506_history.html

そこで、危険が及ぶような噴火がある場合に備えて、世界一とも言われる観測体制で24時間監視を行い、桜島では小規模な噴火であってもある程度予測できるようになってきました。大規模噴火が起きそうな場合は、遅くても数日前には前兆現が捉えられると考えられています。

桜島ビジターセンターに設置された火山活動監視モニター

また、噴火警戒レベルという住民の安全を確保するための仕組みもあります。桜島は通常レベル3で、火口から2km以内は立ち入り禁止区域ですが、ほとんどの住民は火口から4km以上の場所にふつうに暮らしています。
2022年7月24日には、噴石が火口から2.4km以上飛んだことから、噴火警戒レベルが5に引き上げられました。たまたま遠くまで飛んだ噴石も1つだけでしたし、被害も全くなかったので、3日後にはすぐに通常の噴火警戒レベル3に引き下げられました。このとき一時的に避難したのは桜島にある17の集落のうち2つだけでした。ほとんどの集落は避難しなくても大丈夫だったのです。
火口との距離を適切に保てば、火山に住むことも観光することもできます。怖がり過ぎず、でも安心し過ぎずないことが大事ですね。

2022年7月24日に桜島の噴火警戒レベル5の状況。黄色い丸は集落のおおよその位置。

ちなみに、「火山灰って健康被害はないんですか?」という質問も良く受けます。これは鹿児島県が昔から行っている調査の結果があって、肺の病気になる確率は他の自治体と変わりません。つまり、火山灰が原因で発病した人はいないということです。
これは、火山灰の粒子の大きさが関係しています。肺の中まで入り込む粒子の大きさは2ミクロンより小さくないといけませんが、2ミクロンより小さな火山灰は軽くて遠くへ飛ぶので、火山周辺の人々には影響がないのです
逆に2ミクロンより小さな粒子には、タバコの煙、排気ガス、PM2.5などがあります。火山灰よりタバコの煙にご注意くださいw。
コロナ前の話になりますが、鹿児島の人は花粉症の時期にマスクをする人はいても、火山灰が降ったからといってマスクをする人はほどんどいませんでした。花粉症に比べると桜島の火山灰は大したことないということですね。

以上、意外に知られていない桜島の「今」をご紹介してきましたが、いかがでしょうか?
桜島は世界有数の活火山ですが、火口からの距離を適切に保ち、火山と共に暮らす人々がいる、世界的にもユニークな場所ということが伝われば幸いです。


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